『あまちゃん』21週、「おらたちの大逆転」の感想まとめ。
今週のトレンド入り「小野寺ちゃん」「ミズタク」「ミズハグ」「生まれたての鹿」「前髪クネ男」
あとまだあったような気がする。
再放送ですよ。BSの朝7時台の再放送ですよ。
「前髪クネ男」はまだ予告ですよ。
関連リンク
・『あまちゃん』20週、勉さんと甲斐さん、2人の証人によって深まる物語。
・『あまちゃん』18週、太いものには巻かれない天野春子。
・『あまちゃん』17週、アキの知った真実と現実とウニとこれから。
以前のもの、本放送当時の記事はこちら。
・朝ドラ感想記事のまとめ。
■『大逆転』
「お母さん倒れた」ではじまった物語。
紆余曲折を経ながら、それぞれがレールに乗ったり外れたり、トンネル入ったり出たりしてきた物語。
それが『大逆転』を迎えていく。
普段はあまり気にしない週タイトル、改めて「うまいなあ」って思う。
■「うるさいよ!」ではじまり、「うるさいよ!」で終わる。
東京ではなんやかんやありつつ…
北三陸では「うるさいよ」ではじまり、また「うるさいよ」で終わる。
こういうののいいなって。
区切り目がわかりやすい。
行ったり来たりしながらも、こういう小技が聞いているから見ていてもついていける。
■「いつでも夢を」
演出の梶原さんを震えさせた弥生さんの歌声。
ぽつりぽつりと春子さん。
表情の緊張が解けていくのが、母娘のわだかまりが解けていくようにみえる。
「あたしが知ろうとしなかったんだね。自分のことばっかでさ。夏さんの母親じゃない部分、見ないで来ちゃったんだね。」
「大っ嫌いだったのよ、あの歌。『いつでも夢を』。でも今聞いたら多分違うんだろうなぁ」
「いつでも夢を」は春子さんにとってあのとき飛び出した故郷のダサさを象徴していたもの。
夏ばっぱにとっては憧れの人との思い出の歌。
でも今は夏さんの無事を祈り、励ます歌。
おなじ言葉でも曲でも、聴き手が違えば意味は違う。
それはとても当たり前のことなのだけれど、そういう当たり前のことをきちんと描いてる『作品』って今は少ないなって思う。
間に挟まるユイちゃんのカット。
ユイちゃんもまた、母親じゃないよしえさんから目を反らしてきた。
橋幸夫と夏ばっぱのエピソードもだけれど、よしえさんのエピソードも丁寧に描かれたからこそ、ユイちゃんに感情移入する。
もう本当に『連続テレビ小説』なんだよなあ。
■春子さんの親孝行
春子さんが北三陸に残る理由。
それは自分のため。
「ありがとう」を手にするため。
もう一度、夏さんにこの風景を見せたげたい。
母が見てきたものを自分に見たい。
それは、多分、普通の母娘。
■「親孝行できなくてごめんなさい」
NG40回を出した女優・天野アキと、友達感覚で接していた大女優・鈴鹿ひろ美。
ふたりを結びつけていたのは『潮騒のメモリー』。
それをより強固にしたのは天野夏という人物。
潮騒のメモリーは夏ばっぱの歌なんだ、と改めてハッとする。
北三陸にいる春子さんの 「あたし夏さんのこと知らなすぎて泣けないわ」からの、
東京にいるアキの「母ちゃん、親孝行できなくて、ごめんなさい」への、見事なクロス。
多分この瞬間、アキには春子さんが、鈴鹿さんには夏ばっぱが憑依してるのかなって。
パズルのピースがハマるべき場所にがぴたっとハマった瞬間。
■これからに備えての保険
本放送のこの時期にはさ、「これ、3.11いくのか。辛いな」と思っていてた。
やっぱりその週は辛かった。
多分これからくる再放送でのあの週も、また辛くて目をそむけたくなるかもしれない。
でも『いつでも夢を』と『大逆転』があったから、私たちも『その火を乗り越え』ることができた。
トンネルを抜けた最後に気持ちのいい涙を流すことができた。
過去と現在、東京と北三陸をクロスさせつつ、伏線を回収しつつ、新たに伏線を敷きつつ、さらに終盤に向けての『保険』をかける。
15分の中にこれだけのストーリーがあるのは改めてすごいと思うんだ。
