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『べっぴんさん』8週その1.泥水を湧き水に変えろ

2016-11-27 00:16:14 | 朝ドラ
『べっぴんさん』

2016年後期BK朝ドラ『べっぴんさん』の第8週「止まったままの時計」のネタバレ感想。


帰ってきた紀夫が中田伯

※今回、前半後半2部構成です。




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●帰ってきた紀夫


7週のラストシーン、紀夫が戦地から帰ってきました。

潔や五十八らがすみれの家にやってきて、のりおの帰宅を喜びます。
お祝いをやらなきゃ!と提案するすみれですが……

帰ってきたら、俺の嫁、立派なバラック建ててる。
帰ってきたら、俺の嫁、商売を始めてる(しかも順調らしい)
帰ってきたら、俺が継ぐ予定だった会社、もう動き出してる。
帰ってきたら、お嬢様だった義姉がなんかやたらしっかりしている。



「苦労をかけたな。僕が帰ってきたからもう大丈夫や」
と言いつつも困惑を隠せない紀夫。

居場所がない。
紀夫の居場所がびっくりするほどない。

その夜。


「列車の中で噂を聞いた。神戸が空襲を受けたことも焼け野原になったことも。すみれとさくらが元気でいてるか、心配で心配で、生きた心地がしなかった」
「この国は変わったなぁ」


完全に浦島太郎っていう。




●この国は変わった


で、翌日。
お祝いのパーティーが開かれました。


帰ってきたら、米国兵士と街の子どもたちがなれ合ってる。


帰ってきたら、敵国の言葉や食べ物が机の上に並んでる。


帰ってきたら、よく知らない人たちがいっぱいいる。


帰ってきたら、俺と嫁の子どもが知らん男に懐いている。


なんかいろいろ変わってる。


解せなかった紀夫、昭一と勝二にこんなことを話していました。

 
「心配やないんですか?僕にはよう理解出来ません」

その声がやたらと通っちゃって、みんなに聴こえちゃった。(あるある)

これはさすがに空気がよろしくない。
家に帰ったあと、紀夫に「てめえKY発言してんじゃねえよ」と珍しくおこるすみれ。

「あんなこと言うたらみんな嫌な気持ちになってしまうやない!」

なのに紀夫。
「僕は心配してるんや」だの「失敗したらどうするんだ?」だの。

あかん、これ順調に中田伯の永山絢斗だ。
重版出来!の話)


「簡単に人を信用したらあかん」
「僕が働く。何か、仕事を探さんとな」


坂東営業部は潔とゆりに任せればいい、と会社を継ぐのをやめると言い出す始末。


「僕の出る幕はない」

ピーヴ全開じゃねえか。
ATフィールドもピーヴも全開じゃねえか。




なんともわかりやすいコミュ障のひきこもりよ。
すみれとの間の壁がなんともわかりやすい。


ノ―リー、おまえ……
そんな辛辣な体験……


いや……



わりと子どもの頃からこんなだったかな。第1週




それでも変わらないものがひとつありました。
紀夫のお母さん。



2週で紀夫が出征したとき、膝から崩れ落ちて涙を流していた母。

変わっていった時代に取り残されて、紀夫の状況が辛辣な感じですが。
ひとつだけ変わらなかったのは、子を待つ母の愛なんでしょうね。



●長太郎おじさん可愛い!!!


近江に行くことになったゆりはそのころどうしているか、というと。

 

戦ってました。
『あさが来た』の炭坑編みがあるな。。


見”守”る”長”太”郎”お”じ”さ”ん”か”わ”い”い”!”!”


業者の接待中。
おいど大好きおじさんがほいほいとお尻をさわさわ。


「何さわってんだよ」と思わず声をあげてしまったゆりですが、おじさん(石鍋さん)は怒って帰ってしまいます。

そんなゆりにトク子ばあちゃんが「お客様に恥をかかせてはならない」と。
おやおやブラック企業か?


「毒みたいなやつはぎょうさんおるねん。泥水すすらんならん事もある。水に流さんならん事もあるのや。けど泥水は自分次第で湧き水に変えることも出来んのや」

セクハラ容認のブラック企業というわけではありませんでした。
世の中納得いかないこともある。
商売となればなおさらだ、と優しくも厳しい言葉をかけるおばあちゃん。


場”を”和”ま”す”長”太”郎”お”じ”さ”ん”か”わ”い”い”!”!”

