時雨して髪を濡らせばなほ続く自己愛てふ闇翡翠を撫づる
我が生にゆめあらぬもの甘やかに人を恋ふるとショパンの詩は
水面には薄ひかり射し彼岸より笛の聞こゆるさかなは踊れ
空のモザイク
さやさやと真白き雨に打たれつつ未だ見ぬ人の声を思ふよ
魚の眼透きとほるほど脆きもの我ならなくに我を見つめる
夢やゆめネットに向かふまなざしに虹を覗かせみな消えてゆく
余生てふ美しきこと遠ざかり現代日本は先細りゆく
口数のすくなすくなになりたるを銀の雨降る秋桜もがな
天蓋に澄みわたる青ひろがりて一人佇む水際うつくし
ひいやりと髪を下ろしぬ秋風にみづから保つ密明かすごと
星々の光映して響くごと秋草あまた鈴虫こおろき
彼岸入りて38度の陽を浴びぬ生態系を崩す熱かと
きらきらと夢とメルヘン箱のなかへ無垢の時間が守られている