オペラで世間話

サイト「わかる!オペラ情報館」の管理人:神木勇介のブログです

オペラ公演、DVD、本の紹介・・・そして、音楽のこと

週刊新潮「詐欺!悪徳商法!朝日新聞主催ローマ歌劇場」の記事に思ったこと

2006-10-11 | その他

【週刊誌の大見出しを飾ったオペラ公演】
 ほかに大きな話題がなかったからか、オペラ公演のことが週刊新潮(平成18年10月12日号)に大きく掲載されていました。
《朝日新聞社が主催する、名門ローマ歌劇場の日本公演で、宣伝されていた豪華キャストが「健康上の理由」で次々と降板した。(中略)その多くが、よその国の劇場に元気に出演していると聞けば、高額チケットを買ったファンは黙っていない。》
 私が観に行った『トスカ』よりもむしろ『リゴレット』の方の話です。指揮者のカンパネッラやマントヴァ公爵役のフィリアノーティの降板等がありました。
 キャンセルはあり得ることなので、主催者側の説明のしかたの問題だと思います。レナート・ブルゾンやエヴァ・メイが降板して二流歌手に変更という事態でなかっただけ、まだよかったのかもしれません。

【生で聴きたいと思う歌手】
 この件で私が思ったのは、実は今回のローマ歌劇場に限ったことではなく、そもそも外国オペラの引っ越し公演は、最近、魅力がなくなってきたのではないかということです。
 これまで私は「オペラ」に対して、①生の舞台を鑑賞する、②CD、DVD等のソフトを鑑賞する、③自ら歌う、という3つの方法で楽しんできました。
 「生の舞台」派と「CD、DVD」派の間には結構大きな溝があり、音大を出た人でも、劇場に行く機会は先生の出演する公演に偏っていたり、CDを聴くのは自分の歌うアリアだけになっていたり、それぞれ趣味にあった楽しみ方をしています。私は、意識的にこの3つの方法に対してなるべくバランスよく、接してきました。
 生の舞台を鑑賞するときによく思うのが「歌手」のことです。今ちょっとだけ、許光俊著『オペラ大爆発』の中から引用してみますが、ここに次のようなことが書かれています。

《現代において聴くべき歌手はあまりにも少ない》
《上演に出かけても、いちいち歌手の名前を確認しないことすら少なくない》

 この記述は、70年代にパヴァロッティやドミンゴが活躍していた頃と現代を比較しての話なので、私がこれから言及することとは「程度」が違うのですが、私も最近、これと同じように思うことが多くなりました。
 私がお財布と相談しながら生の舞台に出かけるときは、やはりお目当ての歌手の声を生で聴きたいという欲求が強いんですよね。それで、どの公演に行くかは、やはり歌手中心に選んでしまうのです。
 でも、次第にそういう生で聴いてみたいという歌手が少なくなってきました。誰が出演していてもそんなに変わらないな、と感じるようになってきたのです。今回、週刊新潮に取り上げられたキャンセルなんて・・・いやいや、そういう問題でもないですね。
 しかし、やはり外国オペラの引っ越し公演といえど、それだけの値段のチケット代を払って聴くべき歌手が少なくなってきたと感じています。
 このことは、私が古きよき時代を懐かしんでいるというわけではありません。私はどちらかというと新しい才能に魅力を感じる方です。若手の歌手が台頭してくるとわくわくします。けれど、やはり少々小粒であるという事実は、否定しきれません。そして、DVDで見ることができれば、それで満足できてしまうのです。

【DVDによる天国のような時代】
 そうなのです。最近のDVDのリリースには目を見張るものがあります。なんと恵まれた時代になったのでしょうか。世界各地の歌劇場の公演がいち早く、そして画像、音声もよい状態で手に入る時代になりました。昔は、音楽雑誌に掲載された写真を食い入るように見たものです。その上、雑誌に耳を付けて音が出たりしないものかと・・・すみません、オーバーでした。しかし、今やこうしたDVDのリリースに加えて、インターネットでザルツブルク音楽祭の公演の映像を垣間見ることができたり、オペラ公演のラジオ中継を聴くことができたりします。
 そして、海外旅行のついでに、インターネットでチケットを取って外国でオペラを観る、といったことも容易にできるようになりました。
 引っ越し公演のチケット代を考えると、ついつい「DVDが~枚買えるなあ」と悩んでしまいます。

【国内で期待するオペラ公演】
 これからのオペラ公演は、海外歌劇場の引っ越し公演よりも、国内のオリジナルのオペラ公演の方に可能性があると思います。日本でしか見られない、東京でしか見られないオペラを創作していく必要があります。新国立劇場はもちろんのこと、二期会、藤原歌劇団など手作りのオペラによって、生の舞台を鑑賞する楽しさが引き出されることに期待しているのです。ただそれはもう、あの「歌手のすごさ」を堪能する楽しみとは違う種類のものかもしれません。
 というわけで、私は、上述した3つのオペラの楽しみ方「生の舞台」「CD、DVD」「自ら歌う」の中で、「生の舞台」の比重が下がってきているようです。そして、DVDを鑑賞することも多くなりました。というわりには「オペラで世間話」にDVD評を載せることが少ないのですが。これからはがんばってDVD評を充実させたいと思います。
 週刊新潮の記事を読んで、ここまで飛躍して考えてしまいました。自分の傾向を理解することができて、それはそれでよかったです。結果的に独り言となりました。