脚本力や制作力は勿論だけど、役者さんの行間の演技がなきゃできないと思うの。
■ユイちゃんが結ぶ北三陸と東京
夏ばっぱの無事が、北三陸から東京へ、ユイちゃんからアキへ伝えられる。
この回で改めて際立つユイちゃんの美少女っぷりが、終盤のユイちゃん再生につながる。
北三陸と東京を「結ぶ」のはユイちゃんなんだなあ。
そんなユイちゃんも、ユイちゃんを取り戻した。
なんだかんだで嬉しそうなユイちゃんを見て、視聴してる側も嬉しい。
足立家の再生に一安心。
……ユイちゃんがユイちゃんらしさを取り戻したからこそ、このあとのことが余計に辛いんだよな。
■GMTふたたび
GMTのGはゲスガールズトークのG。
アーキーと喜屋武ちゃんは仲良し。
ここで喜屋武ちゃんだけ遅れて登場するから、ふたりの関係を思い出すんだよね。
そっかあ、喜屋武ちゃんは夏ばっぱに会ってるんだもんなあ。
GMTの寮が変わったことを自慢する面々。
懐かしいだの悔しいだの言いつつ、本気の嫉妬をしてないのがいいなって思う。
アキにとってもミズタクにとっても、大変だったけど幸せな時間だったんだろうな。
あの頃があるから今がある。みんな。
そういうのをきちんと描いてきた話なんだ、と何てことのないシーンで思い出す。
そして再びつながった太巻の話。
それを大将とGMTのやりとりでみせるからうまい。
■ミズタクより正宗さんが鬼の形相してる件
ちょっと見づらいんだけど、左側中段、正宗さんが鬼の形相をしている。
で、このあと正宗さんがキレるかって言われたらそうでもない。
きっとミズタクに正宗さんの生霊が憑依したんだな。
(若正宗の生霊もアリだと思う)
■ミズタク文法その3、アクセント崩壊
(『一般男性』のアクセントが大逆転しはじめた瞬間)
「いっぱ~んだ~んせ~い」
「るぱ~んさ~んせ~い」
壁ドン王子に壁ドン。
赤提灯と、斜め上から松田さんの表情や動きを狙った構図がいい味出してる。
このシーン、ステラによると
ピエール瀧さん(大将)が「ちゃんとモノマネしちゃったほうがいいよ」ってアドバイスしたら、尾美さん(正宗さん)とピエールさんが「るぱ~んさ~んせ~い」を教え始めたと。
ガチで大将と正宗さんの生霊がミズタクに憑依したんじゃねえの。
■大吉の『大逆転』
大逆転一発目はこの方でした。
ここ本放送で見覚えがなくて、ステラ読んで「なんで?」って思ったけどこんな展開だったのね。
おかしくって笑えるんだけれども、吉田も真剣だし大吉も真剣、マサも真剣。
みんな過去の自分から抜け出して、大逆転。
ところで大吉さん。
こんな風に言ってくれる田舎、少なくなったね。
東京での女社長がハマってた春子さん。
女性が地元を離れて仕事と家庭を両立するには地域の力が必要。
■緊迫のオーディション2次審査
訛っている理由を詰問され、しどろもどろになるアキ。
そこにおいうちをかける「いじめられていたの?」の質問。
さらに太巻は畳みかける。
「標準語でお願いします」
標準語とは東京方言。
北三陸にとっての標準語は久慈方言。
アキにとって東京方言が出るときは、猫背で磨りガラス越しに弱音を吐くとき。
このときのアキは辛かったんだろうな、表情が硬くなってる。
けれどすぐに標準語になろうとする。
もうプロだね、アキ。
アキの表情だけで、彼女が故郷でどれだけ充実した日々を過ごしたかが伝わってくる。
ドラマとしては嬉しい。
でもメタ的に先を思うと悲しい。
でもでも最後から振り返ってくると、やっぱり嬉しい。
このドラマで「横軸を結ぶ人」がユイちゃんだとしたら、「縦軸を結ぶ人」が太巻なのかもしれない。
その軸を「しっかり貼り付ける人」は夏ばっぱか。
それを包み込む『潮騒のメモリー』。
また別の視点からみると違ってくるし、これまた複雑なんだけど、そういうのが楽しい。
そして最終選考に進むのは……
太巻に残っていた「謝りたい気持ち」が錯覚をさせたのか、それとも本当に生霊なのか。
