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恐怖のウサギ狩り

スティングこと原俊彦は西和賀町(旧沢内村)にある碧祥寺にいた。
「いやぁ、すばらしい」
東北各地から集められた文化遺産の数々にスティングは驚嘆した。マタギの道具、雪国の智恵が生んだ囲炉裏端やかんじき、そりなどは
「これはハンギングの道具に使えるね」
と言っていたが…

盛岡に戻ったスティングは河辺で木切れを拾い集めていた。
「えっと、自在鍵、マルウチ…」
マルウチとはマタギの狩猟道具で、投げると鷹の羽音がすると言うものだ。
そこへハングタンメンバーのアローこと斉藤葵とウイングこと高橋弥生がやってくる。
「なにやってんのよ」
「原さんって暇ね」
「…岩手県民は暇人が多いって言いたいのか」
スティングは少し怒った口調でウイングに言っていた。が、ウイングはくすくす笑うだけ。
「実は、マタギの道具をつくろうと思ってね」
「なぁに、そのマタギっていうのは」
「マタギというのはプロハンターでありハングマンだ。しかし神の名の下に、生きるための掟があった。ドラマのハングマンは人を殺めないけどな」
二人はスティングの説明を聞いていなかった。
「とにかく狩猟道具や生活道具をこうした木切れからつくったんだよ」
「へぇ」
アローは納得した。
「たとえば…」
スティングはさっき拾った木の枝を見せる。
「こんな枝でも自在鍵に使える。それに少し工夫すれば…」
そう言ってスティングは枝を投げた。
「うわぁ、すごい」
「まだまだだけどな」
空に舞った木の枝はウイングが取った。

その頃、盛岡市内のとあるマンションでは女が鏡台で話をしていた。
「あんた、そこまで若い子に入れ込んでるの?ほどほどにしないと訴えるわよ」
しかしそこに男がやってきて、女を刺した。そしてその男ともうひとりの男が女の金品を根こそぎ盗み取った。
「ちくしょう、ここにもありやせんぜ」
「ウサギ狩りもほどほどになんて言われるとな」


一人暮らしの女性が襲撃される事件が相次いでいた。
「お姉ちゃん、一緒に帰ろうよ。車はガソリンがかさむし…」
そう言ってマッキーこと牧村環はショパンこと横田夏子に泣きついた。
「そうよね、と言いたいけどみんなマンションの中で殺されてるわ」
「今は人の肉まで食べないと生きていけないのかな」
そこへスティングがさっきアローやウイングと一緒になってつくった即席の木工品を持ってきた。
「今日は先生のためにいいのを持ってきました」
そう言って木の枝を加工したものを用意した。
「昔の石包丁をなた代わりにして…これでマルカケだ」
「なぁに?そのマルカケって」
「新潟にもあるだろ、ワラダとか鷹匠が使う道具」
「あった、あった。うちにもあるから」
「へぇ~牧村家って何でもあるんだね」
そしてあるもので工夫したワラダが完成。
「これは投げると鷹の羽音がするんだ」
さらに草切り器や碾き臼なども見せた。
「これだけあれば生活に困らないだろ?」
「でも、置く場所ないよ」
「…グランドフロアの大谷さんの板の間を使えば?」
「なるほど」
というわけで、とりあえずスティングたちの作った生活用具たちは1階の空き部屋の板の間に仕舞われることになった。

仕舞い終えた3人はテレビをつけた。するとさっきの女性殺害のニュースが流れていた。
「先生、気をつけたほうがいい。先生もウサギ狩りの対象にされるかもな」
「ウサギ狩り?」
「実はこの殺人にはウサギ狩りの一味が絡んでいる」
「だからウサギ狩りって」
「若い女の子に罠をはっていたずらする連中さ」
「それをウサギ狩りって呼んでるのね」
「そうさ。それにウサギ狩りは肉体的にも精神的にも痛めつける」
それを聞いたマッキーは驚愕した。

