AKIRA-NEWS by goo

オレオレ飲酒当て逃げ事件

岩手県の県庁所在地、盛岡市。人口およそ30万で北東北の中核都市だ。盛岡学園はその盛岡市の中心地から北に位置するみたけにある。幼稚園から短期大学まで完備し、エリート育成にも力を注ぐ学園である。

ある日、盛岡学園の女子生徒が車道で自転車を走らせていた。
「いやっほ~」
「ちょっと、危ないわよ」
ひとりの女子生徒の自転車が車道に乗り出したそのときである。

口笛を吹きながら少しハイな気分でドライブを楽しむ男がいた。彼が運転していたのは4ドアのスポーティーな車だった。
「あっ」
後部座席の男がさっきの女子生徒に気付いた。
「行っちゃえよ」
運転手は何も言わずに女子生徒の自転車めがけて走っていった。

「キャーッ!!」
車の悲鳴と少女の悲鳴が重なった。
「ちょっと、瑞穂。大丈夫?」
もうひとりの女子生徒が被害にあった瑞穂という生徒に声をかける。
するとさっきの運転手が車を降りた。
「ちょっと、どうしてくれるんですか。」
男は酔った感じで瑞穂に言いがかりをつける。
「あんたが怪我したかどうか、確認させてもらいますよ」
そして後部座席の二人の男も車を降りた。
「はい、救急車」
「いやっ、いやぁぁぁぁ」
瑞穂は必死に抵抗したが、多勢に無勢だ。
「ねぇ、葵ちゃん」
葵も瑞穂を連れ去ろうとした男に襲いかかるが、男は拳銃を使って葵を脅した。
「動いたら撃つぞ」
「…」
葵は瑞穂をほっとけなかった。このまま何もできないでいると、瑞穂がどんな目に遭うか知ったことじゃないが。
「瑞穂ちゃんを放して!」
「何だと?」
「あなたがぶつかってきて、そんな因縁つけてどうするんですか?」
「ふざけるな、この娘」
そして拳銃を思った男が葵に銃口を向けるが、運転していた男が突然
「おい、パトカーだ」
と言って車に戻ると、あとのふたりもそそくさと車に乗り込んだ。
「逃げろ」

瑞穂と葵はそのまま学園から市内のほうへ向かっていった。
「でもよかったじゃない」
「これからは気をつけます」
瑞穂は反省した。

しかし、例の三人組は懲りずに次のターゲットを狙っていた。なんと後部座席のふたりはカップ酒なんかを酌み交わしていた。
「今夜も獲物が一匹、二匹…」
そして運転手は通りすがりの若い男にターゲットを定め、当て逃げを演じた。
「いてて」
若い男はもだえるようにして歩道に横たわった。
「あっ」
すると運転手が若い男に寄ってきた。さっきの瑞穂のときと同じである。
「ちょっと、どうしてくれるのよ。僕の大事な車にこんな傷つけちゃってさ。それに…」
そう言って運転手は後部座席のふたりを呼び出した。
「武、充、出番だ」
そして武と充という二人の男は若い男を連れ去った。
「どうするんですか」
「病院だよ」
そして若い男を乗せたスポーツカーは走り去った。

しかし到着したのは病院ではなく雫石川の河川敷だった。
「ちょっと、病院と言うのは…」
若い男は必死に抵抗する。
「話が違いますよ」
だが、武と充に自由を奪われてしまい、そのままのびてしまった。
「さて、電話番号はと」
運転手は若い男から奪った携帯電話から自宅のアドレスを見つけ、連絡した。
「よし、この男の実家がわかった」
運転手は男の実家に電話する。
「もしもし、佐藤さんのお宅でしょうか」
すると若い男が目を覚ます。
「ちょ、ちょっと待て。お袋に何電話してる」
「わたし、木村佳則と申しまして…」
「はぁ、何の御用でしょうか」
「実は息子さんが、わたしの車に傷をつけたと言うことで」
「えっ!?」
母親は息子がそんなことをしたと言うのが信じられないようだ。
「では、息子さんに代わります」
木村佳則を名乗る男は若い男に電話口に出させた。
「お袋、助けてくれ」
「昭雄!」
「悪いのはこいつらなんだよ」
佐藤昭雄は木村たちが悪いと言ったが、木村は耳を貸そうとしなかった。
「…おや?」
「何ですか、そんな目をして」
「どうやらわたしたちのことを知ってしまったようですね」
そして木村佳則はポケットからナイフを取り出し、その刃を佐藤昭雄に向けた。

