さんそくのわらじ(Xyzzyの備忘録)

「医事課」「診療情報管理」「情報システム管理」の三足の草鞋を履いてみた。

雷と注射

2009-06-11 07:56:12 | 医療
高槻市体協が破産申し立て 落雷事故で賠償めど立たず - goo ニュース
サッカー試合中に落雷に遭った私立土佐高校(高知市)の男子生徒が重い障害を負った事故で、賠償命令を受けた大阪府高槻市体育協会は10日、大阪地裁に自己破産を申請した。体協の破産申し立ては異例。今後は破産管財人の下で資産整理を進め、未払いの賠償金を捻出する。生徒側は土佐高校と試合を主催した高槻市体協を相手取り提訴。昨年9月、両者に計3億円の賠償を命じる判決が確定した。

不幸な事件で、残念な結果である。 
残念な結果というのは判決の内容ではなく、賠償金の捻出方法として破産申し立てを行わざるを得なかったことである。
一般的にリスクマネージメントには、「回避」、「移転」、「軽減」、「受容」の四つの方法があるといわれる。
体育協会のリスクマネージメントはどうなっていたのだろうか? きっと「受容」になっていたのだろうが、受け止めきれず最悪の事態に追い込まれたということだろう。
結果として起こることは容易に想像できる。 業界の「萎縮」で、そしてその先に待っているのが分野の「衰退」である。

日本が現在「予防接種後進国」であり、その結果「ウイルス輸出国」として世界に恐れられている事実も同じような経過をたどっている。
日本におけるワクチン行政の遅れは、90年代前半のMMRやその他の集団訴訟などにより国が敗訴したことに発端したといわれている。

「訴えるんだったら、やらねーよ。」 見事なリスク回避である。
結果、発生する罹患のリスクを無視できれば。

どのような管理をするべきだろうか?
保護者にリスクを「転移」させることもできる。 現在、日本脳炎の予防接種を受けようとすると、何やら「こわーい」事がいっぱい書いてある同意書に署名をさせられる。 
「このようなリスクがあって、そのリスクに対する責任は自分で取ってください」という同意書である。 
まあ、米国ではこのような書類に署名させられることは日常茶飯事で、私なんかは字が小さくて、(英語が不得意で)読む気にもならないといったところだが、、、
保護者は、どのようにそのリスクを管理すべきなのだろうか。 通常は保険をかけることによる「軽減」を行うくらいしかない。
そして保険会社は、分散することによりそのリスクを「受容」するわけだ。

このような形をとるためには、
「何のためにやるのか」
「やらないと、どのような可能性があるのか」
「やった場合、どのような可能性があるのか」
「事故が起きた際には、どのような保障制度があるのか」
ということを、保護者がしっかり理解しておく必要がある。 
その努力を怠って、「責任をとれー!」というのはいささか無責任というも気もする。

「だれが、説明するのかって?」
「それは、国でしょう。 それなりの対価を払ってくれれば医療機関は業務を受託するけど。」

結局、みんな責任を取りたがらないのが一番の問題なんですね。

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