近江の面々が全面的に出てきたのは2週3週だったのですが、ここにきて意外な展開。

 

おばあちゃんが優しいのかと思っていたら、意外に厳しい。
「出ていけ」と言っていた長太郎おじさんが、意外に温かく見守ってる。


この2人の人物描写からしても、「戦争は終わった」んでしょうね。


トク子ばあちゃんはともかくとして。
まさか長太郎おじさんがこんな萌キャラになるとは。



●心の闇に


そう簡単に仕事が見つからない紀夫。
一杯かっ食らって帰ろう、と居酒屋に立ち寄ると、昭一と勝二が声をかけてきました(仲良しだな!)


「僕はつくづく浦島太郎ですよ」

2人とも戦地から帰った人間のはずなのに、なぜ嫁たちのしている商売が理解できるの?と尋ねると。


「変わらなあかんと思うからです。女房たちが未来を見て動き出しとる姿を見て、変わらなあかんと思うたからです」

『この国は変わった』と言っていた紀夫に対して、『自分たちが変わらなあかん』と言う昭一。
ここが、どれだけ現実を受け入れてるかどうかの境目なのでしょうね。





しかし紀夫、昭一の言葉を受け入れることはできず。
今度は『すみれを変えよう』とします。


「すみれ。もういっぺん言う、他人を信じるな」

「そんな寂しいこと言わないで」とすみれは反論するのですが、紀夫、一切聞く耳を持たず。

「寂しい?何を言うてんのや。人というのは状況一つでコロリと変わるもんや。昨日まで隣で笑ってた人が、今日は冷たい顔を見せたりする。そういうもんや。疑う事を知らんお前たちは誰にとってもえぇカモや。」

さすがにこれは今までの紀夫とは違う紀夫。
そんな人ではなかった、とすみれ。

「収容所であんな思いをして変わらん人間がいてたら知りたいぐらいや」

寒冷地では洋服の布一枚が命と同じくらい大事だったこと。
入浴中に服を盗難されると、凍死を免れないこと。
だから、風呂に入るために仲間が必要だったこと。

でもその仲間に裏切られることもあること。
服を盗まれて死んでいった者もたくさんいたこと。
その死んだ者から服をはぎ取る者もいたこと。

「自分の命が助かるためには他人なんかどうでもええ。そういうもんやで、人間なんて」


完全に別人。
あれだ、戦争PTSDだ。

戦争のPTSD、特に朝ドラにおけるそれは過去に何回か描かれました。
『ごちそうさん』の源ちゃん、『マッサン』の悟。
命は無事で助かったけれども、そのまま生きていくには心が傷つき過ぎている。
特に『べっぴんさん』では、他の登場人物がもう前を向いている、乗り越えようとしている状態なので、紀夫の精神状態のひどさが際立ちます。


帰ってきたら、旦那はまるで別人だった。

それはすみれを強く不安にさせました。



●悲しみを乗り越えて



キアリス新装開店の日。

 

明美ちゃん、花売りの女の子からお花を購入。
紀夫の言葉をいったん忘れ、笑顔を取り戻すすみれ。
この緩急がいいですね。


で、お店はいきなりの大盛況。
麗子さんも来店し、賑わいます。
潔や栄輔も応援に駆けつけました。



良子ちゃんが接客苦手を克服していたのよかったなあ。
みんなみんな、少しずつ乗り越えて変わっていく。



時子ちゃんもそう。
旦那さんとの悲しい別れを乗り越えていく。



●えぐい菅野ナレ


紀夫の中の心の闇を象徴するのが、紀夫が闇市を歩いているときの描写。


「職を探し歩いている紀夫くんです。ですが、そう上手くはいかず……」


「あてにしていた仕事を断られた紀夫くんです」


菅野ナレの棘がハンパねえ。



 

