彼と初めて一緒に帰った日。
あの日は、暑かった…と思う。今からもうだいぶ前のコトだから。
目一杯部活をやってきた後だったから、私は汗だくだった。
なのに、彼は全然汗をかいていなかった。それが不思議だった。
学校から家まで並んで歩いた彼の横顔は、爽やかな清流みたいな、綺麗な表情だったから。
ああ、ヒトってこんな綺麗な表情ができるんだな、って思った。
私は彼を知らなかった。
幼い頃から、幼稚園、小学校、そして中学までずっと同じだったのに。
ほんの欠片ほども、彼のことなんて興味がなかった。
だけど、彼がそんなに綺麗な表情をするから
――彼を、知りたい。
と、思った。
だけど、それは
私が、苦しみ、嘆き、狂い、心を失う運命の、始まりだった。
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