ガラスノココロ④

2008-07-28 17:53:04 | ガラスノココロ
1章

続き
「りゅーの目は弱視なので文字読めないけど馬鹿にしないでね!」
あれれちゃんの説明が終わった。



そう。俺、水上龍は目が殆ど見えてない。何がどこにあるかとか気配で分かるから日常生活には困らない。分かるから、誰も信じてくれない。文字が分からないのは頭が悪いからだと決めつけられて、馬鹿にされて、生きてきた。絶対ここでも嘘だと言われる。俺は誰も信じない。しんじられない。

皆が帰ってゆく。しあわせな人種のしあわせなおしゃべりが新参者を避けて遠ざかってゆく。
しあわせなおしゃべりの隙間から、猫宮のあほ声が近づいてくる。
「りゅー!はーなーさーん!!部屋まで案内するから来てえ!」
うざいけど、このままつっ立ってるのも嫌なのでついてっってやった。

いくつもの階段を上り、いくつもの廊下を渡った。先に着いたのは、姉貴の部屋だった。あいつが一人で外に出られるのか。方向オンチのくせに。
猫宮は姉貴に携帯をわたすと、また歩き出した。

まだ歩く。まだ上る。

最上階のいちばん北の角部屋にたどりつくと猫宮の足が止まった。

「りゅーの部屋はここ」猫宮はそう言うと、一緒に入ってきた。そして、俺のベッドに座ると、隣に座れ、と言った。少し離れて俺が座ると、寄ってきた。なんだこいつ。
 


 私は別に、男の子に色目使ったわけじゃない。ただ、気になっただけ。りゅーがここになじむまいと一人でいる理由が。
「天窓がついてるの。りゅー、外の空気すきかなぁって思って」普通の話題からせめてみた。
 いやな沈黙がながれる。
「答えてよー」甘えてみる。
「いつまでここに座ってんだ。帰れ」ふいに、りゅ―に怒られた。ちょっとショック。
「じゃあ。ケータイ。バイバイっ」ちょっと乱暴にドアを閉めた。なんなのよ。意味わかんない。馬鹿みたいに見えるじゃんっ。わたし。

 廊下に出たら、あさひちゃんがいた。
「これは下で話そう」あさひちゃんが言った。これって何よ。あさひちゃんまで意味わかんない。


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