このシーン、戦後描写としてギリギリまできてる気がします。
「敗残兵が」と、傷痍軍人に罵声を浴びせる男。
侮蔑の言葉を投げる米国兵士。

けれど紀夫が通り過ぎた後、傷痍軍人にお札を渡す別の男。
憎しみも多いけれど、それだけじゃない。


時代が変わった。
みんな変わっていく。
なのに自分が変わることができない。
変わらなきゃいけないことはわかっている。
でも──




●ダイナミックおかえり


動き出した未来ですが、紀夫のメンタルは膠着状態にありました。
紀夫の中で葛藤があったのでしょう。
すみれの姿を見ようとキアリスにやって来ます。

そのころ、無事に閉店時間を迎えていました。
片づけをしている最中、さくらも栄輔にかまってもらえて大喜び。
よりにもよってそのタイミングで紀夫がやってきた。


ああああああ……。
紀夫、誰にも声をかけずに帰ったああああ……。

居場所が、ない。



部屋真っ暗じゃねえか。

さくら、すみれ、喜代さん、それからさくらをおぶってきた栄輔が帰宅。
それを暗闇で聞いていた紀夫。
「◎×※▼&+@」と栄輔につかみかかり……



すみれが呆然としている様子で我に返り……
(子どもの前ではやめておこうって)



●狂犬のロックンロール潔


あっからさまにコミュ障(元から&戦争体験によって)の紀夫に対して、コミュニケーション上手なのが潔。
五十八を訪ねてきたかつての坂東営業部の社員らと、あれよあれよと一か月。

大阪に坂東営業部の事務所を立ち上げ、ブランド『オライオン』(モデルはレナウン)を復活させます。



『これからの時代は婦人服、近江の麻でサマードレスを作ろう』

時子ちゃんの言葉を近くで聞いていた潔の提案でした。
早速近江のゆりや本家へ話をしに行く潔。



デザインと試作品を見せると、静子さんが大喜び。
(あと長太郎おじさん超かわいい)

さあサマードレス作りに動き出そうと潔&ゆり。
さしあたってまずはあの怒らせてしまったセクハラ親父石鍋さんと会うことに。

「今日は、私の主人からお話があります。主人はほんまに情に厚くて、こうと思ったことには、どんな障害があってもやりとげる人なんです。まぁ、長所は短所と申しますので裏を返せば・・・」
と何やら意味深な話をし始めるゆり。
「敵にまわしたら怖いな」とけしかけるトク子ばあちゃんおいおい。


「そないなこと。ただ…あだ名は確か“狂犬の潔”やったかしら」

ゆり、おまえは何を言っているんだ。
一瞬戸惑う潔でしたがゆりにけしかけられて……


「GO!」


「GO!」


「ウチの会社は、今度は婦人服で復活させようと思うてます。思うてますねん!!」

潔www
なにそのロックな作画www



石鍋さん、怯えきってるwww

いやあ、狂犬の潔もくっそ笑ったが、ゆりの「GO!」もおかしかったし。
勝利のテーマかかりながらのトク子ばあちゃんの表情もなかなかwww


笑い堪えきれなかった 長"太"郎"お"じ"さ"ん"か"わ"い"い"!"!"!"!"

「泥水も私次第で湧き水に変わる。変わらなねぇ、私も」
と明るい表情を見せるゆり。

「泥水すすらにゃならん」でお触りを耐える方向に行くと思いきや。
「うちの旦那はやり手の狂犬商社マンなんで、女だからってなめてるおいどホイホイしてると痛い目に遭いますよ?」って泥水ピンチを湧き水チャンスに変えたゆりお見事。
耐えるよりそっちのほうが好きだな。


とはいえ、蓮佛美沙子・高良健吾・中村玉緒・本田博太郎の顔芸でくるとは思いもしなかった。

これも6週で、五十八の背中を見ていたゆりらしい行動だなあと。

闇市を変えていくのに根本の親分を立てて、味方にひきこんだ五十八。
父にならっておそらくまずはトク子ばあちゃんを味方にしたのでしょう。
それから懸念の石鍋さんをこちら側に取り入れる。
気が付けば長太郎おじさんはこちら側。

五十八のようにかっこいい演説というわけにはいきませんが、ゆりのやりかたもカッコいい。




●かわいいオッサンはいいぞ


可愛いと言えば麻田さん。
ベビーショップあさやは店じまい、キアリスが隣の隣の店舗へ移転の日。


「あぁ、寂しくなりますなぁ」


「いよいよですな!」


麻田さん5人目!キアリスの5人目!!

長太郎おじさんも萌え枠追加となり、さらに久々のアレが帰ってきました。



忠さんの転げ芸。
戦中・戦後に封印されていた転び芸が復活したということは、生活が少しずつ上向きになっている証拠。
これは嬉しいですね。











後半はこちら。

『べっぴんさん』8週、その2 さよならを選んだ君はおそらく正しい

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