Le Noire 官能。艶めいて。

官能小説。愛、欲望、そして男と女。
Amour et désir, et hommes et femmes.

コンテスト受賞からの書籍化の罠にご用心

2023-11-10 | つれづれ

 趣味で小説を書いていると、やがてコンテストなるものに興味が湧いてくる。小説サイトの運営主催のものやら大手出版社とコラボしているものやらコミックスコラボの漫画原作やら、いろいろ様々なコンテストが随時開催されている。

 受賞すれば賞金だけでなく書籍化も叶ったりする。コンテスト受賞からの書籍化さらにプロの作家へ、という夢を抱いているアマチュア作家は多い。

 コンテストへエントリーし、プロの厳しい審査を経て認められ、受賞するのは嬉しい。嬉しいに決まっている。嬉しくないはずがない。

 しかし…。

 受賞したら書籍化するという約束が守られないケースがあるのだ。

 もちろん、そのコンテストの企画段階では、企画サイドは約束を守るつもりだったはず。しかし近年の、本が売れない出版不況によるためなのか、賞金は支払われたものの、いつまで経っても書籍化されない、あるいは企画サイドから受賞した作家へ「書籍化できなりました」などと宣う。これは作家や作品のせいではなくて100パーセント企画サイドの問題だ。

 この「やっぱり書籍化できなくなっちゃいました」ケースで問題になるのが著作権の所在だ。通常、コンテスト受賞作品の著作権は企画サイドと作家の両者にある。だから受賞した作家が「書籍化してくれないなら別の出版社で、あるいは別のコンテストへ受賞作品を出したい」と願っても規約や著作権で縛られてしまい、自分の作品であるにもかかわらず、自分の自由にできない法的な縛りが発生する場合がある。

 実際に私自身が過去にこのケースのにはまった。コンテストに受賞し賞金ももらった、でもいつまで待っても書籍化の約束が果たされない。でも著作権およびコンテスト規約の縛りによって受賞作品を取り下げることも他所のコンテストへエントリーすることも不可能。

 仕方なく書籍化されるのを待っているうちに、そのコンテストを企画したサイト自体が消滅してしまい、約束は反故になった。

 なんだかなあ、である。

 大手サイトの「小説家に◯ろう」などでも同様のケースが発生したのを、被害にあった作家本人のSNSで拝見した。

 嬉しいはずの受賞および書籍化なのに、なんだかなあ、である。

 コンテストへエントリーしようと思っている作家様は、コンテスト規約や著作権の所在について、事前に十分に調べてからエントリーしたほうが良いと私は思う。

 過去の自分自身の不愉快な経験から、趣味作家の方々が私のような愉快な思いをされないように、創作意欲に水を差すような実話をご紹介しました。 

 なんだかなあ…。

 

 


無料公開のお知らせ2023.11.9

2023-11-09 | お知らせ

 今夜0時より、以下の有料作品を無料で公開します。

 

1 官能作家"霧山純生"の情事 Ice Dole(アイスドール)第2話

2 官能作家"霧山純生"の情事 赤いルージュの女 第6話

3 緋い罠〜堕ちた人妻 第4

 

1 理屈っぽいSの霧山先生が可愛らしい女子大生を籠絡するストーリー第2弾。「赤いルージュの女」の美月の親友である麗奈ちゃんがヒロイン。ラストにどんでん返しがあります。

2 理屈っぽいSの霧山先生が可愛らしい女子大生を籠絡するストーリー。ですがラストにどんでん返しがあります。

3 官能小説にポピュラーな"人妻"もの。大手であるフランス書院様の官能大賞にエントリーし、二次予選まで通った経歴があります。結局のところ予選落ちですが。これもラストにどんでん返しがあります。


 24時間後に有料に戻します。どうぞお楽しみくださいませ。

 

 


便りが無いのは…

2023-11-09 | Amour

 英輔《エース》とのメール記録は2年前の日付で途切れていた。なんとなく、彼に送った自分のメールや彼からの返信を、なんとなく読み返していたら、何だか懐かしい気持ちになり、そんな気はなかったのにわたしは2年ぶりに彼に、

