普通の人ですから

空気に溶け込むような感じで走ってきました。
あんまり気持ち良いので、ふわーっとしながら。

ペダルを回している意識はなくって、スーッと景色が流れます。
あれよあれよと進んで行く自転車。
帆船が風を受けながら水面を滑る、あれと似た感じ。

静寂の乗り物、自転車。
チェーンから出るかすかな音、それしかしません。
そのまま、ずーっと走っていたい気分でした。

ヘルメット、サングラス、サイクルウエア。
格好だけは、ビシッとして走ってます。
で、信号待ちをしていると。
「競輪選手ですか？」と、ご老人に聞かれました。
「いいえ、普通の人です」とお声たえします。
「えーっ、体格が良すぎますよ」と、再びご老人。
「普通の人ですから」と笑いながら私。
信号が青になったので、ご老人に挨拶をして走り出します。

走りながら、ふと思います。
普通の人って言ったけど、おれって普通？
素直に普通と思わない自分がいます。
だよね。

今度、同じこと聞かれたら「普通になりたい人」って答えよう。