どちらともとれるけれど、古田さんの表情が少しずつ変わっていく。
アキと出会い、アキに感化された鈴鹿さんと過ごし、少しずつ変わっていく。
若春子の生霊?に混乱する太巻。
鈴鹿さんの表情が意味深。
机に手をついて、下を向いて、太巻が思うのはあの日のこと。
■大事じゃない時期なんてない。
ミズタクのさぶいギャグでくぎを刺された後のわりに、アキにぐいぐい迫ろうとする種市。
そんな種市に対してアキ。
「生きてる限り大事じゃねえ時期なんてねえし」
アキ自身も困難を乗り越えて、ユイちゃんが乗り越えるのを遠くから見ていたからこそ言える言葉かな。
でももう少しあとのほうが、 重みが増すかな。
あっ、タクシー来てるって。
■盛りの付いた猫背の雌猿と雄猿は
緊迫のオーディション後…。
標準語ではないアキ。
自分に素直になってるアキ。
「パパもママも家にいない」回。
それだけあのオーディションに緊張したんだろうねえ。
そしてアキの自宅にふたりきり。
それにしても、あまちゃんで描かれる男女のアレコレって、明示的なのは種市くらいじゃないの。
まあそれもサラッと終わるし、二人の仲はもっと別の意味を持つ。
(少女漫画は別にいいとしても、せめて朝ドラはそれくらいの厚みをもってほしいんだよなあ)
種市先輩の卵焼きはテストに出ます。
さらっと布石を置いてくクドカン脚本。
ともかくそんなこんなで、いい感じなアキと種市。
でも……
若春子が見ている。
アキの罪悪感が錯覚をさせたのか、それとも本当に生霊なのか。
どちらにしてもアキを見つめる視線。
アキを問い質しているのか、在りし日の鈴鹿さんと太巻を見ているのか。
太巻の前に現れた若春子もそうだったけれど。
春子は、いないけどいるんだよね。
まあ現実もそんなに甘くもなく、そっこーでバレる。
リアル春子さんもそんなに甘くはない。
■突入、そして…
立て篭り犯じゃあるめえしwww
で、ミズタクさんよ、その右手の動画待機は(おいこらやめろ
「アイドルに恋愛が許されない」というよりアイドルは自分のアイデンティティーと、アイドルのアイデンティティーを同時に保たなきゃいけないんだなあ。
ここで改めてマメリンやあゆみさんが芸能界を去った理由が迫ってくる。
■ミズタク文法その4、罵倒型
的外れな弁護をする種市に対して。
【ミズタク強調文法】
①倒置型
「なぜ出ない電話に君は」
②二重否定型
「中止にしなくてよくないですか」
③抑揚型
「いぱ〜んだ〜んせ〜い」
④罵倒型
「うるせえし、論点ずれてる」←NEW!!
■アイドルとは
正宗さんにとって春子さんがアイドル。
アキにとって種市がアイドル。
勉さんにとって夏さんがアイドル。
何週もかけて丁寧に描かれてきたこと。
「誰かを好き」っていうより「応援している」の意味合いなんだろうな。
北三陸のみんなにとっては、アキとユイがアイドル。
■涙の最終選考
鈴鹿さんの女優魂。
不思議なんだけど夏ばっぱに見えてくる。
きっと手拭いに夏さんの生霊が憑依してたんだな。
だからほら、若夏ばっぱ(徳永えり)も生霊化をさせるのはどうかなと。
商売人になりきれない太巻は、25年前に春子さんと一緒にいた頃の太巻か。
本放送のときは贖罪のためとも見えていたシーン。
でも再放送のときは「大人の事情なんていいからクリエイターとしていいものを作りたい」という想いも垣間見える。
■河島さんと夏ばっぱの「帰っていい」
ふたつの 「帰っていい」の後ろに流れる『地元に帰ろう』。
震災後だし地元愛の歌かな、と最初は思っていた。
でも今は、もしかしたら、河島さんも夏ばっぱも「やるべきことがある、まだチャンスはある」って歌なのかもしれないって。
小野寺ちゃん、数秒のカットながら演技が細やかで、その繊細さに思わず涙。
ちょっと嬉しい、でもちょっと悔しい。
そんなとっても微妙な気持ちを、見事に表現しきったから、優希ちゃんは『マッサン』でエマ役をとれたのかもしれないなあ。