マッキーは悪い夢を見てしまった。それはバニーガールのマッキーがスティングに追い詰められる夢だった。
マッキー「…いやっ、何するの」
スティング「ウサギ狩りだ」
マッキーはスティングとバトラーに磔にされた。そこでマッキーは目が覚めた。マッキーはみたけ行きのバスの中だった。盛岡学園のあるみたけへはバスに乗るのが手っ取り早い。
「うん、ウサギ狩りをされる夢を見たの」
「先生大丈夫?ちょっとうなされてたわよ」
エースこと荒川まどかがマッキーの寝汗をふいていた。
「でもバスの中でよかった…わけないよね」
マッキーは目を覚ましたと同時にほっとした表情をみせた。

学校内でも同僚や生徒たちがウサギ狩りの話をしていた。
「ウサギ狩りって、円谷先輩のパパがしてるんじゃないの?あの人、女の子に目がないから」
「うそ~っ!!それより怪しい人いるじゃない、先生の中に」
「誰よぉ」
そういう風評で男性教師はみんな白い目で見られてしまった。
「あ~ぁ、みんなウサギ狩りにされて」
そこへショパンが通りかかった。
「理事長が話があるそうです」
「今行こうとしてたの」
そして理事長であるゴッド・大谷正治のもとへ。
「ゴッド、ウサギ狩りのことで何か」
「実はそのウサギ狩りに便乗した殺人が発生してね」
「それは知っていますけど」
「殺人事件の概要については、マンションの1階のわたしの部屋で説明してくれたまえ」
そう言ってショパンが資料を持って理事長室から出た。

夕方、雨の降る盛岡市内。ショパンとマッキーは1階の空き部屋に生徒たちを集めて特別授業を行なっていてた。と言っても、特別授業とは資料の説明なのだが。
「昨日殺されたのは伊藤美奈子31歳、大通りのホステス。どうやら男数人が来ていたらしいが、男に関する手がかりはなし」
それを聞いたアローが手を上げた。
「大通りのホステスと結びつくような男の人を調べればいいと思います」
「それはわかるけど…」
「でもホステスと付き合うような男ってことは、相当の仕事してるはずよね」
「それよ、警察も手を焼いている男の手がかりをこっちがつかむのよ」
さっそくショパンは美奈子が働いていた大通りのクラブにバニーガールとして潜入。スティングは東北日報の社会部の人に話をして、クラブの客として入った。
「いらっしゃいませ」
「初めてさんですよ~」
そこでボーイが一見さんお断りと釘を刺したが、東北日報の関係者の名前を出してその場を切り抜けた。
「こうゆう時こそ僕ちゃんの機転のきかせどころさ」
太ったホステスのシオリがスティングに寄ってきた。
「あなた新聞の方?」
「べ、別に…東北日報の社員じゃないよ。コネあるから来ただけ」
「そうなの?あ、そう言えば今日いい子が入ったから」
そしてシオリがアカリというバニーガールを呼び出した。
「げっ!!」
「俊彦ちゃ~ん、ウフフフフ」
アカリとはショパンのことだった。さっそくショパンはシオリのことを説明する。
「シオリこと藤沢詩織、20歳。夜のバイトとしてこんなところで働いてるの」
「彼女が何か?」
「実は伊藤美奈子が数日前に彼女に便箋を渡したらしいのよ。もしかして次のターゲットは…」
「確かに怪しいね」
「そしてウサギ狩り事件はこのクラブから半径1キロ以内で発生しているのよ。伊藤美奈子も藤沢詩織もこの範囲内に住んでいるし」
「これで大半は絞られそうだけどな。客も政財官の人間っぽいし」
しかしここでアカリに指名が入ったため報告は中断。スティングは再度シオリとおしゃべり。しかしその隣に岩手県庁の職員数人が座ったので、スティングは帰ろうとした。
「飯塚さん、あさってから環境特別審議会ですよ」
「環境につながる自然教育についていろいろな草案をまとめたんだが」
飯塚はかなりぼやいていた。スティングはまさかこういうストレスを溜め込んだ人たちがウサギ狩りではないかと考えてしまった。

