先を急ぐ必要などない。 サイクルコンピュータなんぞ付けていないので、数字も気にしなくてよい。 ただ、ただ、風景を眺めるのである。 田植え真っ盛り。 農道を通りながら、その様子を見る。 耕運機の稼動音を、楽しみながら。 住宅街を抜けていると、食器の触れ合う音やテレビの音がする。 そして、聞き取れないくらい小さな話し声も。 のんびりペダルを踏みながら、感覚のアンテナを伸ばす。 眺め、聞きながら。 自転車は、こういう楽しみ方に向いているのである。