今後が楽しみな女優さんの1人です。
■アキの『大逆転』
鈴鹿さんと太巻の表情が清々しい。
もう鈴鹿さんは鈴鹿さんだし、アキもアキ。
太巻がアキに若春子を重ねる幻覚をみることもないだろう。
でも太巻に残されたミッションはまだある。
頑張れ太巻(再放送ではなぜか太巻を応援したくなる)
■ミズタクの『大逆転』
続き、ミズタクの『大逆転』。
幸福感に浸れるのは、北三陸から奈落、そこから這い上がるまでミズタクと同じ景色を観てきたからだろうなあ。
「原石、やっと輝きました。一生懸命磨いたかいありました」
ミズタクと勉さん。
磨く人のすすり泣きがしみる。
ふたりは『原石』を通して、つながってたんだな。
このシーンをユイちゃんではじめてユイちゃんで結んでるのがいい。
ユイちゃんも原石のひとつ。
自分から輝くタイプの原石なのかな。
■春子さんの『大逆転』…はまた今度。
映画 「潮騒のメモリー」は解決したけれど、主題歌「潮騒のメモリー」はまだ解決していない。
太巻は春子さんに謝れていない。
その多面性を春子さんの喜ぶセリフで語るから、うまくできてるなって思う。
■ヒロシの『大逆転』
つい昨日「僕にとって春子さんはアイドルだった」と正宗さんが語っていた言葉とシンクロする。
ヒロシの思いは報われなかったけれど。
アキとヒロシ、アイドルとファン第1号。
いやマジで落ち着いて考えたらヒロシの功績、超でかいって。
アップをトップして、動画をトップして、看板作って、海女カフェ作って、足立先生の介護して、ああもうヒロシ!!
■こじれた母娘の『大逆転』
「ありがとう」
「居たいだけ居ればいい」
春子さんと夏ばっぱが『大逆転』して、普通の母娘になったとき。
今週多くの『大逆転』が描かれながら、その『再生』の意味合いが一番色濃く現れてるシーンだと思った。
■夏ばっぱの『大逆転』
夏ばっぱの海への思い。
そうだ、はじまりはここだったと思い出す。
夏ばっぱは、海の中で忠兵衛さんとつながってられるんだよなあ。
「潮騒のメモリー」が脳裏をよぎる。
それから、『来年の本気獲り』も。
■ユイちゃんの『大逆転』その1。
ユイちゃんも『大逆転』のガッツポーズ!
°**( ‘ jjj’ )/**°
あああ、でもユイちゃんはこれからを思うと辛い部分もイナメナイよね。
ユイちゃんはウニを4個獲り、アキは番組を20本撮り。
どっちも本気で怒涛。
いいな、この日本語の噛み合い方。
しかし「金魚鉢」を壊して『大逆転』させるとは、壊れたジオラマとラスト1ヶ月の展開が想起される。
■古田さんの無茶振り
隠れた名シーン。
古田さんの無茶振りアドリブと笑いを堪えきれない薬師丸さんと能年ちゃん(横の監督も?)。
としちゃん登場シーンといい勉さんパンチといい、こういうシーンをそのまま使って違和感ないってのはスゴイ。
『あまちゃん』がいまだに話題にあがるのも、BS再放送でトレンド入りしちゃうのも、多分こういうリアリティがあったからなんだと思う。
■鈴鹿さんの『大逆転』も、また今度。
「一回全部忘れよう」
「ゼロからはじめよう」
鈴鹿さんが語る 『大逆転』。
ラストカット、暗闇から光に向かって歩き出すふたりが象徴的。
鈴鹿さんの『大逆転』は最後の最後か。
■現実での『大逆転』
『大逆転』で思い出すのは、個人的には2012年のプロ野球日本シリーズ。
マー君の登板に「がんばれ楽天、大逆転だ」って泣きながら応援した。
物語がここまで進んだってことは、「その日」が近づいてるってことなんだよね。
ドラマではその日は乗り越えられたけれど、現実ではまだその日は乗り越えられていない。
ミサンガは切れてない。
お盆休みに三陸行ってきたせいか、そんなことを思う。
ドラマみたく、野球みたく、現実も大逆転できたらいいのに、でもそれは出来ない。
出来ないから、最後のミサンガはまだ切れない。
来週はクネ男か。
今週のトレンド入り「小野寺ちゃん」「ミズタク」「ミズハグ」「生まれたての鹿」「前髪クネ男」
