地域医療の変化

世界規模の感染症を経て私達がすべきこととは

期待された効果の背景と実際の問題点

2023-07-26 08:27:04 | 国民医療費

地域医療が重視されている背景には「年々増加している医療費と税金による負担」があります。地域医療自体は「病床数の効率化」や「高齢化社会に向けて、地域でも質の高い医療サービスが受けられるシステム作り」を目的としていますが、それによって起きるのが「医療費増加の抑制」でもあるのです。

日本の国民医療費は1980年代から2010年代間でおよそ2倍の数値である40兆円を超え、特に年々増え続ける後期高齢者の医療費は、国民医療費の35.4%を占めています。これを支えているのが、先進国の中でも突出している「日本の病床数」です。病床数が埋まるほど医療費が発生し、社会保険料などの負担が増していく悪循環を変えるべく国が考えたのが、「病床のダウンサウジング(削減)」でした。

この頃考えられていた問題では、症状が軽く手厚い医療を必要としない患者が、「病床が余っているから」という理由で病床を利用する=必要な医療費が増えているというものでした。地域医療や自宅医療の制度を整え、病院の役割分担や機能性を明確化していくことで、多くの地域で不要な病床を2~3割削減でき、その分に現状足りていない分野の病床を増やせる、という試算です。

しかしこうした病床削減が推進されていた中で起きたコロナ禍において、削減したことで足りなくなった病床数は一転して大きな問題になりました。一度減らしてしまった病床数は「必要になったから」では増やせません。コロナ禍を経て、地域医療構想は具体的な「不測の事態」を踏まえたシステムへの変更が急務となっています。


地域医療構想に今後求められる視点とシステム

2023-06-28 08:27:04 | コロナ禍

国の主導のもと、地域医療構想を推し進めてきた医療現場において起きた「コロナ禍」は、地域医療構想における「病院ごとの役割の特化、分担化」を大いに揺るがす出来事となりました。病床の削減を進めてきた最中に起きた「機能分担が出来ないほどに、病床数が決定的に足りない」出来事は、地域医療構想の弱点を露呈したとも言えます。

こうした危機管理に関して地域医療構想内に想定はなかったのでしょうか。地域医療構想の計画の一環として、コロナ禍以前にも2009年の新型インフルエンザ、2011年の東日本大震災の経験から、「警察・消防や救命救急センター、検査・行政機関の連携確保と健康危機シミュレーション」の内容は盛り込まれていました。

しかしその「具体的な連携方法」などは実施にまで至れる段階になく、結果としてコロナ禍にはノープランで臨むことになってしまったと言えます。皮肉にもコロナ禍が起きた事で、その必要性や計画性の急務、課題の洗い出しが大きく進んだのです。

病床数が足らなかったこと、それ自体も大きな問題ですが、地域医療構想の目的である「年々増え続けている医療費の増加を抑える」ことは今後の高齢化社会に向けて取り組まなければならない問題です。実際に起きてしまった「危機管理」が必要な事態のコロナ禍において、計画はあっても実行ができなかった危機管理を踏まえ、地域医療構想はより「実行」を重視した具体的な連携方法が求められています。