リリカルなのはの2次創作を書いてみる。

管理局戦争掲載中、少しずつ本編書き始めました。

管理局戦争外伝 ある戦場の風景

2011-12-25 03:33:34 | SS外伝


「 ハァハァハァ・・・・・・ 」







荒い息を吐きながら、いったいいつからこうなってしまったのだろう。



薄暗い塹壕の中で、少しでも油断すれば気が狂いそうになるのを抑え、彼は必死に考えていた。



絶え間なく続く砲声と爆音、絶叫と怒声、ツンと鼻をつく生臭い鉄分を含む独特な血の匂い。



あまりに濃厚なその匂いに、襲いくる吐き気に耐え切れず思わず隣に座る戦友の肩を押しのけると、戦友はそのまま横に倒れ込み、



頭の中身をドシャリと泥の上にまき散らす。



彼は思わず、その少ない胃の内容物を倒れた戦友の上に吐き散らしながら、どこか冷静な部分で、ああだからか、そう思った。



右隣に座っていた兵士が半狂乱になりながら叫ぶ。







「 ヒィッ、も、もう沢山だ!! クルシュの日には帰れるんじゃなかったのか!!



  嫌だ嫌だ嫌だっ! 俺は死にたくない、死にたくないっ! 帰るっ! 俺は家に帰るぞっ!! 」





 

