57歳から始めるレンタルカートの世界

唄う物書きアマミヤユキト57歳で人生初のレンタルカートデビュー。

想い出の車たち、HONDA 四代目 プレリュード

2020年05月04日 | 思い出のクルマ
クルマ小説のご紹介をしていたら、ぼく自身の想い出のクルマについても書きたくなってきました。
ぼくが最初に買ったのは、NISSANの初代『プリメーラ1,8』だったことは、すでに『思い出のクルマ』というカテゴリーでお話ししましたね。
三十一歳にして、ようやく手に入れたマイカーでした。
内、外装共に、実にシンプルで、素っ気ないほどです。
だけど、いざ走らせると、フロントマルチリンクサスペンションの足回りと、最高のシートセッティング。
そのハンドリングの秀逸さは『ヨーロッパ車を超えた!!』
とまで評判を呼びました。
走り込むほどに、楽しい! 味わいを増すクルマでした。
今、思い出しても、実によくできた、傑作車だった、と思います。
それでも、2年ほど乗り続けると、やはり物足りなさを感じてきたのです。
それは……。

『HONDA』というブランドへの憧れ。

最初、プリメーラを買う前に、ホンダのディーラーを見て回ったのですが、その時、欲しい車種が見つかりませんでした。
一旦、日産の車を購入しましたが、HONDAへの憧れはずっと心の中で、タネ火のように、静かに燃え続けていました。
***
そんな折、事件が起きました。
会社の同僚Y君が、ホンダの『プレリュード』最新型(4代目1991年発売)を買うというのです!!


このときのTV CM。
覚えている方も多いでしょう。
そうです、あの『アイルトン・セナ』様が、ご出演なさっていたのですよ!
1991 AYRTON SENNA HONDA PRELUDE ad 1


「さあ、走ろうか!」

「Just move it !」

テレビの向こうの『セナ様』から、こう呼びかけられると、もう僕たち『セナ信者』は、逆らえません。
会社の同僚Y君も、熱狂的ホンダファン、セナファンです。
彼が「プレリュード、買っちゃうよ~!!」というので、ぼくもディラーにくっついて行ったのです。
***
当時のホンダディーラーは、アコードなどの大人向け、ファミリーカーを扱う「クリオ店」
そして、若さとモータースポーツ心を押し出した「ベルノ店」に分かれておりました。
もちろん行ったのは「ベルノ店」
実はY君。この時、すでに中古の2代目プレリュードに乗っていました。

ぼくがまだ車を持っていなかった時、毎日の通勤のため、この中古のプレリュードに乗っけてもらっていました。
朝、エンジンをかけて、ATレバーをDレンジに入れると、

『ガガガ、ゴゴゴ、ギィ~』

という、とんでもない音を立てていました。
Y君とぼくは、会社が借り上げてくれたマンションで独身生活を謳歌していました。
(神戸の本社採用で、すぐに名古屋工場の営業課配属となったのです。転勤扱いで、住居費は0円でした!!)
Y君の部屋は、まさに独身を絵に書いたような、『ゴミ屋敷』でした。
仕事はよくできる人でしたが、プライベートな暮らしは、まったくの無頓着。
そんな無頓着な彼も、愛車のプレリュードが、毎朝、ルーティーンのように粛々と行う

『ガガガ、ゴゴゴ、ギィ~』

という”儀式”には、かなり閉口していたようです。
彼が新車購入を決意した、大きな要因でもありました。
***
さて、新車購入のためホンダベルノ店につきました。
すでに店内の駐車スペースには、本日納車される、Y君のプレリュードが置かれていました。
綺麗でした。
うっとりするほど美しい。
フロントからリアへの流れるようなボディライン。

カラーは情熱のミラノレッド。
セナさんが、CMしていた、まさにあの色のクルマでした。
お店で、購入の手続き、諸々を済ませて、Y君はキーを受け取りました。

プレリュードというクルマは初代から

『デートカー』

口の悪い奴らからは

『ひっかけクルマ』
とさえ呼ばれていました。
女の子を誘う、デートには最高のアイテムとされていたのです。

まあ、僕らは女性に縁がなかったので、しょうがありません。
ピッカピカの新車プレリュードに、無精髭はやした、オッサン二人が乗り込みました。

『いざ、慣らし運転じゃぁ~!!』 

とばかりに、さっそくシェイクダウンを兼ねてドライブに出かけました。
***
4代目プレリュードの室内空間は、大へん広く感じました。
特に

『横に広いなぁ~』

と感じるのです。

また、助手席から目に入ってくる、ドアミラー。それを縁取るビビッドな赤が大へん印象的でした。
インパネ周りは近未来的。
弧を使った滑らかな曲線で構成されています。
細かな梨地の黒いパネルには運転中、スピードメーターや、タコメーターが美しく表示されます。
水温、燃料計のほか、中央部には、搭載しているコンピュータからの数々のデータが、表示されていたように記憶しています。
エンジンは、HONDAお得意のVTEC、燃料噴射はPGM-FIなのです。
基本的な仕組みは、あのセナさんが世界チャンピオンを獲った、マクラーレン・ホンダのエンジンと同じなのです。
何より、エンジンブロックには、誇らしげに

『DOHC VTEC」
『HONDA』

のロゴが刻み込まれているのですよ。
そんな新車を手に入れて、今、高速道路を楽しそうに走らせているY君。
日頃は無愛想な彼なんですが、その口元の緩みは、嬉しさを隠しきれない様子です。

『チクショ~!!羨ましいなぁ~』

とぼくが悔しがった、と思うでしょ? みなさん。
とんでもない。
その時、助手席に座っていたぼくは……。

『グググ、ガガガ、ギェぇぇ~、腰が痛イィ~!!』

なんと、Y君の2代目プレリュードのような異音を発しながら、体をくねらせ、よじらせ、もがき苦しんでいたのですよ。
原因は、プレリュードのスポーツタイプのシート形状が、ぼくの体型にまったく合っていなかったのです。


当時からぼくは腰痛持ちでした。
すでに所有していた日産のプリメーラ。
この車を購入した最大の理由、決定打となったのは、

『シートが最高に気持ちいい』

ということでした。
人間が車と接触している部分とは、
まずは座席、シートなのです。
次にブレーキ、アクセル、クラッチのペダル類とステアリングホイール。
最後にシフトノブでしょうか。
ドライバーとクルマは、これら体との接触部分から、お互いのことを理解し合うのだと思います。
これはレンタルカートに乗っている今、より一層強く感じられます。
まだ暖まっていないスリックタイヤで、サーキットへコースイン。

『おっ、タイヤ、結構グリップするじゃん』
『エンジン、まだ冷えてるね』
「う~ん、ブレーキペダルが奥で繋がる」
などなど。

レンタルカートに乗る時、ぼくは、絶えず、こんな風にカートと対話しています。
そのクルマとの対話を取り持ってくれる、とびきり重要な構成要素。
それが『座席、シート』なのです。
何しろ、100%クルマを信頼して、自分の体を無防備で預けているわけですから。
その点、

『ホンダのシートは、ぼくに合わない』

それは、ホンダの車に乗るな! と言われているようなものです。
ホンダファンのぼくにとっては、絶望的な死刑宣告に近いものでした。

憧れのホンダプレリュード、記念すべき新車インプレッションは、助手席で ”のたうちまわる” という無残な結果となったのでした。
こうして、ぼくがホンダ車を手に入れるまでは、あと数年を待つことになりました。

***本文の著作権は天見谷行人に帰属します ©️Yukito amamiya 2020
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