『ウマ娘プリティダービー劇場版 新時代の扉』という映画を観て来ました。
『ウマ娘』というソーシャルゲームのコンテンツも、大ブレイクからは数年を経て全盛期を過ぎた感もありますが…
それでもまだプレイしている人はかなり数多いらしく。
また、このゲームを機に「競馬」そのものに興味を持った人も多いみたいなので、社会的影響は大きかったのでしょうね。
私は競馬には全く興味がなくて、若いころ、週刊誌時代のギャンブル好きデスクが「大井競馬場で会議をするから」というので…
いやいやナイトレース?に連れて行かれて、1レースだけちょこっと賭けたことがある程度。
(競馬場で会議なんてもちろん1秒もやってないです。デスクが勤務中に競馬したかっただけ。当時はそういうふざけた世界でした)
それでも小倉唯さんが、マンハッタンカフェというお馬さんを擬人化したキャラのCVをやっていて…
しばしばイベントや関連のライブに出演するので、それをフォローして来ました。
で、この映画ですが…
映像や音響の作り、演出といったものが確かにド迫力で、よくある30分程度のOVA的なものを映画館にかけましたというのとは違い…
尺も1時間半以上ある、本格的な長編アニメ映画でした。
そしてメインの声優さんたちの演技がなかなかよくて、そこは見ごたえがあったです。
ただ主人公が「脳筋」(脳が筋肉で出来ている)過ぎて、私には共感して入り込むのが無理だった。
ああいうの苦手なんですよ。
主人公が何かというと「うおー!うおー!」と絶叫してばかりいるのが正直私にはうるさくて…
ちょっと昭和のスポコンもの的なノリ。
クライマックスで感情を爆発させるならともかく、あのテンションで最初から最後までやられると、ちょっと辟易してしまって。
ウマ娘たちを突き動かす原動力が、結局は、ひたすら「走る本能」というのも個人的に納得感が薄かったし。
競走馬が好きな人にはわかるのかな。
まあ、作品としての完成度うんぬんではなく、私には合わないお話でした。
ゲームをやってる人、競馬が好きな人、あとはああいう「オラオラオラァ!」なノリが好きな人には、気分がスカッとする良い作品かも。
そして繰り返しますが、声優さんたちの演技はよかったです。とても。
主人公のジャングルポケット役の藤本侑里さんは、ほぼ新人の大抜擢なのですが…
この作品が自分の将来を決める、一世一代の勝負所だと思い定めての、文字通り渾身の演技。
ひとりの人間が確かに人生を懸けて、すべてを絞り出したときの迫力とはこういうものだと。
その最大のライバルとして設定された、アグネスタキオン役の上坂すみれさんも、この役を既にやり慣れているのもあって…
その安定感が、貫禄の域に達していました。
ジャングルポケットの「お友達」ポジションの福嶋晴菜さんも、ほぼ新人ながらしっかりした演技。
そして我らが社長・小倉唯さんが演じたマンハッタンカフェは、暗闇の世界の住人みたいなミステリアスな役柄。
ちょっとオカルト的な「お友達」が、すべてのウマ娘の先頭を走っているのが彼女にだけ見えるという設定の上、病弱ということで…
声もテンションも、常に異様に低い。
そんな声色とテンションを維持したままで、吠えまくる主人公に負けないくらいの負けん気、熱さを表現しなければならない。
主要4キャラの中で、技術的には一番難しい役だったと思います。
でも、ちゃんと伝わって来ました。
こういうのは気合だけではどうしようもない。ある程度場数をこなし経験を積まないとできない、渋い職人芸の部類だと思います。
デビューが中学生時代と、平均的な声優さんよりどうかすると10年近く早かった小倉唯さん。
なので、キャリアはいま三十代半ばすぎで、まだ活躍している声優さんたちと変わらないので。
もう一方の、アーティストとしての音楽活動では、今でもアイドル的な側面が強かったりするために…
そちらに幻惑されてしまって、声優としても、まだアイドル的な役ばかりやっていると思っている人も多いようですが。
本人も、声優業とアーティスト業とは、お互いに良い影響を与え合っているけれど…
アプローチの仕方はまるで逆である、というようなことを言っていますし。
なんだかんだ言われながら、負けずにこつこつ努力して、長い年月を生き残って来たおかげで…
声優としてすでに「いぶし銀」の域に達したからこそ、こういう難しい役をこなせるようになった。