「璃世(◯◯←本名)だよ。元気にしてますか?それだけ」

 こんなメールを送ってみた。返信なんてぜんぜん期待していなかった。

 2年も放っておいたくせに、でも彼からの連絡も無かったし、あれから音信不通になったのはわたしだけのせいじゃない。

 恋人なんて関係じゃなくて、ふと、話したくなったときにだけ他愛のないメールのやり取りをする。大阪にいる彼と東京のわたしとの関係はそんな程度でしかない。

 

 

 彼がマッチングアプリ(というか出会い系)を辞めてからは共通の話題も無くなってしまったから、時が経てば経つほど、わたしと彼を隔てている物理的な距離のように、付き合いの密度が希薄になっていくのは仕方がないことだ。

 彼がSNSを去るときに、彼はわたしに「大阪から璃世に会いに行くと俺が言うたら、会うてくれるか」と言った。

 わたしはちょっと迷ってからNoと答えた。

 彼はとても良い人だ。人が良すぎて出会い系なんて合わないよと、彼がデアイケイサイトにいる頃からずうっと思っていた。でもわたしの彼への気持ちはそんな程度でしかない。

 真剣に恋を探している彼に対して恋人未満の可能性しか見えないわたしがYesと言ったら、彼に誤解させてしまうかもしれない。そう思ったからだ

「一緒に飯でも食うだけや。それだけで構わん」と彼は言ってくれたけれど、わざわざ新幹線で来させておいて、何の進展も無いままにそれだけで帰ってもらうなんて、わたしにはできなかった。

 だがしかし。そんなこんながわたしの脳みそをよぎったのも一瞬だけ。

 なんと!メールボックスに彼からのこんな返信が!

「ビックリやな!元気やで。久しぶり。璃世の本名って聞いてなかったような?4年ぶりぐらいか??」

 …返信はやっ。

 っていうか、なんだよ。わたしとのことみんな忘れてるじゃん。

 で、わたしから、

「返信はやっ。こっちもビックリ。暇なの?(彼女おらんの?)。本名教えてくれって言われたから教えたじゃないか😠自分で言ったこと忘れたの?それに4年も経っていないよ」

 相変わらずボケまくりのエースである。

 …そうだよね。わたしのあなたへの気持ちも恋人未満だけど、あなたのわたしへの気持ちもそんな程度のもの。それでいいわ。今のままでいい。

 まあとにかく…元気そうで良かった。

 


1グラム

2023-11-09 | つれづれ

 三連休の土曜日の朝。10時頃だったと思う。彼の様子がおかしいのに気づいた。止まり木の上でよろよろしている。

 かごの扉を開けてそっと抱いてみたら、わたしの手にその小さな体の痙攣が伝わってきた。足に力が入っていない。真っ黒なつぶらな目も焦点が合っていない。

 行きつけのペットクリニックへ急いで連れて行こうと焦ったけれど、きっともう間に合わないだろうと思った。

 彼は、抱いているわたしの手の中で数回羽ばたいて暴れて、急にぐったり弛緩した。

 異変に気がついてから五分か十分しか経っていなかった。十五年間も一緒にいてくれた彼は、寸前までいつもと変わらない様子だったのに、たった数分で逝ってしまった。

 亡くなる前に測った体重は42グラム。彼としてはベスト体重だ。亡くなったあとに、ぼう然としながら何となく体重を測ったら1グラム減っていた。

 1グラム。きっとそれが彼の命の、彼の魂の重さなんだ。そう思った。

 彼にはずっと年下のラブラブの彼女がいたのだけれど、今年の春に急逝してしまった。動かなくなった彼女の体を、いつものように毛づくろいしてあげていた彼。

 わたしがスマホを見ていると、いつも手の甲に乗ってきて、何時間でもまったりしていたツンデレの彼。

 一緒にいてくれてありがとう。
 
 優しい思い出をいっぱい残してくれてありがとうね。

 


ラブストーリーのかけら 1

2023-11-09 | ラブストーリーのかけら

「嘘ばかりのこの世界で、ただ一つの真実があるとしたら、それは、誰かを好きになった自分の気持ちだと、私は思うの」

 わたしに背中を向けたまま、まるで独り言のように静かな声で母が喋った。

「自分に嘘はつけない。誰かを好きなるのは理屈じゃない。恋は落ちるものだから」
「それは…そうすると、あの記事は本当なのね」
「彼のことが大好きだった。好きなっていけない人でも、愛していた」

『マンハッタン・キス』より