第95回全国高校野球選手権大会 予選展望6
【福岡】(参加135校)
春の九州制した久留米商の自信。東海大五は戦力充実。しかし大混戦は続く。
◎ 久留米商 東海大五
〇 自由が丘 九州国際大付
△ 筑陽学園 東福岡 柳川 西日本短大付 飯塚
▲ 門司学園 香椎 星琳 祐誠 九産大九州
秋は県大会を制覇。春は3位ながら九州大会でVと、久々の名門復活に向けて、久留米商がスパークする。サイドのエース今村は打たせて取るピッチングが十分に強豪にも通用することを実感、自信を深めた。打線も活発で、実に28年ぶりの覇権奪回へ、盛り上がりは最高潮だ。実績では春の県大会で優勝した東海大五も引けを取らない。分厚い投手陣が自慢のチームだが、こちらも打線は活発。『夏は打ち合いでも自信がある』と胸を張る。しかし追っていくチームの数が多く、夏は全く予断を許さない展開になりそうだ。自由が丘と九州国際大附属は打線中心。筑陽学園や東福岡も、覇権を争う選手層の厚さを誇る。柳川、西日本短大付属は今季は実績を残せてはいないが、夏に強いだけに他校からは警戒されている。飯塚は”実力NO1"との評価も。春に実績を残した香椎、星琳、祐誠も上位進出を狙っており、シードからの出発になるので組み合わせの優位さもある。さて、今年から福岡県大会は、南北8校ずつが16強に進むという新方式を採用。この方式がどんな波乱を呼ぶのか、この辺りも今大会の見どころの一つだ。
【佐賀】(参加41校)
差がない佐賀工、佐賀商、龍谷の三強に、佐賀北、鳥栖商らが絡む展開か。
◎ 佐賀商 佐賀工 龍谷
〇 佐賀北 佐賀学園
△ 神崎清明 鳥栖商
▲ 遠田工 敬徳
森田監督が復帰した名門・佐賀商、春の県大会を制した佐賀工、春準優勝の龍谷に連覇を狙う佐賀北、3年ぶりを狙う佐賀学園の5校が差なく続き、1枚の甲子園切符を争う。いずれも決め手に欠ける戦力で、”本命”と呼べるチームはおらず、どこが駆け上がってもおかしくはない情勢だ。この中で投手力では龍谷が一歩上回る。速球派の山口をサポートする左腕の清松も好投手で、ロースコアのゲームを演出できる。そのほかの各校は総合力で勝負。強打線のチームがあまりなく、暑い夏にしぶとい野球を展開するチームが強そうだが。。。。秋に準Vと結果を残して『いよいよ甲子園へ』と意気上がっていた神崎清明は、指揮官・森田監督がまさかの転任。ライバル・佐賀商の監督に就任するという苦難を味わったが、”恩師”に恩返しする夏とできるか。遠田工、敬徳ら旋風を巻き起こしそうなチームも数多い、混戦の大会になりそうだ。
【長崎】(参加58校)
佐世保実、長崎日大が二強。選抜出場の創成館も十分に圏内。
◎ 佐世保実
〇 長崎日大 創成館
△ 海星 波佐見
▲ 諫早 清峰
昨年は清峰から転じた清水監督が指揮を執った佐世保実が甲子園へ。その清峰は今春、吉田監督も転任して、長崎に初の全国制覇をもたらした車の両輪はチームを去ってしまった。完全に再出発の夏になるが、これまでの実績を維持できるか。その佐世保実は、連覇に向けて今年も充実した戦力を誇る。県内屈指の強力打線は他校の追随を許さず、投手陣の踏ん張りがあれば連覇も見えてくる。ここ2年連続で夏の聖地に届かない長崎日大は、これ以上の『欠席』は許されないと気合が入る。谷川が成長して本来のエース・福田を脅かすほど充実した投手陣がチームの軸。春のセンバツで悲願の甲子園初出場を果たした創成館は、一度甲子園を経験したことで『バーンアウト』に陥ってしまうことが心配の種。逆に『ぜひもう一度』と全員が思えれば、実力はあるだけに面白い。エース大野は相変わらず県内屈指の好投手だ。海星、波佐見の両校も甲子園を狙う実力は十分。両校ともに野手にセンスの高い選手がそろい、総合力勝負ならどこにも負けない。秋準Vで夏も狙う諫早は、30年のブランクを埋めることが出来るのか。名前の出ていないチームも実力校が多く、なかなか面白い大会になりそうだ。