翌朝、盛岡市内のマンションの一室。盛岡学園の教諭である牧村環と音楽講師である横田夏子が同居している部屋である。
「おはよう」
環が目を覚ました。
「あっ、環。おはよ」
夏子はすでに朝食を作っていた。
「はぁ~、いっつも社会面だけは憂鬱なのよね。自殺とか殺人とか…」
新聞を片手にぼやく環だった。一方の夏子はテレビのニュースを見ていた。
「今朝、盛岡市の雫石川河川敷で男が倒れているのが発見されました」
それを見た環は、さっそく新聞で確認する。が、載っていない。
「今朝見つかったばかりだから、朝刊には載ってないわ」
「それを早く言ってよ、バッキャロー」
さらにニュースが続く。
「発見されたのは、矢巾町に住む飲食店店員、佐藤昭雄さん25歳です」

一方、斉藤葵もこのニュースを見ていた。母親と味噌汁を作っているところで、雫石川の事件のニュースが入ったのだ。
「佐藤さんの証言によると、三人組の男にスポーツカーで連れ去られたとのことです」
「えっ?」
葵は驚いた。もしかして昨日の犯人かもしれない。
「犯人は木村と名乗り、サングラスをかけていたとのことです」
「やっぱり…」

盛岡学園高等部の朝。生徒たちの笑い声がこだまする。しかし環は女子生徒からじろじろ見られていた。
「今日も牧村先生、何かあったんじゃない?」
「どうしたのかしら、またニュース見ていらいらしてるとか…」
環は不機嫌だった。

そんなところに斉藤葵がやってきた。
「あっ、先生。おはようございます」
「斉藤、どうした」
「実は…何でもない」
そう言って葵は立ち去った。

一方、校庭では女子サッカー部が練習していた。内田監督はいつものように声を荒げていた。
「おい、まどか。サイド呼んで」
「はい」
荒川まどかが監督の指示を聞いていた。そこに夏子がやってきた。
「あっ、横田さん」
「まだ練習中なんだ。あとにしてくれ」
「はぁい」
そして夏子が練習が終わるのを待っていると、夏子の友人の原俊彦がやってきた。
「先生」
「あらら、どうしてここに」
「女子のなでしこカップの東北大会が近いからね」
そして俊彦が写真を撮っていくと、内田監督に色々と言われた。
「原君、横田さんと一緒に理事長の話を聞いてくれないか。仕事だ」
「はい」
ということで、俊彦と夏子は理事長の大谷正治の話を聞くことになった。

最上階にある理事長室で、大谷はふたりを待っていた。
「原君、よく来たね。さっそくだが、一連のゆすり屋を探って欲しい」
俊彦と夏子に書類が手渡された。
「実は、強請の手口は振り込め詐欺なんだが、公立高校の生徒とその家族がすでに被害にあっているんだ」
「はぁ、なるほど」
「それがなぜ」
「実はうちの生徒の中にもよく似た被害を受けそうになった生徒がいる。だからだ」
俊彦は大谷の意図を理解した。
「生徒に罪をなすりつけて家族から金をたかるなんて、最低ですよ」
「確かに怪しいわよ」
「ところで牧村先生は」
「彼女は授業中だ」
「わかりました。それでは」
そう言って俊彦は理事長室を出た。
「ところで、うちの学園の被害者と言うのは」
「わかっているだけで4人、被害額は総額で27万円だ。ずいぶん緻密な計算だろ」
「なるほどね、ATMで10万以上振り込めないのを逆手に」
「そういうことだ」
「そうなるとますますほっとけませんよ」
夏子は決心を固めた。

放課後、環は葵と話をしていた。
「朝、あんなに隠してたのに」
「ごめんなさい。でも、ニュース見ててまさかと思って」
「そうだったの。あたしも知らなかったわ」
それを通りがかった夏子が聞いてしまった。
「こら、環!知らないってどういうことよ」
「・・・」
夏子は環に迫ってきた。
「葵ちゃんも被害者みたいなもんでしょ。一緒に来て」
「うん」
しかし、まどかと白澤美雪に廊下で見られてしまった。
「あぁ~っ、牧村先生どうしたんですか?」
「ちょっと、横田さんまで」
「こ、これには深い事情がありまして」
環もまどかと美雪にこう言われては弁解のひとつもできなかった。
「もう、仕方ないわね」
「だったら先生、あたしたちも一緒に」
「お願い」
そして環の運転するセダンで全員を送っていくことになった。
「環ったら馬鹿正直なんだから」
夏子は不機嫌だ。

