皇室の食材は自家製と市場購入の2つの入手ルートがあった。ところが戦争末期になると、肥料や飼料の不足と若手職員の出兵による人手不足から畑や牧場の維持が難しくなり自家製の生産は低下。多くの食品を市場から買い入れなければならなかったが、天皇がヤミで物を買うことを禁じていたために、公定価格でしか購入できない。最初は持ち出しでお付き合いしてくれる商人もいたが長くはつづかず、気づけば出入り業者は寄り付かなくなってしまった。ゆえに大膳寮の厨房には宮廷にはふさわしくない食材が並ぶ
主食は配給の米に麦を混ぜたものを日に1食。他の2回はうどん、そは、すいとん、さつまいも、馬鈴薯代用パンなど。代用パンには大豆・とうもろこし・乾燥野菜などが混じっていたため、やや黒ずんでいる
魚は以前の鯛・鰤・鰹などにかわって、配給のすけとうだら・鰯・鯖・秋刀魚の類が常連となり、それでもあればよい方だった。野菜は乾燥野菜の備蓄を取り崩して使用した
しかし、あるところにはあった。軍部には驚くほどの食料品があった。肉・魚・缶詰・砂糖・味噌・醤油・日本酒・ビール・ウィスキーの類が山ほどあった
天皇皇后の使用する食器は、薄い白磁に、藍色で十六重弁の菊の紋章が染めつけられている。その上にちんまり置かれた代用パンを口に運びながら、皇后は昨日咲き始めた花の話題をテーブルにのせた。早速天皇はその学名と特徴を話しだすが、途中からどんどん説明が専門的になってゆく。熱心に聞き入る皇后の背後の開け放たれた窓からは、ふいに澄んだ鳥のさえずりがする
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