「…お前は、サンか?」
「うん?」
「サン…。フっ。」
あまり笑う事の少ない琥珀だったが、とても自然に生えたその耳につい笑みがこぼれる。当のサンは、突然笑われたことに若干気分を害す。そして、琥珀を指さしお前には笑われたくない。と声を大にして言う。それもそうだろう、琥珀は慣れてしまったのか忘れていたが、エプロンドレスというのは、兎の耳以上におかしな格好だ。
二人は、視線を交わすと同時にため息 . . . 本文を読む
再び森に足を踏み入れた琥珀は当てもなくさまよう。とりあえず道なりに進むことにした。身長が約七センチになってしまった彼の一歩はとても小さなものできっと一メートルも進んでいない気がする。
緋音を探すことも重要だが今はとりあえず身長を元に戻すのが先決だろう。何か食べ物が見つかるといいのだが。そう琥珀は考えながら進まない道を行く。ふと森の方に目を向けるとほんの少し遠くにキノコの形を見かけた。…食べ物。そ . . . 本文を読む
第二章 一人と一匹(と一羽)の午後
体力は他の兵士に比べてもある方だと自負している。がさすがにわけのわからない世界を走り続け頭と体に疲労が溜まってきたのを感じた。
足を止め深呼吸をする。目を閉じゆっくり開け先を見る。
相変わらず何もない暗い森…と思ったが何だろう奥にある木々の間から白いものを感じた。あれは光ではないのか?
琥珀は、慎重に足を進める。森を抜けたいという気持ちはあるのだが抜け . . . 本文を読む
自分たちから誘っておいてそれは無いだろう。二人は何か面白い話をして、と彼に無茶ぶりをする。琥珀は話が得意な方ではないので突然のことに戸惑いの表情を隠せなかった。
「お前たちが話したいといったのだろう…。」
「言ったかも?」
「言った。」
数分前に話したことだが、あまりにもすっとぼけた表情は本当に忘れているように見えた。琥珀がどうしたらよいか悩んでいることにさすがの二人も気が付いたのだろう、 . . . 本文を読む