あとまだあったような気がする。
再放送ですよ。BSの朝7時台の再放送ですよ。
「前髪クネ男」はまだ予告ですよ。
関連リンク
・『あまちゃん』20週、勉さんと甲斐さん、2人の証人によって深まる物語。
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・『あまちゃん』17週、アキの知った真実と現実とウニとこれから。
以前のもの、本放送当時の記事はこちら。
・朝ドラ感想記事のまとめ。
■『大逆転』
「お母さん倒れた」ではじまった物語。
紆余曲折を経ながら、それぞれがレールに乗ったり外れたり、トンネル入ったり出たりしてきた物語。
それが『大逆転』を迎えていく。
普段はあまり気にしない週タイトル、改めて「うまいなあ」って思う。
■「うるさいよ!」ではじまり、「うるさいよ!」で終わる。
東京ではなんやかんやありつつ…
北三陸では「うるさいよ」ではじまり、また「うるさいよ」で終わる。
こういうののいいなって。
区切り目がわかりやすい。
行ったり来たりしながらも、こういう小技が聞いているから見ていてもついていける。
■「いつでも夢を」
演出の梶原さんを震えさせた弥生さんの歌声。
ぽつりぽつりと春子さん。
表情の緊張が解けていくのが、母娘のわだかまりが解けていくようにみえる。
「あたしが知ろうとしなかったんだね。自分のことばっかでさ。夏さんの母親じゃない部分、見ないで来ちゃったんだね。」
「大っ嫌いだったのよ、あの歌。『いつでも夢を』。でも今聞いたら多分違うんだろうなぁ」
「いつでも夢を」は春子さんにとってあのとき飛び出した故郷のダサさを象徴していたもの。
夏ばっぱにとっては憧れの人との思い出の歌。
でも今は夏さんの無事を祈り、励ます歌。
おなじ言葉でも曲でも、聴き手が違えば意味は違う。
それはとても当たり前のことなのだけれど、そういう当たり前のことをきちんと描いてる『作品』って今は少ないなって思う。
間に挟まるユイちゃんのカット。
ユイちゃんもまた、母親じゃないよしえさんから目を反らしてきた。
橋幸夫と夏ばっぱのエピソードもだけれど、よしえさんのエピソードも丁寧に描かれたからこそ、ユイちゃんに感情移入する。
もう本当に『連続テレビ小説』なんだよなあ。
■春子さんの親孝行
春子さんが北三陸に残る理由。
それは自分のため。
「ありがとう」を手にするため。
もう一度、夏さんにこの風景を見せたげたい。
母が見てきたものを自分に見たい。
それは、多分、普通の母娘。
■「親孝行できなくてごめんなさい」
NG40回を出した女優・天野アキと、友達感覚で接していた大女優・鈴鹿ひろ美。
ふたりを結びつけていたのは『潮騒のメモリー』。
それをより強固にしたのは天野夏という人物。
潮騒のメモリーは夏ばっぱの歌なんだ、と改めてハッとする。
北三陸にいる春子さんの 「あたし夏さんのこと知らなすぎて泣けないわ」からの、
東京にいるアキの「母ちゃん、親孝行できなくて、ごめんなさい」への、見事なクロス。
多分この瞬間、アキには春子さんが、鈴鹿さんには夏ばっぱが憑依してるのかなって。
パズルのピースがハマるべき場所にがぴたっとハマった瞬間。
■これからに備えての保険
本放送のこの時期にはさ、「これ、3.11いくのか。辛いな」と思っていてた。
やっぱりその週は辛かった。
多分これからくる再放送でのあの週も、また辛くて目をそむけたくなるかもしれない。
でも『いつでも夢を』と『大逆転』があったから、私たちも『その火を乗り越え』ることができた。
トンネルを抜けた最後に気持ちのいい涙を流すことができた。
過去と現在、東京と北三陸をクロスさせつつ、伏線を回収しつつ、新たに伏線を敷きつつ、さらに終盤に向けての『保険』をかける。
15分の中にこれだけのストーリーがあるのは改めてすごいと思うんだ。