と、そんなとき一台の車が自転車をめがけてぶつかっているのを発見した。葵はとっさに
「あっ、あの車」
と声を出した。すると昨日同様に車のほうが自転車にぶつかっていった。自転車を運転していたのはおさげの中学生だった。
「い、痛い」
すると車から木村が降りてきた。
「大丈夫ですか?病院までお送りしましょうか」
すると少女は何のためらいもなく車に乗った。
「いい子だ。さぁ…」
しかし木村は少女をトランクに閉じ込めた。
「やめてぇ」
二人の男が少女の持ち物などを確認、そしてそのままどこかへ走り去ってしまった。

さて、石川瑞穂の家の近くを環のセダンが通りかかった。瑞穂はちょうど帰宅中。
「あっ」
葵は瑞穂の姿を見かけた。そして窓から手を出した。
「瑞穂、大丈夫?」
「葵ちゃん、心配かけてごめんね」
「ううん、別に。でも昨日の人たちみたいに車がぶつかってくることもあるから」
すると瑞穂は家の門に向かって走っていった。
「瑞穂…」
葵は瑞穂の態度が変わっていないと言う安心感と同時に、また狙われるかもしれないと言う危機感を持っていた。
「さ、まずは仙北町。荒川のうちね」
「はぁい」
そして生徒たちの家を回って環と夏子はマンションに到着した。

「ちょっと仕事しすぎだったみたい」
環はあくびをした。
「でもよく思いつくわよね、事故を起こしておきながら金をたかるなんて」
「馬鹿みたい。だから明日は車乗らない」
そう言って環は冷蔵庫から一升瓶を出し、大きなお猪口で飲み干した。
「まさかとは思うけど…」
夏子は帰り道での出来事が気になった。
「もしあの女の子に何かあったとしたら」
「そんなこと言ってたら大変だよ」
「でも」
そんな中、テレビのニュースでそのことが伝えられた。
「今日夕方、岩手県盛岡市の国道46号線で中学生が誘拐されると言う事件が発生しました」
それを見た環は仰天。
「誘拐された中学生は市内に住む中学2年生の高橋希ちゃん、14歳です」
「やっぱり」
「目撃証言によると、連れ去ったのは3人組の男性で、ひとりは白のスーツ姿。白いスポーツカーに乗っていたとのことです」

その木村佳則が運転するスポーツカーは岩山展望台へ続く道を走っていた。
「おっと、トランクの少女を忘れるところだった」
そう言って木村は後部座席に座った二人に何かを命じた。そして岩山展望台の駐車場でトランクから高橋希を出した。
「楽しそうにおねんねしてるじゃねぇかよ」
そう言って橋本充が希のほっぺたを叩いた。
「いっ…」
「いたいけな少女ってこれだから」
そして後部座席にもう一人座っていた男、藤田武史が携帯電話をかけた。相手は高橋希の家だ。
「はい、高橋です」
母親が電話に出た。
「高橋希ちゃんのご両親ですか」
「はい」
「実はおたくの娘を預からせております、藤田武史と申します。」
それを聞いた母親はおろおろしながら尋ねる。
「希は、無事なんですか?」
「当然でしょ。彼女には借りがありますからね」
「えっ」
そして藤田は木村に携帯電話を渡した。
「あ、すいません。わたくしいわて自賠責の北村と申します」
「あの、そんな方がこんな時間に」
「実はおたくの娘さん、藤田武史さんの車に傷をつけたと言うことで。あと娘さんも怪我されたみたいで」
それを聞いた母親はもう気が気でなかった。
「主人に代わります」
そして父親が出た。
「希がどうしたと言うんですか」
すると木村は笑ったようにこう言った。
「藤田さんの車に傷をつけ、しかも自分が怪我。こりゃたまったもんじゃありませんな。20万は払ってもらわないと」
「本当ですか?」
「ええ、20万振り込んでもらえたら娘さんはお返ししますよ」
「…では、すぐにでも用意します」
「お願いしますよ」
こうして木村たちは高橋希の両親からの振り込みを待つことになった。

