桔梗(きちこう)のあすは咲(ひら)かむちから秘めふくらみにけり色ふかめつつ
陽にぬくむ蒲団に秋の蝶のゐて取り入るる手のしばしなづみぬ
花終へしあぢさゐの下のあかまんま雨をふふみて紅鮮(こうあざ)らけし
けさ切りし小菊に付きてきしならむ流しの隅のさみどりの蜘蛛
陽に向かず傾(かし)ぎしままに畑(はた)に佇(た)つ野分(のわき)のあとのひまわりの花
おほかたは葉を落としたる山法師のむかうに白く丸き月あり
月明(げつめい)に湧きて溜まるやへちま水漉(こ)せばほのかに草の香のする
夜(よ)を啼かぬ籠の鈴虫灯に見れば髭はそよろと動きてをりぬ
美術館は蒼(あお)ぎる空の中にあり手を合はせたき半月浮けり