ワクチン接種率低下で罹患率、死亡率が若年世代で増加
2021/09/25
(夕刊フジ)
日本では、ワクチン接種率低迷の影響で、若年世代での子宮頸がんの罹患率、死亡率が増加している。また、加齢と共に免疫力が下がるので40代以降の女性にもHPV(ヒトパピローマウイルス)検出率が高いことも最近わかってきた。さらに、喫煙の影響で持続感染が続くリスクも報告されている。
一般に子宮頸がんは、HPV感染を原因として、前がん病変(がんになる前の状態)を経て発生する。子宮頸がんの予防には、発生の原因となるHPV感染を予防するためのHPV予防ワクチンと子宮頸がん検診を受けることが大切だと、この連載でも説明してきた。なぜなら前がん病変が発見されれば手遅れになる前に早期治療を行うことが可能だからだ。
日本のHPVワクチン接種率の低さに対して世界保健機関(WHO)も警鐘を鳴らしている。日本政府を名指しする形で「乏しい証拠に基づいた政策決定が、有効かつ安全なワクチンの不使用をきたして、真の被害をもたらすものである」との声明を発表。合理的な理由ではなく世論や国民感情の影響で決まったとも非難しているのだ。
ワクチンには賛否両論あるがHPVウイルスは感染した場合、女性のうち100人に1人が10年以上経ってからがんになるといわれる。接種率が1%未満まで激減した2013年から来年で10年を迎える日本人の子宮頸がん発症率の推移には大いに不安がつのる。
ワクチンを打つのは「怖い」「恥ずかしい」「面倒」「費用がかかる」といった理由から受診しないまま感染を見過ごす人がいる。そうならないために子宮頸がん撲滅に寄与することを目的とした「公益財団法人・性の健康医学財団」では、HPV郵送検査の無料プロジェクトを実施している。
自宅で自己採取した検体を送ると3カ月後に結果が返送される。2017〜20年まで3年間で、日本在住の女性から1003人の有効なデータが得られた=グラフ。
それによると、全体のHPV陽性率は42・5%(426例)で28・1%(282例)が高リスク型HPVに感染していた。最も多く検出されたのは52型で8・6%、20代が36・8%と最も高く、30代が25・7%、40代が22・4、50代以上は13・2%であった。
「このデータのなかにコマーシャルセックスワーカーの経験者が8・7%(87例)含まれていたことは、HPV感染への関心の高さの現れと考えられます。しかし、高リスク、低リスク感染ともに危険因子にはなっていませんでした。有意な危険因子になっていた人は検査時で生涯の男性パートナーが6人以上いました。子宮がんワクチン接種を選択しない場合は、生涯のパートナー数を減らすこと、コンドーム使用などによる性感染症予防などの行動変容が大切です」
そう話すのは、性の健康医学財団理事長の北村唯一医師。
繰り返すが、子宮頸がんは検診で、前がん病変を発見して、治療することが可能ながんである。
性の健康医学財団では無料検査を継続中だ。とくに、思春期のお子さんがいるご家庭なら、ぜひ検査を受けさせてほしい。こちらは女性対象になるが、男性のHPV検査についてはどうか。
「男性に発生するHPV関連がんは、女性の子宮頸がんに比べて発生率や死亡率が低いため、まだ手付かずの状態です。しかし今後、検査が一般化する可能性はあると思います」(泌尿器専門医の関口由紀氏)
不安な男性は民間の郵送検査を活用するのもひとつの選択肢だ。 (熊本美加)
【無料の自己採取検査お申込み先】公益財団法人「性の健康医学財団」事務局 〒113−0034東京都文京区湯島2−31−6湯島堀井ビル3階/電話03・3813・4098/問い合わせフォーム(https://www.jfshm.org/contact/)
※2つ以上のHPV型を持つ症例は複数回カウントしている
2021/09/29 06:00
子宮頸がん ワクチン 感染 WHO 性感染症
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