翌朝、いわて銀河鉄道の盛岡駅で夏子と環は俊彦に会った。
「大変だよ」
「どうしたの」
俊彦は自販機で缶ジュースを買い、ふたりにおごった。
「実は昨日の誘拐事件で、犯人側は20万円の振込みを要求したらしい」
「でも新聞には載ってなかったよ」
「新聞沙汰にしたくなかったんだろ。あるいは…」
「あるいは?」
「誘拐事件が別の振り込め詐欺でっち上げ、あるいは雫石川での事件と関連しているなら」
夏子は考えた。葵と瑞穂が襲撃された事件、雫石川での男性傷害致傷事件、そして中学生誘拐事件、これがもし同一犯なら…
「うちの教え子が何か知っているかも」
「本当ですか」
「そうよ、あたしたちが目撃者なんだから」
「まかせてください」
そう言ってふたりは電車に乗った。
「僕も犯人側の手がかり調べます。何かあったらよろしく」

そして盛岡学園高等部の一室。ここで夏子と環は葵と瑞穂に話を聞くことにした。
「で、襲われたときの服装とか覚えてる?」
瑞穂は知らないの一点張りだ。
「別に…」
「特徴ってほどでもないけど、あまり音のしない白い車で」
すると瑞穂も何かを思い出した。
「白いスーツにサングラスで、あとの二人のことをたけしとみつるとか言ってたわよ」
「本当なの?」
「うん」
環が葵に念のため確認する。
「ところで音のしない白い車って、どういうこと?」
「あのね、少し角ばってて、あまりうるさい音がしないって車で…」
そして葵はそばにあったスケッチブックで絵を描いた。
「こんな感じ」
夏子も環も確かにこんな車だったとわかった。
「でも何か昔の車ですよね」
「あまり音のしないセダンのようなスポーツカーね…」

業間時間に俊彦が学園にやってきた。もちろん理事長の許可証付きである。
「さてと、先生たちどこまで進んだかな」
そして職員室で環に話をした。
「実は…これ見て欲しいんだけど」
環は葵の書いた木村の車の絵を俊彦に見せた。
「これは海外の車にも見えるけど…もしかしてロータリーとか?」
「ロータリー?」
「そ、ロータリーエンジン。静かで、瞬発力は確かなの。昔は4ドアとかもあったよ」
俊彦のこの言葉で環は確信した。間違いなく木村の車はロータリー搭載のスポーツカーだ。
「ありがとう。あとはわたしたちの仕事だから」
「そうか」
「お願い」
「一応その辺で調べてみる」
そう言って俊彦は職員室を出た。環はさっそく夏子に報告。
「それって本当なの?」
「ロータリーエンジンの4ドアって言ってた」
「もし俊彦さんの言うことが正しかったら、相手は…」
「間違いないわ。絶対こっちに仕掛けてくるわよ」
「でもロータリー搭載の4ドアなんてあったの?」
それは夏子もわからなかった。
「俊彦さん、うそ言ってるように思えなかったけど」
すると夏子の携帯に俊彦から電話。
「先生、4ドアロータリーの車見つけました。間違いなく…」
「それで持ち主とかは」
俊彦は西警察署にいた。
「滝沢村の…木村さんって人。ローンを組んで中古で買ったらしいですよ」
「ローンを組んだ?」
「それが頭金と分割手数料込みで128万円。この資金の捻出のためにやったんでしょうか」
「それじゃあね、仕方ないよ」
「それとたけしとみつるって人なんだけど」
「それがどうかしたの?」
「実は木村の舎弟分と名乗る人がいた。確か名前が藤田武史と橋本充」
その話を聞いて夏子は驚いた。
「しかも藤田がローンで首が回らなくなって橋本が保証人に、その貸し主は木村佳則となっている。これで間違いない」
「急がなくちゃ、高橋さんが振り込め詐欺に遭ってからじゃ遅いのよ」
ところがそこへ美雪が。どうしたの、と尋ねたが、何も言わずに夏子は走っていった。
「白澤、追いかけるわよ」
そして環と美雪も後を追った。

その頃、高橋希の母親は盛岡銀行の本店にいた。ATMの行列で順番待ちしていたのだ。
「希…ごめんね」
そう言って母親はハンドバックを抱きしめていた。
そこへ銀行員に変装した夏子が。
「あの、高橋さんは」
「高橋はわたしですが」
そして夏子は希の母親に接触した。その後母親は夏子の説明を聞いた。
「お母さん、昨夜の電話の人は誰ですか」
「…確か藤田さんって」
そのとき夏子の脳裏にさっきの俊彦の言葉がよぎった。
「藤田武史さんって言いますよね?」
「はい」
「やっぱり。あなた振り込め詐欺に遭うところだったんですよ」
「そんな」
「それから、20万円ATMで振り込むことはできないんです」
「そうだったんですか」
母親は自分が詐欺に遭うところだったとは露知らず、ショックで言葉が出なかった。
「大丈夫ですか?」
「・・・」
「いいんです、希ちゃんは必ず助け出しますから」

