<font size="2">土方巽没後三十年特集について
厳密にいえば、土方巽没後三十一年になる。
本当に月日の経つのは早い。「入院した」と聞かされて、そろそろ見舞いに行かねば、と思っていると「危篤だ」の知らせ。
絶句した。何故だ。何故土方巽が呼ばれなくてならないのだ。何故だ。
京都大学西部講堂公演は、度肝を抜かれた。あのあたりで、土方巽は多くをつかんだようだ。
アートシアター公演、西武劇場公演は土方巽の渾身の作品ばかり、得意満面な時期。
アスベスト館の連続公演が始まると、終演後は毎日二階が酒席になる。
土方巽を見ていると、あまり食べずに飲んでいる。これが毎日だ。
芦川羊子をはじめ舞姫たちが、白塗りもそのままで芋の煮っ転がしを運んでくる。床に皿が並ぶ。
でも土方巽は手をつけない。
もじもじした感じで土方巽が澁澤龍彦に「どうでしたか」などと聞く。
「あれは夏休みですね」中嶋夏が白いパンツで麦わら帽子、腰を落としてしゃがみ、じっとした場面が長かった時・・・。
澁澤は周辺から攻める。そこでは、批評はけっして出ない。語ると何かが飛んで行ってしまうように、みな寡黙。
吉岡実がかん高い声で話しだす。それに松山俊太郎が呼応する。詩人とインド文学者の禅問答。皆下を向いて酒肴をてにとる・・・。
そんな風景が思い出される小野塚誠の記録。そして小林嵯峨、雪雄子ら舞姫の土方巽にまつわる逸話満載。
ダンスワーク77。2017年3月25日発売。
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