【熊本】(参加67校)
濟々黌は大竹の出来にかかる。熊本工はライバル対決制す自信あり。春制した文徳も覇権争いへ。
◎ 濟々黌
〇 熊本工 文徳
△ 東海大星翔 鎮西
▲ 九州学院 秀岳館 熊本国府 八千代東
昨夏、今春と2季連続で甲子園の土を踏んだ濟々黌が本命だが、決して”絶対の”という枕詞はつかない。熊本工、文徳の2校もほとんど差がなく追っているからだ。この3強が抜けた存在で、他校とは差があり3強の決戦で代表が決まりそうな情勢だ。まず濟々黌だが、大竹一本の投手陣に若干不安は残る。大竹は左腕からスピンの利いた速球、スライダーを投げ分けて、大阪桐蔭など超強力打線にも果敢に立ち向かっていった実績を持つ。バックも野球偏差値が高いツボを心得た野球を展開しており、本命の地位は揺らがない。熊本工は、打線が強力。打ち勝つ野球を支えるのは”大エース”山下だが、ここも濟々黌と同じく『山下一本』に頼らざるを得ない投手陣が長い大会では弱点になりうるかもしれない。そしてその両投手よりも注目を集めているのが、文徳の『完全試合男』本田だ。九州大会準々決勝の宮崎日大戦で完全試合を成し遂げた本田は、大舞台の3試合でわずか2失点と完全に失点が計算できる投手。しかし、援護するバックの迫力が上記の2校よりはやや劣ると考えられるので、勝負の時にどのような試合になるのか。しかし3強ともに『エースこけたら』の不安を抱えるとは、何とも面白い大会になりそう。エース同士の意地をかけた投げ合いは、大会の華になるであろう。隠れた逸材だが、名門鎮西にも140キロを投げる左腕・岩見がいる。3強の一角を崩して甲子園を手にできるかは、3強のエースをどう打ち崩せるかにかかる。九州学院は”最強”と言われた昨年のチームの幻影を振り払えず、今年はやや低迷気味。最後の夏に3年生がスパークできるか。東海大星翔や城北、八代東なども上位を狙っている。
【大分】(参加48校)
時代は完全に群雄割拠へ。夏に強い名門の力が上回るか、それとも杵築の連覇がなるか?!
◎ 明豊
〇 楊志館 杵築 大分
△ 情報科学 別府青山 柳ヶ浦 大分商
▲ 大分東 大分南 大分西 宇佐
残念ながら、近年の充実ぶりから考えると、今年は地味な大会になりそうだ。センバツに代表を送り込めず、九州大会でも初戦で完敗。やや地盤沈下と捉えられても仕方ないが、こういう時程名門がその力を発揮すると考えられる。そうした意味から、本命は明豊としたい。故障者続出でベストメンバーが組めなかった1年を経て、ようやく夏に”ベストの力”を見せられそうだ。もともと選手の素材では”県下NO1"と早くから言われており、そういった意味では順当な結果となる可能性も高い。岡本・黒岩の投の2本柱は高いレベルで勝負できる好投手だ。楊志館は2度目の甲子園を狙う。技巧派・宮住で相手打線をしっかり押さえ、破壊力ある打線が相手を粉砕する。昨年初出場を果たすも甲子園に大きな”忘れ物”をしてきた杵築は、連覇をもくろんでいる。甲子園経験者を多数残した経験値は県内トップ。昨年のように大会の波に乗れるか。最近実力をグングン伸ばしてきた大分と情報科学は、この混沌とした大会を制する実力は十分だ。名門の柳ヶ浦、昨春の選抜校・別府青山も力はある。そのほかでは、大分市内勢の大分東、大分南、大分西など伏兵も多く潜んでいる。
【宮崎】(参加50校)
秋春連覇の日章学園が集大成の夏を目指す。宮崎日大は剛腕と強打で逆転狙う。”黙して語らない”日南学園が不気味。
◎ 日章学園
〇 宮崎日大
△ 日南学園 延岡学園 鵬翔 宮崎工
▲ 都城東 聖心ウルスラ 高鍋