岩山で放置された高橋希は、昼に観光客が発見して無事だった。そして放課後、中の橋のたもとで自転車に乗った葵が高橋希らしき少女を発見した。
「さっそく先生に連絡しなきゃ」
葵は環を呼んだ。しかもまどかと美雪も一緒である。
「希!」
母親が希を抱きしめる。それを見た環はほろりと来たのかハンカチなんて用意。
「いやぁ、これでまずはめでたしめでたし」
こうして高橋希誘拐事件は解決した。あとは振り込め詐欺3人組の始末だけだ。

夜、環と夏子は秘密会議を開いた。
「俊彦さんの話では、白いロータリーサルーンを持っている人間は盛岡西署管内では木村ただひとり」
「そう言えばあとふたり、藤田武史と橋本充っていたけど」
「実は木村の保証人と名乗っているけど、藤田は元藤吉会系暴力団の準構成員だったって」
「そうだったの」
「木村が貸し金屋やってるのをいいことに、自分たちもというわけ。汚いわよね」
そして環は怒り心頭に発する、まさに怒髪衝天の形相でこう言った。
「バッキャロォォォォォ!」
夏子はいつものことながらそんなに怒りを発する環に近寄れなかった。
「で、明日の朝どうするの?」
「明日の朝は青山駅で降りるわよ。青山駅7時集合ってことでよろしく」
これでハングタンの行動は決まった。

木村はテレビのニュースを見ながら憤慨した。
「何やってたんだ、今の今まで」
藤田が謝る。
「すいません、あの子ほったらかしにしてもどうせと」
橋本が続く。
「それにてっきりいつものパターンでかかると思ったんですが」
しかし木村の怒りはおさまらない。
「この前と言い、今回と言い、いったいどうなっているんだ」
「それなんですが、どうも我々の計画を探っているのがいるようです」
藤田が木村に耳打ち。
「なるほど、この前の女子校生の片割れが…彼女の口を塞がなくては」
「それではいつものように」
そして橋本は木村に酒を飲ませた。

運命の朝が来た。7時、青山駅に夏子と環が到着する。それを葵、美雪、まどかが確認する。
「おっ、あれだな」
「ちょうど7時」
「先生、こっちこっち」
まどかが手を振った。それを見た環は
「みんな揃ったわね」
そして3人は自転車で盛岡学園の方向へ。それを夏子と環が追跡するわけだ。
「一応、こっちの準備はできたから」
「あとは相手の出方次第ね」

そして運動公園を過ぎたあたりだった。木村の運転するスポーツカーが現れたのだ。
「あっ、あぶない」
スポーツカーは背後からハングタンを狙っていた。そして工場の入り口でついに動いた。
「きゃあっ!」
「みんな伏せて」
そして3人は自転車を降りて逃げた。
「卑怯じゃないの」
すると藤田と橋本が降りて、3人に食ってかかった。
「うるせぇ」
「相手は女だ、やってやれ」
しかしまどかの蹴りと美雪のジャンピングアタックにやられてしまった。
そして木村が車から降りた。木村は酒気帯びのような顔をしていた。
「どうした」
「そんな顔で運転してたの」
「それがどうしたって言うんだ!」
木村が強い口調でハングタンに説教する。すると環も我慢できなくなった。
「酒気帯び運転、免許停止」
「何だと、こんにゃろ」
「バッキャロー!」
環は木村と取っ組み合いになったが、生徒たちのサポートもあって木村を倒すことに成功した。
「ところで、高橋希ちゃんのおうちの電話番号知ってますか?」
「聞いてどうすんだよ」
「ちょっと電話するの。お・ね・が・いっ」
木村は環に高橋家の電話番号を教えてしまった。

その頃、高橋希は母親と一緒に病院へ行く準備をしていた。
「お母さん、こっちもできたよ」
そこへ電話がかかってきた。
「はい、高橋ですが…まぁ、横田さん」
「よかったですね、娘さんが無事で。今から学校ですか?」
「いえ、ちょっとまだ傷があるんで病院へ」
「そうですか。では午後1時に県営運動公園の南駐車場にお越しください」
「えっ、何があるんですか?」
「それは見ればわかります」
そう言って夏子は電話を切った。
「お母さん、今の人誰?」
「ママのお友達よ」

