集まってきた情報の中で、最初に官邸関係者の目を引いたのは、2015年の月刊誌「致知」(致知出版社)4月号に掲載された対談だった。籠池氏は、山口県防府市の松浦正人市長と教育について語り合う中で、以下のように述べていた。
「安倍総理には当園に足を運んでいただいた事もあり…」
安倍首相は、籠池氏が大阪市淀川区で運営する塚本幼稚園を訪問した事実はない。これ以外にも、籠池氏側は「愛知県の中学校への推薦枠」や「小学校の総建設費」「経歴」など、虚偽報告や間違いを重ねていた。
どうして、籠池氏側はすぐ分かるウソをつくのか。
官邸関係者が「これは決定的だ」と確信したのは、TBS系「報道LIVE『あさチャン!サタデー』」が追及していた問題だ。
塚本幼稚園のホームページには《昭和61(1986)年5月11日 昭和天皇陛下 御臨幸》とのタイトルで、「昭和天皇陛下には、全国植樹祭の途次、当園に御臨幸賜り、園児より紅白のカーネーションをお渡し致しました」との記述があった。
ところが、同番組の取材に対し、宮内庁は「記録を確認しても、そのような日程はない。(昭和天皇は)塚本幼稚園には行かれていない」と答えたというのだ。
官邸には「籠池氏は、安倍首相本人に対応させるような人物ではない」との認識が広がった。
そこで寄付金問題については、菅義偉官房長官が16日午後の定例会見で、「首相に直接確認したところ、『自分では寄付していない。昭恵夫人、第三者を通じても寄付していない』ということだ」と発表させ、首相には対応させなかった。
その後、籠池氏の証人喚問が決まると、安倍首相は「よかった。これで公明正大に証言を得られて、白黒がハッキリする」と語ったという。
官邸関係者は、証人喚問に向けて自信を深めている。籠池氏側が寄付を受け取ったとする2015年9月5日の状況や、籠池氏側が公表した同月7日の郵便振替用紙についても、明らかな矛盾点を把握している。
事実関係を精査するなかで、官邸関係者が「最大の疑問」とするのは、籠池氏の「動機」だ。
籠池氏は10日の記者会見で「国会議員から口利きもしてもらっていないし、安倍(晋三)首相や昭恵夫人から何かしていたいただいたことはない」と断言した。だが、6日後に「寄付金をもらっていた」と豹変した。
この背景について、自民党関係者に先週末、ある推論がもたらされた。
「籠池氏は、周辺から『政府はあなたを刑事訴追する方針だ』と聞かされたようだ。逮捕を恐れて、野党を巻き込んで攪乱戦術に出たのではないか」
安倍首相と全面対決の構図を作り上げれば、倒閣優先の野党の支援を得ることができる。いざ逮捕されても、「公権力の濫用」を訴えて、世論を味方につけることができるという分析である。
籠池氏は16日、野党4党の代表者を自宅に招き入れて、「安倍首相から100万円の献金を得た」と主張した。与党の代表者は入れなかった。籠池氏は保守を自称しながら、「日米安保条約廃棄」「米軍基地撤退」を綱領に掲げ、教育勅語への立場もまったく異なる共産党や、民進党の代表と並んだのだ。
野党陣営には、自殺者まで出した「第2の偽メール事件」におびえる雰囲気もある。
日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は18日付の紙面に「記事を取り消します」との訂正記事を掲載した。16日付1面に掲載した「籠池氏 “昨年10月、稲田氏と会った” 本紙に証言 “感謝状”贈呈式で」という記事について、籠池氏夫妻の同紙取材への証言と違って、感謝状贈呈式に参加していなかったことが分かったというのだ。
籠池氏側の攪乱戦術に乗せられたのだとしても、証人喚問がセットされた事実は変えられない。
もし、森友問題の核心とは程遠い寄付金問題に時間が割かれ、国民の不信感が拭えていない国有地売却などの問題にメスを入れられなければ、時間の無駄である。国会運営には一日数億円もの税金がかかる。通常国会は、野党が森友問題ばかり追及するため、重要法案の審議が進んでいない。
北朝鮮情勢が極度に緊迫するなか、何が優先して議論されるべきなのか。国会の存在意義そのものが問われている。マッチポンプ(高視聴率だけを考えた)的なワイドショーネタを追い回すメディアの体質と野党に眼力のある政治家がいないことが最大の問題であることをあぶりだすことになりそうだ。