秋春の県大会を制した日章学園がリード。エース富安は好投手。県内にはこの富永を完全に攻略できる打線はないとみられるため、日章学園としてはこのエースをいかにスタミナ切れさせることなく最後まで投げさせられるかということがカギとなろう。その日章学園に一歩も引けを取らない戦力を誇るのが宮崎日大。春の九州大会では文徳・本田に完全試合をくらったが、そのことが逆の打線を奮起させて、その時よりも実力を1段アップさせた。もともとエース甲斐がプロ各球団の訪問を受けるほどのドラフト候補。投打にスキガなくなってきて、代表にいちばん近い位置まで登ってきている。代表となればそのスケールの大きさは全国でも話題となることは間違いない。日南学園は、2年生中心のメンバーながら、過去こういうチーム構成の時は好結果を残してきており、今年も関係者の期待は大きい。連覇を狙う宮崎工は野村・堂免と注目の好打者が揃う。延岡学園は名門らしくしっかりと守りから入る負けにくいチームだ。鵬翔は全国制覇のサッカー部に刺激を受けて、野球も負けられない。実績は残していないが、意外に関係者の評価が高いのが聖心ウルスラ。活発な打撃は上位校の警戒感が強い。
【鹿児島】(参加84校)
三強に絶対の力なく、新興勢力との混戦を演出。
◎ 鹿児島実 神村学園
〇 尚志館 鹿児島情報 樟南
△ 樟南 鹿屋中央 大島
▲ 鹿児島商
30年にわたる鹿実、樟南のマッチレースから、両校の名称が引退した後神村学園が力を伸ばして3強に。昨年は神村が春夏ともに甲子園に進出し、2強を凌駕する実績を残し始めてが、今年はやや状況が違う。センバツ出場は尚志館。大隅半島から初の甲子園ということで地元は沸いたが、夏も・・・・となるとやや疑問符が付く。強打線は買えるものの、ディフェンスの弱さが夏の覇権へのアキレスけんとなる可能性も。一昨年の”部史上最強チーム”で夏の甲子園を逃してから、鹿実の歩みがやや蛇行してしまった。しかしながら、今年は夏に向けてだんだんとその力を発揮し始めている。相変わらず鋭い打球を放つ打線は県下一の破壊力を持つ。あとは制球難のエース横田が夏に向けて一皮むければ、3年ぶりの夏は近づく。3連覇を狙う神村学園は、松井・大坪の昨年のメンバーがチームを引っ張り、ライバルを破ると豪語。秋優勝、春準優勝と今年の県野球界を引っ張るのは鹿児島情報。エース二木は
プロも注目する速球派。連戦の続く夏に、選手層が他校に比べやや薄いことをつかれなければいいのだが。春優勝の鹿屋中央は、同じ大隅半島の尚志館へのライバル意識が強く、『夏こそ俺たちの出番』と腕を撫す。左右の2枚看板はタイプが違い、相手はとらえるのが難しい。樟南は、今年は樟南カラーを前面に出して、好投手を軸に覇権奪回をもくろんでいる。
【沖縄】(参加63校)
沖縄尚学が本命も波乱含み。復活を期す興南、春制覇の北山も続く。戦力充実のチーム多く、大混戦も。
◎ 沖縄尚学
〇 北山 興南 宜野座
△ 八重山商工 真和志 浦添商
▲ 八重山 沖縄水産 宮古 嘉手納
沖縄尚学は、センバツでの衝撃的な完敗を経てチームがまとまった。比嘉、宇良の2本柱は、このままでは終われないと『絶対に甲子園に行く』と気合満点。打線は破壊力があり、やはり沖縄のNO1の地位にいちばん近いチームだ。この沖縄尚学を、新鋭・北山とライバル・興南の2校が追う展開だ。北山は春の県大会を制した。エース平は『今年の沖縄NO1投手』と関係者が口をそろえる好投手。毎年ドラフト投手を排出する沖縄にあって、最も今年注目される投手だ。左腕からのMaxは145キロに届き、『沖縄のドクターK』だ。興南は逆に、今年は打線で勝負。めったに選手をほめない我喜屋監督自ら『春夏連覇時よりも上』と言い切る打線は、驚異の破壊力を持つ。なかなか島袋以来『エース』を手にできていないチームが、それを手にしたとき、連覇以来4年ぶりの聖地ははっきりと見えてくる。さて、この3強以外では宜野座、八重山商工、真和志、浦添商、八重山など身体能力の高い選手をそろえたチームが揃って波乱の演出を狙っている。宮古、糸満らにも好選手が見られるが、やはりチーム力の高い3強がしっかりと大会を引っ張る展開になりそうだ。
<了>