ジェフ・ベックは、エリック・クラプトンやジミー・ペイジと共に「世界3大ロックギタリスト」と呼ばれたロックギタリスト。
この「世界3大ロックギタリスト」は、ジミ・ヘンドリックス(ジミヘン)、エリック・クラプトン、そしてジェフ・ベックの3人をそう呼ぶ場合もある。
いずれにしても、ベックはそれほどロックファンから評価が高いギタリストである。
私がクラプトンを知ったのは、ビートルズによってロックに目覚めた頃。ビートルズのホワイトアルバム収録曲の「ホワイルマイギタージェントリーウィープス」でクラプトンがギターを弾いたことによって・・だった。
その後すぐに私はクリームのアルバムを買い、すっかりハマってしまい、その後彼のクリーム後のアルバムを何枚も集めたことで、しばらく私にとってナンバーワンロックギタリストであった。
で、クラプトンを知ることによって、ジミーペイジやジミヘンやベックの名前も知ることになった。
ペイジに関しては、ほどなくして私はレッド・ツェッペリンにハマることで、その良さを十分に味わうことになった。
ジミヘンは、高校時代の友人がジミヘンマニアのロックギタリストで、しかもその友人はディランファンでもあったから、けっこう私とは話が合い、おかげで彼からジミヘンのことをよく聞かされることになった。アルバムを自分でも買って聴いてみた。
そして、ジェフ・ベック。
私にとってベックは、世界3大ロックギタリストの中では、一番後に聴くようになったギタリスト。
ベックは、クロスオーバー(後にフュージョンと呼ばれるようになるジャンル)という音楽ジャンルが人気を集め出した頃、友人の影響で私は聴くようになった。
その友人はベーシストで、勉強がてらでもあったろう、ロックだけでなく、ジャズ系、フュージョン系のミュージシャンのアルバムを当時よく聴いていた。
ベックはロックギタリストでありながら、その範疇を超え、ジャズ系のミュージシャンと共に作ったアルバム「ワイヤード」で、当時人気絶大であった。
その友人の家に遊びに行くと、当時よくベックのアルバム「ワイヤード」を聴かされた。
「ワイヤード」を初めて聴いた時、私がそれまで聴いてきたロックとは異質のサウンドがそこにあり、斬新さと共に、凄みを感じた。
理論などよく分からなかったので、ただただ直感的に「なんか、こりゃすごいぞ」と思った。特に、その1曲目。
まさに「金縛り」にでもあったかのような凄みに思えた。
ベックのフレージングセンスは、もともと独自のものがあったが、その独自性はクロスオーバーという畑では、よく映える気がした。
ともかく、そのインパクトもあり、後日私は輸入盤レコード屋に、ジェフ・ベックのアルバムを買いに行った。
そして、「ワイヤード」はもちろん、もう1枚「ブローバイブロー」というアルバムの計2枚を買って帰った。
で、友人宅で何度も聴いていた「ワイヤード」をとにもかくにも自宅で聴いてみて、あらためて圧倒された。
で、「ワイヤード」を聴いた後、一緒に買ってきた「ブローバイブロー」も聴いてみた。
そうしたら・・「ワイヤード」とはちょっと感じが違うが、これが・・・実に素晴らしかった。
両アルバムを何度も聴くうちに、私はむしろ「ブローバイブロー」の方が、より好きになった。
いや、もちろん「ワイヤード」はやはりスゴかった。楽曲から漂ってくる緊張感は、まるでバトルのようにも思えた。研ぎ澄まされたセンスが、さらに鋭さを増している感じだった。
だが、それ以上に「ブローバイブロー」は、私にとってあまりに味わい深く、素晴らしすぎた。
「ワイヤード」のようなバトルのような緊張感というより、リラックスした中に緊張感もあり、なによりベックが情感を込めて、切々とギターで音楽を表現している感じだった。
もちろん、凄みのある曲もちゃんとあった。
ビートルズの曲を独自のセンスでカバーしたり、スティービーワンダーから贈られた「哀しみの恋人たち」という曲を「ロイ・ブキャナンに捧ぐ」というメッセージと共に変幻自在の音色で表現したり。
そう、「哀しみの恋人たち」1曲の中でのギターの音色の変化は職人技だった。曲のパートごとに音色を変えてみせたりしていた。
そして、名演ぞろいのこのアルバムの中に、「ダイヤモンドダスト」は収録されていたのだった。
曲のタイトルにウソがない、幻想的な曲調。どこかまるで映画音楽のような雰囲気。
独特の旋律。コード進行も秀逸。
一見難しく聴こえもした主旋律ではあるが、非常に美しくもあるメロディ。
ムーディでありながらも、甘くはなく、なにやら気品と深みがあり、渋くもあり、神秘的なものもある。根底には孤高さも感じ、それゆえ独特の存在感があった。
タイトル通り、ダイヤモンドダストの映像が浮かんできて、しかもそのまま吸い込まれていってしまいそうな魅力もあり。その魅力は、魔力にも近く思えた。
ほんと、この曲での「ダイヤモンドダスト」というタイトルは、よく名付けたものだ。まさに言い得て妙・・・そんな感覚になる、幻惑されそうな、イメージに溢れた名曲だ。
話によると、この曲の作曲者バーニー・ホランドは、第2期ジェフ・ベック・グループにいたメンバーが、グループ消滅後に組んだバンドに一時参加したギタリストらしい。
ということは、多少なりともベックとも縁があった人・・・と言ってもいいだろう。
この曲の良さもさることながら、こういう曲を選曲し、情感たっぷりに演奏・表現しきるベックのセンスや実力には、完全に脱帽だった。
深遠なストリングスのアレンジがまた、特筆もの。
一度でいいから、ダイヤモンドダストの映像をバックに、この曲を聴いてみてほしい。
これほどタイトルがイメージぴったりな曲は中々無いような気がする。
それほど、豊かなイメージをリスナーに与えてくれる名曲である。
人里離れた、どこかの山奥。
人はともかく、生きとし生ける動物など見当たりもしない、雪山。
木々は雪で樹氷と化している。
もちろん、地面など深い雪に埋め尽くされ、当たりは白一色。
そんな空間に、空気中の水蒸気が氷となって、輝きながら、舞っている・・・。
この曲がメインテーマやメインBGMとして採用された映像作品は・・・ドラマでも映画でも、CMでも、あるのだろうか。不勉強ながら、私はまだ見たことがない。
こんな強力なインストゥルメンタルナンバーは、中々ないと思うのだが。
もし使われていないのだとしたら、もったいなさすぎることに、とんでもない名曲が見落とされている・・・そう思う。
いや・・・私がたまたま見逃しているだけで、きっとあることだろう。
なんでも、ベックはこの曲の録音に、相当な時間を要したという。
それだけ心血を注いで、仕上げたのだろう。
その熱意は、この曲の出来を聴けば、よく伝わってくる。
この「ダイヤモンドダスト」を収録したアルバム「ブロウ・バイ・ブロウ」は、ロックギタリストの残したインストゥルアルバムとしては、時代を超えて5本の指に入り続けていく名作アルバムだと私は思っている。
これまでも、今も、そしてこれからも。
長く。輝いて。
https://www.youtube.com/watch?v=zzvG3q5Evlk
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