約束の午後1時、高橋母子のほか瑞穂や佐藤昭雄の母などこれまでの被害者が県営運動公園の南駐車場に集まった。
「いったい何が始まるんだ」
「何でしょうね」
へんてこなドームの中では、ハングタンが用意した自転車がセットされていた。
「さて、みなさんには自転車に乗ってゲームを楽しんで欲しいと思います」
「まずはルール、この自転車は時速25キロ以上出さないとゲームを進められません」
というわけで葵が自ら乗ってみることに。
「25キロになりました」
「OK」
すると道路の画面が写った。しかも車道である。
「この車道をうまくすりぬけられないと…」
「いやっ」
車が迫ってきたので、葵が自転車から飛び降りた。そして自転車は横転した。
「大変なことになりますよ」
「今度はみなさんの番です」
そして葵とまどかは自転車に細工をした。
「できました」
「こっちもOK」

木村たちが自転車に乗り、夏子の掛け声でサイクリング開始。
「楽しいサイクリングですよ~」
しかし夏子の下手な歌を延々と聞かされると、木村たちは萎えてしまった。
「そうそう、言い忘れてしましたけど…」
「何だ」
「この自転車にはニトロが入っています。本当に大変なことになりますよ」
「んなわけねぇ」
するとミニスカートをはいた環が自転車に乗って登場、木村たちはそれを追いかけて加速した。
「待てぇ」
「こんなかわいい女の子、いいなぁ」
しかしメーターの針はすでにレッドゾーンに達していた。
「ちょっと、スピード出しすぎだよ」
環の声と同時にさっきと同じ車道の画面が写った。
「おい、車だよ」
「怖いよ」
「怖がるな」
「さっきも言ったけど、ニトロが入っていますよ。転んだら…わかってますよね」
その恐怖におびえる藤田と橋本は、とうとう洗いざらい吐いてしまう。
「…助けてくれ。俺たちは木村の保証人と称していたけど、実際は俺たちが借金してたんだ」
「そうだ、あの車は木村さんに借金のかたに取られたんだ」
「その借金が128万円、そうですね」
藤田は白を切ったが、すぐにトラックが迫ってきたので観念した。
「そうだ、その通りだ。128万円集まればあの車は木村さんから返してもらう約束だったんだ」
しかし木村は藤田の言うことに耳を貸さなかった。
「おい、藤田。お前何やってる」
「だって、借金のかたに車を取り上げるならまだしも、飲酒運転をしながら事故をでっちあげて、被害者から金をたかるなんて」
「知らないぞ!」

その声はすでに南駐車場の周辺にも聞こえていた。
「そうだったのか」
「飲酒運転は最低だ!」
「オラの15万返せ!」
そして瑞穂のところに葵がやってくる。
「やっぱりあの人が悪かったのね」
「そうよ、人の車で飲酒運転なんて…」

自転車こぎに疲れた木村たちに、ハングタンが喝を入れる。
「まだまだじゃないの、ちゃんとサイクリングしなさい!」
それでも笛吹けど何とやらで、みんな疲れてしまった。
「今何キロだ」
「32キロ」
すると木村が突然あわて始めた。
「待ってくれ、わたしは藤田の車を借金の担保にした。そして藤田の借金を返すためにこんな計画を考えたんだ」
「そうだ、そして俺たちを利用した」
「どうして酒飲んだって時に代わってくれなかったんですか、木村さん」
「それは…今はまだわたしの車だから」
「そんなの勝手すぎます」
すると25キロを切ってしまいニトロが爆発するかと思いきや、
「おや?パトカーが迫っているようですね。スピード違反と飲酒運転ですからね」
「そんな馬鹿な、逃げろ!」
木村たちは必死になってパトカーから逃げようとしたが、実は南駐車場にすでにパトカーが到着していた。ここでハングタンはドームを全開にした。中で自転車をこいでいた木村たちは本物の警察の姿に驚いた。
「木村佳則、道路交通法違反ならびに詐欺、傷害の容疑で逮捕する」
こうして木村たちは逮捕された。ハングタンたちもパトカーを見送るように散り散りに立ち去った。


しかし飲酒運転に振り込め詐欺と「極刑に処す」悪人ですね。

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ザ・ハングタン」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事