「安倍総理には当園に足を運んでいただいた事もあり…」
安倍首相は、籠池氏が大阪市淀川区で運営する塚本幼稚園を訪問した事実はない。これ以外にも、籠池氏側は「愛知県の中学校への推薦枠」や「小学校の総建設費」「経歴」など、虚偽報告や間違いを重ねていた。
どうして、籠池氏側はすぐ分かるウソをつくのか。
官邸関係者が「これは決定的だ」と確信したのは、TBS系「報道LIVE『あさチャン!サタデー』」が追及していた問題だ。
塚本幼稚園のホームページには《昭和61(1986)年5月11日 昭和天皇陛下 御臨幸》とのタイトルで、「昭和天皇陛下には、全国植樹祭の途次、当園に御臨幸賜り、園児より紅白のカーネーションをお渡し致しました」との記述があった。
ところが、同番組の取材に対し、宮内庁は「記録を確認しても、そのような日程はない。(昭和天皇は)塚本幼稚園には行かれていない」と答えたというのだ。
官邸には「籠池氏は、安倍首相本人に対応させるような人物ではない」との認識が広がった。
そこで寄付金問題については、菅義偉官房長官が16日午後の定例会見で、「首相に直接確認したところ、『自分では寄付していない。昭恵夫人、第三者を通じても寄付していない』ということだ」と発表させ、首相には対応させなかった。
その後、籠池氏の証人喚問が決まると、安倍首相は「よかった。これで公明正大に証言を得られて、白黒がハッキリする」と語ったという。
官邸関係者は、証人喚問に向けて自信を深めている。籠池氏側が寄付を受け取ったとする2015年9月5日の状況や、籠池氏側が公表した同月7日の郵便振替用紙についても、明らかな矛盾点を把握している。
事実関係を精査するなかで、官邸関係者が「最大の疑問」とするのは、籠池氏の「動機」だ。
籠池氏は10日の記者会見で「国会議員から口利きもしてもらっていないし、安倍(晋三)首相や昭恵夫人から何かしていたいただいたことはない」と断言した。だが、6日後に「寄付金をもらっていた」と豹変した。
この背景について、自民党関係者に先週末、ある推論がもたらされた。
「籠池氏は、周辺から『政府はあなたを刑事訴追する方針だ』と聞かされたようだ。逮捕を恐れて、野党を巻き込んで攪乱戦術に出たのではないか」
安倍首相と全面対決の構図を作り上げれば、倒閣優先の野党の支援を得ることができる。いざ逮捕されても、「公権力の濫用」を訴えて、世論を味方につけることができるという分析である。
籠池氏は16日、野党4党の代表者を自宅に招き入れて、「安倍首相から100万円の献金を得た」と主張した。与党の代表者は入れなかった。籠池氏は保守を自称しながら、「日米安保条約廃棄」「米軍基地撤退」を綱領に掲げ、教育勅語への立場もまったく異なる共産党や、民進党の代表と並んだのだ。
野党陣営には、自殺者まで出した「第2の偽メール事件」におびえる雰囲気もある。
日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」は18日付の紙面に「記事を取り消します」との訂正記事を掲載した。16日付1面に掲載した「籠池氏 “昨年10月、稲田氏と会った” 本紙に証言 “感謝状”贈呈式で」という記事について、籠池氏夫妻の同紙取材への証言と違って、感謝状贈呈式に参加していなかったことが分かったというのだ。
籠池氏側の攪乱戦術に乗せられたのだとしても、証人喚問がセットされた事実は変えられない。
もし、森友問題の核心とは程遠い寄付金問題に時間が割かれ、国民の不信感が拭えていない国有地売却などの問題にメスを入れられなければ、時間の無駄である。国会運営には一日数億円もの税金がかかる。通常国会は、野党が森友問題ばかり追及するため、重要法案の審議が進んでいない。
北朝鮮情勢が極度に緊迫するなか、何が優先して議論されるべきなのか。国会の存在意義そのものが問われている。マッチポンプ(高視聴率だけを考えた)的なワイドショーネタを追い回すメディアの体質と野党に眼力のある政治家がいないことが最大の問題であることをあぶりだすことになりそうだ。