兵士は泥で薄汚れた背嚢を背負い、小銃を片手に立ち上がるが、その行為は爆音の中でも凛と響く声で遮られる。







「 貴様! 栄えあるレキセントラ兵でありながら、恥知らずめっ敵前逃亡は許さんぞ!! 」







いまだこみ上げる吐き気に、四つん這いになっていた彼は木霊したその声の方に視線を向ける。



ああっ、そういえばこんなのもいたっけな。



立ち上がった兵士に向けインテリジェントデバイスを掲げる魔導師の姿が見える。



時空管理局に勤めるどこぞの貴族の令嬢だったか。



泥に塗れた塹壕の中で、多少薄汚れているとはいえ純白のバリアジャケットを纏ったその姿は、彼の目には酷く現実離れした光景に映った。



いつ頃からだっただろうか、時空管理局の職員がデバイスの非殺傷設定を解除するようになったのは・・・・。



強力な魔法を打ち出すその兵器を向けられた兵士は、かわいそうに、ガタガタと震えながら言葉にならない呻き声を発するばかり。







「 まったく、これだから魔法も使えぬ平民不風情は・・・・・ 」







デバイスを構えたまま、彼女はまるでゴミでも見るかのような視線を兵士に向け愚痴をこぼし続ける。





偉そうに、まったくもって、魔導師というのはいけ好かない連中ばかりだ。彼は思う。





貧村の出である彼は、毎年のように要求される法外な税を中央の政府に納められ無くなった両親の代わりに、やむなく兵役に就くことになった。



中央都市の基地に配属になったばかりのころは、見るものすべてが珍しく、煌びやかな都市の生活風景に興奮した日々を過ごしていたが、



その興奮もすぐに覚めることになる。



魔法適正者による非魔法適正者への差別。



都市の外縁に広がるスラムへの警備行動が命令されたのは基地への配属から5日後のことである。



彼の所属する小隊がスラムに到着すると、そこにはすでに時空管理局の魔導師数名が到着しており、中央政府の依頼によって住民に対する強制退去を行っていた。



いくら非殺傷設定とはいえ、当たり所が悪ければ死んでしまうことだってあり得る魔法を、住民たちに乱射する姿に怒りをを覚えた彼は、



抗議を行おうとしたが、周りにいた上等兵に抑えられ、これがここの日常なんだと説き伏せられた。



彼自身は後で知った話が、この地に駐留する時空管理局員の中には嬉々として政府からの依頼を受け、ゲーム感覚で住民を撃つ者もいる。



彼ら持つものにとって、この国で、持たざる者は無に等しい存在だったのだ。





クソッタレの魔導師共め。



いまだ魔導師からの怒りを向けられている兵士を助けるべく、吐き気をこらえながら立ち上がろうとする。





Wuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuuu





近くにあったスピーカーから、けたたましいサイレンの音が鳴り響く、いつの間にか砲声は止んでおり、サイレンは敵軍の突撃を知らせる合図であった。



この音を聞いた魔導師もさすがに愚痴り続けるわけにもいかず、チッという舌打ちと共に塹壕の奥へと走り出していった。



彼は魔導師を嫌っていたが、彼らが持つ魔法という力だけは認めていた。



何せこの戦線がかろうじて持っているのは、他ならぬ彼ら魔導師のおかげなのだから、たとえこれが首都を守る最後の防衛線であったとしても・・・・。





慌ただしく配置につく周りの兵士たちと共に、彼も定められた所定の位置に付き、戦争が始まって以来長い付き合いになるクリープ歩兵小銃を構える。



敵軍はあいも変わらず馬鹿の一つ覚えのように、機械兵を前面に押し立て、その独特な形状をした戦車と共に突き進んでくる。





敵の指揮官はよほど無能なんだろう。



だが、俺たちにとってはその無能さがありがたい。



それに、今日はまだましなほうだ。



彼は思った。





いつもならば機械兵の前進に合わせて、航空機による地上攻撃が加わるのだが今日に限って地上攻撃の支援は無いようだ。



塹壕からわずかに乗り出し、クリープ小銃を構えながら機械兵が有効射程に収まるまでその陣容を眺める。



相変わらず馬鹿げた数だ・・・・倒しても倒しても次から次へと湧いて出てくる。



銃眼越しに圧倒的な物量を持って迫る敵軍に若干の羨望を含んだため息をつきつつ、愛銃の引き金に指をかける。



塹壕のあちこちから銃声が上がるが、開戦初期に比べその音は明らかに貧弱なものとなりつつあることに彼は気づいていた。



補給が滞りがちな戦線で、初めに沈黙したのは支援砲撃、次に重機の類が徐々にその声を小さくし、今では歩兵小銃の音しか聞こえないこともざらだった。





引き金を絞る。



パァンという炸裂音と共に、狙いを着けていた機械兵がよろめく、だが、それだけだった。



次の瞬間には機械兵が体勢を立て直し、前進し直すのが見える。



ここ最近になって見られるようになった光景だ。



やはり敵は強化されている。



彼は愛銃に次弾を装填しつつ、再度敵兵に照準をつけるため銃眼を覗こうとすると、敵の前列に閃光が走り戦車が爆散し戦列が乱れるのが見て取れた。







「 うおおおおぉおぉーーーーーーーー 」







周囲の兵士から歓声が上がり、どん底まで落ちかけていた士気が若干上がることを感じ取る。



銃眼から目を外し、頭上にちらりと目をやると、先ほど兵士を叱責していた女魔導師がデバイスを構えているのが見える。



砲撃魔法で敵の戦車を吹き飛ばしたのだ。



航空型の機械兵が前線に出てきていない今、彼女達魔導師の砲撃を邪魔する者はいない。



彼女はそのまま数発の砲撃魔法を放ち敵の前列を次々と打ち砕いてゆく。



純白のバリアジャケットに包まれたその姿は味方の兵士にとって、まるで女神のように映っていることだろう。







「 栄光あるレキセントラ兵士達よ! 臆するな! 正義は時空管理局にある! 共に勝利への道へと突き進むのだ!! 」







女性とは思えぬ大音声と共に放たれる言葉は、兵士達の戦意を高揚させるには十分であった。



周囲の興奮が最高潮まで達した時、彼女はそのまま敵の戦列に飛び込み、機械の兵士たちを蹂躙し始める。



それに伴い銃撃の音が激しくなっていく、誰もが目の前にある小さな希望に縋りたいのだろう。



補給の途絶えがちな自軍と、強化され始めた敵軍。



戦争の勝敗など誰の目から見ても明らかだろうに・・・・。



彼は一人冷静に、機械兵に狙いをつけ引き金を絞ろうとすると、前方からグーーーーンという聞きなれた音が響いてくる。



敵の航空型、その姿は遠目にも従来の航空型の機械兵とは明らかに異なっていることが見て取れる。



彼女達はいつものごとく航空型に果敢に挑んでいく。



何時も通りなら、敵はその数に物を言わせて彼女達魔導師の動きを封じるのが精いっぱいのはずだが、今日は違った。



変幻自在に空を翔ける彼女たちに難なく追いすがり、次々にその光弾を打ち込んでいく。



何時もとは真逆のその光景に、周囲からは悲鳴が上がり始める。



そうこうしているうちに、一人、また一人と魔導師はその数を減らしていき、最後は大音声を上げていた女魔導師が空飛ぶ鉄の筒の直撃を受け爆散した。







「 あっけない最期だったな。 」







彼が視線を上げぼそりとつぶやく。



次の瞬間、彼は激しい衝撃にその身を木の葉のように吹き飛ばされ、体中のいたるところに表現できないような激痛が走る。







目が見えない。



どのくらい時間が経っただろうか?



おそらく仲間の兵士だろう。



耳元で何かを叫んでいる。



もう痛みも感じない。



すごく眠い。



今までずっと戦ってきたんだ。



もう眠らせてくれてもいいだろう。







次第に薄れゆく意識の中で、彼の脳裏には両親の姿と、結婚を約束した幼馴染の彼女の笑顔が映る。



教会の前で純白のドレスを着る彼女はとても美しかった。













『 あ~ぁあ、くたばっちまいやがった。 』



『 それにしても、なんでこいつ笑ってるんだ? 』



『 さぁ? 幸せな夢でも見てたんだろ? 』



『 かもな、にしても新型のドロイドは高性能だな。 』



『 これじゃ新兵や予備役の訓練にもならんよまったく。 』



『 せっかくちょうどよさそうな辺境にまで足を延ばしたのにな。 』



『 とんだ無駄足だな、ドロイド共は手加減をしらん。 』



『 次はうまくやるよう上に申告でもするか。 』



『 ハハハハ 』





















管理局戦争



西暦2015年に第97管理外世界、日本国に端を発したこの戦いは、次第に局地戦の様相を脱し、魔法勢力圏全域を巻き込む世界大戦へと発展する。

多くの国家が、時空管理局と反管理局勢力「Union」に分かれ争うこの戦いは、帝國という桁外れの巨大国家が本格的に参戦を果たしたことにより

形勢は次第に「Union」へと傾いてゆくことになる・・・・・。


















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