一方、生徒たちは制服を着替えてオトナの格好で街中へ繰り出していた。
ウイング「これでウサギ狩りをとっちめようってことじゃないの?」
アロー「そんなことは警察でもできます」
エース「あっ、原さんだ」
エースがスティングを見つけたので、スティングは急いで逃げようとした。
「見つかっちゃった」
しかしエースとウイングにつかまった。スティングはショパンがクラブにいることを伝え、ショパンからの情報を生徒たちに伝えた。
「横田先生からの情報だ、決して見逃すな。それと県庁の環境審議会の人間が来ていたな」
ウイング「それと事件とどういう関係があるの」
エース「ないない」
ホワイト「それより、ちゃんと調べようよ。あのクラブから1キロってことはそんなに離れてないってことじゃないの」
そしてスティングの情報をもとに半径1キロ範囲の調査に乗り出した。
ホワイト「ここも違うと…」
エース「でも現れないかしら」
アロー「これだけ発生しているウサギ狩りが、今日は出てこないと言うのは…」
全員「お・か・し・い」
そこでなんとクラブの出入り口でショパンを待つことに。
ホワイト「こんなことして、おこられないかなぁ」
アロー「大丈夫よ」
ウイング「牧村先生~早く来て」
ウイングがこんなことを言ったせいかどうかは知らないが、マッキーがやってきた。
マッキー「バッキャロー!誰が呼んだのよ」
ウイングはマッキーにこっぴどく説教された。そこを飯塚たちが通り過ぎた。
エース「あれが飯塚さんね」
アロー「飯塚さんの隣の人、川崎さんと河野さん」
マッキー「飯塚さんと言うのは、県職員ね。岩手県の県章バッジしてたから」
確かに飯塚は岩手県のバッジをしていた。だが川崎と河野は岩手県の職員ではなかった。
ホワイト「飯塚さんの連れの人たち、あたし追ってみます」
ウイング「あたしも」
エース「二人いるんでしょ?あたしと美雪、葵と弥生でペアを組むわ」
アロー「賛成」
ホワイトとエースは川崎を、アローとウイングは河野を尾行する。川崎は本町通、河野は上の橋のたもとに住んでいた。

翌朝、スティングはマッキーから話を聞いていた。
「飯塚さんという人が出てきたの。岩手県職員の」
「飯塚?ということは環境審議会の飯塚和弘委員だ。多分川崎と河野と言うのは…」
そして住所の話をするとスティングはやっぱり、ということになった。
「実は本町通の川崎は東京の東日環境開発の下請け会社の社長だ」
「へぇ~」
「河野卓三と言うのは元ゼネコン社員らしい。盛岡に移り住んで現在閑職の部長代理」
「じゃあ河野が一番怪しいわね」
「今のところは、だな」
「今日にも川崎と河野を捕まえてやる」
「そりゃ無理だ。仮に伊藤美奈子殺しが川崎と河野だと言う証拠があったとしても、ウサギ狩りは被り物をしているんだ」
スティングは被り物をしているウサギ狩りが川崎と河野だという証拠は何もないと指摘、被り物にはこっちも被り物で勝負しなくてはならないと言った。
「被り物対決だ、そっちが外道ウサギ狩りなら…ゴッドのマタギ道具を準備してくれ」
「了解」

アジトでハングタンは私服に着替えていた。
アロー「こんなもの着るの?」
エース「サッカーウエア着るのが苦しくなくなるね」
ホワイト「でも夜にこんなコスプレしたら」
マッキー「ウサギ狩りにはウサギ狩りよ」
ウイング「先生、ウサギはどうするんですか」
マッキー「ウサギはいいのを用意したから」
そう言ってマッキーはショパンに電話した。
マッキー「ウサギ狩りのターゲットは多分その詩織ちゃんよ」
ショパン「わかってる」

