諸事情のため断酒を決意してから凡そ10年間寝る前にある安定剤を服用してきた。
眠れないという事を言い訳に寝酒に手を出したくなかったからなのだけど、ある安定剤の依存性が最近すこぶる評判が悪い。
それで主治医に相談して依存性の少ないデ◯ビゴという睡眠導入剤に変更することにした。
服用1日目はちょっとドキドキした。何せ10年も付き合ってきた彼女と別れ新しい彼女と過ごすのである。
服用後なかなかストンと眠りに落ちない。
寝ているのか起きているのかわからない状態がつづく。
そう、まるでワイングラスの縁に腰かけているような気持ち。
グラスの外側は覚醒、内側は眠り。その狭間にいるような感覚が続いていた。
そのうち、はっきりと目が覚めた。時計を見ると床についてから2時間ばかりたっていた。
それから全く眠れない。仕方なくずっとネットサーフィンしていた。
若い時ならいざ知らずこの年で徹夜はきついだろう眠られなかった日が休みで良かったと思ったが、さにあらず。
ちっとも疲れなくむしろテンションの高い一日が過ごせた。
新しい彼女と過ごす二日目もワイングラスの縁に腰かけているような感覚と覚醒は同じだったが二度寝がすんなりとできまあまあ眠れた。
三日目ワイングラスは現れず、中途覚醒はあったがまあまあ眠れた。
但し、朝から頭痛がひどい。
私は頭痛もちであるため薬のせいかどうかはわからない。ロキ〇ニンを飲んでしのいだ。
この頭痛はもしかしたら、別れた彼女(ある安定剤)の怨嗟からかもねと思ったりもした。
薬の離脱症状はあえて聞かなかった。聞くと思い込みという沼にはまりそうだったから。
仕方ない。彼女の怨嗟も引き受けよう。何しろ長い間付き合ったのだから。
さてはて、今夜はワイングラスは現れるだろうか。
どのように夜が過ぎるだろうか。
梅の香やゆめとうつつの間合いにて