
さて、ヴァッハウ渓谷のクレムス(Krems)という町まではウィーンの「フランツ・ヨーゼフ駅」から電車で約1時間、小さな町だが、お店やレストランなども充実していて、居心地の良さそうなところだった。オーストリア・ワインの販売を行っているKloster Und.というショップを訪ね、グラスで何杯か試した後、2本購入。その後、クレムスからローカル線で10分ほどのデュルンシュタイン(Dürnstein)を訪れたが、「廃墟」見学の時間がなかったので、町の散策のみ(あまりにも小さいのであっという間に終わってしまった)。
時間は午後3時頃だったが、通りには観光客も町の人の姿もほとんど見られず、ひっそりとしていた。あまりにも寂しいのでクレムスへ戻ろうかと迷ったが、とりあえず、夜のコンサートに備えて遅めの昼食を取ることにした。
定番の郷土料理の中で、シュニッツェル(Schnitzel) やグーラッシュ(Gulasch)、ターフェルシュピッツ(Tafelspitz)などはすでに何度も食べているので、今回はツヴィーベルローストブラーテン(Zwiebelroastbraten)をあちこちで試している。牛肉のステーキ(オニオンソース)にたっぷりの揚げタマネギが乗っているのだが、この揚げタマネギが美味しくて、ソースもどこかご飯にも合いそうな風味。これまたたっぷりのベイクドポテト(またはマッシュポテト)が添えられていて、ボリューム満点。あれこれ注文しすぎて食べきれない、という失敗をしばしばしているので、今回は1品とワインのみにしていたが、これが正解。
ワインは、ステーキには赤ワインのツヴァイゲルト(Zweigelt)やブラウフレンキッシュ(Blaufränkisch)ももちろん合うが、この土地が生み出す上質のリースリング(Riesling)は外せない。「土地のワイン」としては、グリューナー・フェルトリーナー(Grüner Veltliner)も選ぶべきなのだろうけれど。あと、意外にもシャルドネ(Chardonnay)が非常に美味しかった。やっぱり白ワインの国だなあ。
ゆっくり食事をして店を出る頃には、学校帰りの小中学生たちや、団体の観光客も現れ(ドナウの観光船が着いたらしい)、いつの間にかにぎやかになっていた。
「ドナウ下り」の船は、10年前に一度乗ったことがある。「ヴァッハウ渓谷一日観光ツアー」を利用したのだが、ウィーンからメルク(Melk)までバスで行き、メルク修道院を見学して昼食、その後メルクからDDSGの船に乗り、シュピッツ(Spitz)、デュルンシュタインを通過してクレムスで下船、待っていたバスに乗って、ウィーンまで帰るというルートだった。ハイライトは「ドナウ下り」なので、観光できたのはメルクだけ、それもバロック建築の修道院くらいしか記憶にない。食事もツアーの「給食」といった感じで、あまり面白味はなかった。
今回は、ツアーで見ることができなかったクレムスとデュルンシュタインが目的だったので、列車のみの旅となった。夜の予定がなければ、もっとゆっくりできたのだが、ウィーン・フィルのチケットを取ってしまったので仕方がない。デュルンシュタイン行きは超ローカル線だが、1時間に1本あるので良い方だろう。ただし無人駅なので、切符はあらかじめ往復で買っておく必要がある。定刻にやって来た列車でクレムスまで戻り、ウィーン行きに乗り継ぎ、再びフランツ・ヨーゼフ駅へ。
デュルンシュタインはあまりにも小さすぎて、少々期待はずれだったが、やはり丘の上の山城まで行かないと醍醐味は味わえないのだろう。ある程度都会が好きな私には、クレムスのほうがはるかに面白かった。ワイン博物館もあるし、次回はもっと時間を作って(オーストリアワインの知識と語学力も磨いて)、Kloster Und.の店員さんや土地の人とあれこれおしゃべりをしながら過ごせたらと思う。