故 桑名 正博(くわな まさひろ)氏
ミュージシャンであり、俳優でもある、桑名氏について、今回は触れたい。
以前、高知支局長より 『所感雑感 1』で、お話したコンサートの翌年、
2度目のコンサートを開催する事となった。
この時の出演者が、1度目のコンサートにも出演してくださった【日野皓正氏】と
今回お話する【桑名正博氏】であり、
私はまたも、幸運な事に、コンサートを手伝う機会に恵まれたのだ。
『1度ならず2度までも・・・これはまた、素晴らしい経験が出来るのではないか!』
そんな期待に胸を躍らせ、私は朝から会場入りしたのを覚えている。
そして案の定、私の期待通り、またも貴重な経験をする事が出来た。
それは、桑名正博氏の出番が終わった直後の事だ。
びっしょりと、汗に塗れた桑名氏が、出番を終え、舞台裏に帰って来た。
上着を脱ぎ、上半身裸となりながら、彼は袖幕の向こうに見える会場が、
盛り上がる観客の熱気に包まれているのを見て
「俺も、もう少し若かったら、また舞台に飛び出して行くのだが・・・」と
えも言われぬ、無邪気な顔で呟いた。
そんな彼の姿に、即座に私は、友人と、
「桑名さん、大丈夫!まだまだ行けますよ!!」と、思わず彼の背中を押してしまった。
桑名氏は、照れくさそうな笑みを浮かべながら、
それでも、嬉々として舞台に飛び出した。
そんな彼の姿に、
「なんて、人を魅了する人なんだ。自然と手が出た。つい、背中を押してしまった」
と、友人と話したものだ。
コンサートを盛り上げながら、自分自身も楽しむ桑名氏の姿は、本当に輝いていた。
その時から、私の桑名氏の印象は、
シャイで、人を惹きつける、不思議な魅力溢れる、素晴らしい人。
その桑名氏も、2012年10月26日に、長い闘病生活の末、この世を去られた。
あの、無邪気な顔が、もう見られないのは、寂しく思う。
だが、私の中に残る桑名氏は、今も嬉々として輝いている。
桑名正博氏のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。