脚本力や制作力は勿論だけど、役者さんの行間の演技がなきゃできないと思うの。
■ユイちゃんが結ぶ北三陸と東京
夏ばっぱの無事が、北三陸から東京へ、ユイちゃんからアキへ伝えられる。
この回で改めて際立つユイちゃんの美少女っぷりが、終盤のユイちゃん再生につながる。
北三陸と東京を「結ぶ」のはユイちゃんなんだなあ。
そんなユイちゃんも、ユイちゃんを取り戻した。
なんだかんだで嬉しそうなユイちゃんを見て、視聴してる側も嬉しい。
足立家の再生に一安心。
……ユイちゃんがユイちゃんらしさを取り戻したからこそ、このあとのことが余計に辛いんだよな。
■GMTふたたび
GMTのGはゲスガールズトークのG。
アーキーと喜屋武ちゃんは仲良し。
ここで喜屋武ちゃんだけ遅れて登場するから、ふたりの関係を思い出すんだよね。
そっかあ、喜屋武ちゃんは夏ばっぱに会ってるんだもんなあ。
GMTの寮が変わったことを自慢する面々。
懐かしいだの悔しいだの言いつつ、本気の嫉妬をしてないのがいいなって思う。
アキにとってもミズタクにとっても、大変だったけど幸せな時間だったんだろうな。
あの頃があるから今がある。みんな。
そういうのをきちんと描いてきた話なんだ、と何てことのないシーンで思い出す。
そして再びつながった太巻の話。
それを大将とGMTのやりとりでみせるからうまい。
■ミズタクより正宗さんが鬼の形相してる件
ちょっと見づらいんだけど、左側中段、正宗さんが鬼の形相をしている。
で、このあと正宗さんがキレるかって言われたらそうでもない。
きっとミズタクに正宗さんの生霊が憑依したんだな。
(若正宗の生霊もアリだと思う)
■ミズタク文法その3、アクセント崩壊
(『一般男性』のアクセントが大逆転しはじめた瞬間)
「いっぱ~んだ~んせ~い」
「るぱ~んさ~んせ~い」
壁ドン王子に壁ドン。
赤提灯と、斜め上から松田さんの表情や動きを狙った構図がいい味出してる。
このシーン、ステラによると
ピエール瀧さん(大将)が「ちゃんとモノマネしちゃったほうがいいよ」ってアドバイスしたら、尾美さん(正宗さん)とピエールさんが「るぱ~んさ~んせ~い」を教え始めたと。
ガチで大将と正宗さんの生霊がミズタクに憑依したんじゃねえの。
■大吉の『大逆転』
大逆転一発目はこの方でした。
ここ本放送で見覚えがなくて、ステラ読んで「なんで?」って思ったけどこんな展開だったのね。
おかしくって笑えるんだけれども、吉田も真剣だし大吉も真剣、マサも真剣。
みんな過去の自分から抜け出して、大逆転。
ところで大吉さん。
こんな風に言ってくれる田舎、少なくなったね。
東京での女社長がハマってた春子さん。
女性が地元を離れて仕事と家庭を両立するには地域の力が必要。
■緊迫のオーディション2次審査
訛っている理由を詰問され、しどろもどろになるアキ。
そこにおいうちをかける「いじめられていたの?」の質問。
さらに太巻は畳みかける。
「標準語でお願いします」
標準語とは東京方言。
北三陸にとっての標準語は久慈方言。
アキにとって東京方言が出るときは、猫背で磨りガラス越しに弱音を吐くとき。
このときのアキは辛かったんだろうな、表情が硬くなってる。
けれどすぐに標準語になろうとする。
もうプロだね、アキ。
アキの表情だけで、彼女が故郷でどれだけ充実した日々を過ごしたかが伝わってくる。
ドラマとしては嬉しい。
でもメタ的に先を思うと悲しい。
でもでも最後から振り返ってくると、やっぱり嬉しい。
このドラマで「横軸を結ぶ人」がユイちゃんだとしたら、「縦軸を結ぶ人」が太巻なのかもしれない。
その軸を「しっかり貼り付ける人」は夏ばっぱか。
それを包み込む『潮騒のメモリー』。
また別の視点からみると違ってくるし、これまた複雑なんだけど、そういうのが楽しい。
そして最終選考に進むのは……
太巻に残っていた「謝りたい気持ち」が錯覚をさせたのか、それとも本当に生霊なのか。
どちらともとれるけれど、古田さんの表情が少しずつ変わっていく。