クラブに今日も飯塚たちが来ていた。
「そういや、ここのクラブのバニーガールとかがあの女から何か預かっていないか」
そして飯塚は先日のことを思い出した。飯塚は伊藤美奈子にゆすられていたのだ。
「環境審議会の委員が東日環境開発との賄賂で失脚…いい話じゃないの」
「なにぃっ」
「嘘だと言うなら、言ってもいいのよ。でも、ウサギ狩りはほどほどにね」
「…ウサギ狩りだって?俺は激務がいやになったときやってしまうんだ」
そして飯塚はシャワーを浴びて頭を冷やしたいと言った。それからまもなく、川崎と河野が美奈子を殺害して物取りの仕業に見せかけた。
「…女の部屋にないと言うことは、この店か、あるいは店員の誰か」
「そうなりますね」
「いっそリアルウサギ狩りしますか」
そこへショパンが寄ってきて誘惑する。ショパンはここで川崎と河野の書類を古い答案用紙やチラシとすり替えた。
「しかし、環境問題も県民の理解がなくてはどうにもなりませんから」
「環境ビジネスというのは漸進的に成長させるべきものなんです」
シオリもそこに入ってきた。
「環境ビジネスが…」
「すいません」
ショパンのリボンには実は盗聴発信機がつけられていた。それを盛岡城址公園のトイレでマッキーたちも聴いていた。
「何が環境ビジネスよ、それで利権あさって、人殺しやいたずらやっていいわけないわよ」
そして生徒たちは着替えた。

飯塚たちは店を出て、シオリとアカリ(ショパン)を連れて行った。
「ほれ、ほれ、ちょっといいところに案内するぞ」
「どうするんですか」
「もう一軒」
そこにバニーガールに化けたマッキーが。スティングもボーイとしてそこに立っていた。
「もう一軒、ですね。それではこちらはどうでしょう」
マッキーがしつこく誘惑するので、飯塚はとうとう行かされる羽目に。
「飯塚さんですね、テレビ拝見させてもらってます」
ボーイが飯塚のことを知っている、飯塚は驚いた。川崎と河野は商談の続きと言うことで書類を出していた。
「ン?」
河野が書類を出したそのときだった。見なれない紙切れがあったのだ。
「高沢の家具?」
マッキーの用意していた偽書類がばれたのだ。それに気がついたスティングはワラダを城址公園のほうに向けて投げた。それを生徒たちも発見、すでにマタギの格好になっていた生徒たちは飯塚たちに襲い掛かる。
「ショウブ、ショウブ」
そう言ってスティングは飯塚を倒し、3人に網を投げた。
「シオリちゃん、大丈夫?」
ショパンがシオリ、つまり藤沢詩織を抱きかかえる。
「アカリちゃん、どうして」
「藤沢詩織さん、大事な書類は…」
「ミーナからもらってたの」
そして詩織はハングタンに書類を渡した。スティングは詩織に伝える。
「これからここでパーティーを開きます。クラブの店員さんによろしく言ってください」
「それと、ウサギ狩り被害を受けた女性のみなさんも招待しています」
それを聞いた詩織はただただ驚くばかり。

さて、飯塚たち3人は「神の儀式」の場にいた。
「一体、ここはどこなんだ」
そこにハングタンがやってきた。ハングタンはマタギの格好をして、マタギが熊を料理する際に行なう儀式をやっていた。
「さぁ、お前たちはウサギ狩りと称してセクハラまがいの行為をしたのみならず、それを知ったホステスまで殺した、そうだな」
「知るか、そんなこと」
「バッキャロー!!熊にも劣る悪党が」
そしてハングタンは飯塚たちを自白させた。
「は、話すよ。飯塚さんがセクハラやったのを見逃したのは確かに我々だ」
「飯塚さんがセクハラしたことに気がついたあのホステスを殺したのはわたしだ」
「何を言う、出せ」
「もともとは環境政策をビジネスになると考えて肩入れしただけのことだ」
「わたしがセクハラ癖あったのを、飯塚さんが見逃してくれるから…」
「嘘だっ!!」
飯塚は白を切り続けたが、肉体刑に処せられそうになった川崎と河野はもう言いたい放題。
「わかったわ、開放しましょう。ただしどんなことになっても一切責任は持ちません」
開放しようとすると、そこにいた詩織に襲い掛かったが、これをマッキーが目撃した。
「バッキャロー!!」

数日後、ショパンの部屋でウサギ肉の鍋が供された。
「ウサギの肉もおいしいわね」
「昔の人はこんなものも苦労して自分たちで取ったんだからね」
「そうよね」
そこへスティングが。ショパンはバニーガールに変身してスティングを誘惑するのだった。
「ウサギの肉より、先生の指食べたい」
そう言うとマッキーガスティングに鉄拳制裁を加えた。

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