これだけ競争が厳しく、後から後から、実力があり容姿も素敵な若い子が大量に入って来て…
しかも年数が経つとギャラのランクが上がってしまい、コストカットのために役をもらい難くなる声優業界のシステムの中で…
15年も第一線で活躍し続けているその事実が、アンチ小倉唯のオタクたちに対する、十分な「回答」になっていると思います。
顔だけ、ぶりっ子営業だけで15年も持つほど、あの世界は甘くないです。
アンチだってそこはよくわかっているはずなんですけれど、固定観念を手放したくないんでしょうね。
彼女のスタイルは、既に「小倉唯という一つのジャンル」になっている、という人もいます。
似たようなやり方をするアイドル声優さんみたいな人たちが「ジェネリック小倉唯」と呼ばれたり。
でもジェネリックの人たちで、本家を超える人はなかなか出て来ない。
どこに違いがあるのか、その答えをこの映画のマンハッタンカフェの演技が、教えてくれているかもしれません。
ところでこの映画は、日本国内以外でも、韓国、香港、台湾、タイで上映されるとのこと。
舞台挨拶だったか、オンラインイベントみたいなものでだったか忘れましたけど…
唯さんが「タイっていうのがすごい…」と呟いていました。
タイでこの映画が当たって、声優さんにも光が当たって、唯さんの活躍の場があちらにも拡がったら…
それはすばらしいこと。
日本の経済がいよいよカタストロフを迎えるときが、刻一刻と近づいているように見えて…
その上「東アジア有事」が誘発されたり、巨大災害が襲って来たりする可能性も高まっている中。
まったく地域の違う遠い場所での活躍の可能性を残しておくことは、大きなリスクヘッジになりますから。
いやいや心配のし過ぎとか、夢物語なんかじゃないですよ。
「食料供給困難事態対策法案」なんてものが、国会に登場する時代なんだから。
けーざいがどうなる以前に、日本の国に「食い物がなくなる」ことに備えようと本気で検討してる段階なんですよ。官僚が。
「もはや戦後ではない」と言われるようになってから70年近く、日本人が飢える心配を、官僚がしたことなんてなかったんだから。
まあ、農家に米・麦・大豆等の「腹に溜まる」作物の増産を、国が命令する、できなかった農家には罰金を科す…
なんていう、強権的以前に、農業のしろうと丸出しの無知なことを言っている時点で、もう意味ない法案なんですが。
一流大学を出たというだけの学校秀才が考えることですから、役に立つはずもない。
安定した状態が長く続いたころは、その手の官僚的な政策で事足りたのでしょうけれど、変動、激動の時代になると為すすべもない。
とにかく、日本社会に破滅的な危機がやって来る可能性が高いことだけは、情報を持っている「上級国民」はわかっているんです。
大衆を刺激したくない、いつまでも寝ていてほしいから、あからさまにそう言わないだけで。
だからみんな逃げ場所を確保、というか、国の外に出て働く、生きていける方策は考えておいた方がいい。
そういう意味で、韓国や香港や台湾は渦中の場所ですけれど、タイは「十分遠い」ですからね。
「推しは推せるときに全力で推しておけ」という格言があります。
普通は「推し」の側が、引退したり人気がなくなったりで、いなくなってしまうことを心配する人が多いかもしれませんが…
今や、経済的・社会的事情で「推す」こと自体が出来なくなってしまう可能性の方が、どちらかというと大きい。
社会とか経済とかの現実を見たくないから、サブカルコンテンツに没入し「逃げ込んで」いるのがオタクというものなのでしょうから…
そこに気が付かないのも、仕方ないですけれど。
来年は、というか半年後に「推せてる自分」ではなくなってしまうことを、真剣に心配したほうがいい。
本当は、推し活の持続可能性を求めるためには何をしたらいいのかを考えるべきなんでしょうけれど…
まあ…オタクには無理なのかな。
推し活を続けたいのなら、漫画、アニメ、ゲーム、それからステージに向かってサイリウム振ること…
あとはそのための金稼ぎ。それだけじゃ駄目なんだということを受け入れないと、どんなにうまく行っても2~3年以内には来ますよ。
すべての「楽しいこと」をできなくなるときが。
我々ジジババは、ある意味自業自得だから仕方ないですが、若者はたとえ崖から落ちても…
それこそウマ娘の映画みたいに、立ち上がって「未来の扉」を開けて…
歩かないといけない。
生き残れ、若者たち!