アキと出会い、アキに感化された鈴鹿さんと過ごし、少しずつ変わっていく。
若春子の生霊?に混乱する太巻。
鈴鹿さんの表情が意味深。
机に手をついて、下を向いて、太巻が思うのはあの日のこと。
■大事じゃない時期なんてない。
ミズタクのさぶいギャグでくぎを刺された後のわりに、アキにぐいぐい迫ろうとする種市。
そんな種市に対してアキ。
「生きてる限り大事じゃねえ時期なんてねえし」
アキ自身も困難を乗り越えて、ユイちゃんが乗り越えるのを遠くから見ていたからこそ言える言葉かな。
でももう少しあとのほうが、 重みが増すかな。
あっ、タクシー来てるって。
■盛りの付いた猫背の雌猿と雄猿は
緊迫のオーディション後…。
標準語ではないアキ。
自分に素直になってるアキ。
「パパもママも家にいない」回。
それだけあのオーディションに緊張したんだろうねえ。
そしてアキの自宅にふたりきり。
それにしても、あまちゃんで描かれる男女のアレコレって、明示的なのは種市くらいじゃないの。
まあそれもサラッと終わるし、二人の仲はもっと別の意味を持つ。
(少女漫画は別にいいとしても、せめて朝ドラはそれくらいの厚みをもってほしいんだよなあ)
種市先輩の卵焼きはテストに出ます。
さらっと布石を置いてくクドカン脚本。
ともかくそんなこんなで、いい感じなアキと種市。
でも……
若春子が見ている。
アキの罪悪感が錯覚をさせたのか、それとも本当に生霊なのか。
どちらにしてもアキを見つめる視線。
アキを問い質しているのか、在りし日の鈴鹿さんと太巻を見ているのか。
太巻の前に現れた若春子もそうだったけれど。
春子は、いないけどいるんだよね。
まあ現実もそんなに甘くもなく、そっこーでバレる。
リアル春子さんもそんなに甘くはない。
■突入、そして…
立て篭り犯じゃあるめえしwww
で、ミズタクさんよ、その右手の動画待機は(おいこらやめろ
「アイドルに恋愛が許されない」というよりアイドルは自分のアイデンティティーと、アイドルのアイデンティティーを同時に保たなきゃいけないんだなあ。
ここで改めてマメリンやあゆみさんが芸能界を去った理由が迫ってくる。
■ミズタク文法その4、罵倒型
的外れな弁護をする種市に対して。
【ミズタク強調文法】
①倒置型
「なぜ出ない電話に君は」
②二重否定型
「中止にしなくてよくないですか」
③抑揚型
「いぱ〜んだ〜んせ〜い」
④罵倒型
「うるせえし、論点ずれてる」←NEW!!
■アイドルとは
正宗さんにとって春子さんがアイドル。
アキにとって種市がアイドル。
勉さんにとって夏さんがアイドル。
何週もかけて丁寧に描かれてきたこと。
「誰かを好き」っていうより「応援している」の意味合いなんだろうな。
北三陸のみんなにとっては、アキとユイがアイドル。
■涙の最終選考
鈴鹿さんの女優魂。
不思議なんだけど夏ばっぱに見えてくる。
きっと手拭いに夏さんの生霊が憑依してたんだな。
だからほら、若夏ばっぱ(徳永えり)も生霊化をさせるのはどうかなと。
商売人になりきれない太巻は、25年前に春子さんと一緒にいた頃の太巻か。
本放送のときは贖罪のためとも見えていたシーン。
でも再放送のときは「大人の事情なんていいからクリエイターとしていいものを作りたい」という想いも垣間見える。
■河島さんと夏ばっぱの「帰っていい」
ふたつの 「帰っていい」の後ろに流れる『地元に帰ろう』。
震災後だし地元愛の歌かな、と最初は思っていた。
でも今は、もしかしたら、河島さんも夏ばっぱも「やるべきことがある、まだチャンスはある」って歌なのかもしれないって。
小野寺ちゃん、数秒のカットながら演技が細やかで、その繊細さに思わず涙。
ちょっと嬉しい、でもちょっと悔しい。
そんなとっても微妙な気持ちを、見事に表現しきったから、優希ちゃんは『マッサン』でエマ役をとれたのかもしれないなあ。
今後が楽しみな女優さんの1人です。
■アキの『大逆転』
鈴鹿さんと太巻の表情が清々しい。
もう鈴鹿さんは鈴鹿さんだし、アキもアキ。
太巻がアキに若春子を重ねる幻覚をみることもないだろう。
でも太巻に残されたミッションはまだある。
頑張れ太巻(再放送ではなぜか太巻を応援したくなる)
■ミズタクの『大逆転』
続き、ミズタクの『大逆転』。
幸福感に浸れるのは、北三陸から奈落、そこから這い上がるまでミズタクと同じ景色を観てきたからだろうなあ。
「原石、やっと輝きました。一生懸命磨いたかいありました」
ミズタクと勉さん。
磨く人のすすり泣きがしみる。
ふたりは『原石』を通して、つながってたんだな。
このシーンをユイちゃんではじめてユイちゃんで結んでるのがいい。
ユイちゃんも原石のひとつ。
自分から輝くタイプの原石なのかな。
■春子さんの『大逆転』…はまた今度。
映画 「潮騒のメモリー」は解決したけれど、主題歌「潮騒のメモリー」はまだ解決していない。
太巻は春子さんに謝れていない。
その多面性を春子さんの喜ぶセリフで語るから、うまくできてるなって思う。
■ヒロシの『大逆転』
つい昨日「僕にとって春子さんはアイドルだった」と正宗さんが語っていた言葉とシンクロする。
ヒロシの思いは報われなかったけれど。
アキとヒロシ、アイドルとファン第1号。
いやマジで落ち着いて考えたらヒロシの功績、超でかいって。
アップをトップして、動画をトップして、看板作って、海女カフェ作って、足立先生の介護して、ああもうヒロシ!!
■こじれた母娘の『大逆転』
「ありがとう」
「居たいだけ居ればいい」
春子さんと夏ばっぱが『大逆転』して、普通の母娘になったとき。
今週多くの『大逆転』が描かれながら、その『再生』の意味合いが一番色濃く現れてるシーンだと思った。
■夏ばっぱの『大逆転』
夏ばっぱの海への思い。
そうだ、はじまりはここだったと思い出す。
夏ばっぱは、海の中で忠兵衛さんとつながってられるんだよなあ。
「潮騒のメモリー」が脳裏をよぎる。
それから、『来年の本気獲り』も。
■ユイちゃんの『大逆転』その1。
ユイちゃんも『大逆転』のガッツポーズ!
°**( ‘ jjj’ )/**°
あああ、でもユイちゃんはこれからを思うと辛い部分もイナメナイよね。
ユイちゃんはウニを4個獲り、アキは番組を20本撮り。
どっちも本気で怒涛。
いいな、この日本語の噛み合い方。
しかし「金魚鉢」を壊して『大逆転』させるとは、壊れたジオラマとラスト1ヶ月の展開が想起される。
■古田さんの無茶振り
隠れた名シーン。
古田さんの無茶振りアドリブと笑いを堪えきれない薬師丸さんと能年ちゃん(横の監督も?)。
としちゃん登場シーンといい勉さんパンチといい、こういうシーンをそのまま使って違和感ないってのはスゴイ。
『あまちゃん』がいまだに話題にあがるのも、BS再放送でトレンド入りしちゃうのも、多分こういうリアリティがあったからなんだと思う。
■鈴鹿さんの『大逆転』も、また今度。
「一回全部忘れよう」
「ゼロからはじめよう」
鈴鹿さんが語る 『大逆転』。
ラストカット、暗闇から光に向かって歩き出すふたりが象徴的。
鈴鹿さんの『大逆転』は最後の最後か。
■現実での『大逆転』
『大逆転』で思い出すのは、個人的には2012年のプロ野球日本シリーズ。
マー君の登板に「がんばれ楽天、大逆転だ」って泣きながら応援した。
物語がここまで進んだってことは、「その日」が近づいてるってことなんだよね。
ドラマではその日は乗り越えられたけれど、現実ではまだその日は乗り越えられていない。
ミサンガは切れてない。
お盆休みに三陸行ってきたせいか、そんなことを思う。
ドラマみたく、野球みたく、現実も大逆転できたらいいのに、でもそれは出来ない。
出来ないから、最後のミサンガはまだ切れない。
来週はクネ男か。
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