評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」
山崎元が原稿やTVでは伝えきれないホンネをタイムリーに書く、「王様の耳はロバの耳!」と叫ぶ穴のようなストレス解消ブログ。
投資銀行ビジネスモデルの弱点
「にわかリーマン評論家」であるとしても、テレビで短時間のコメントをするだけではつまらない。少しは理屈をこねないと気分が出ない。楽天証券のホームページの私の連載「ホンネの投資教室」に、「ビジネスモデルとしての投資銀行の終焉」と題したレポートを書いた。
以下は、そのレポートの一部分で、投資銀行のビジネスモデルを要約した部分だ。(全文は楽天証券のホームページで無料で見られます。良かったら、ご一読下さい)
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リーマンブラザーズのような投資銀行のビジネスモデルでは、(1)市場から資金を調達し、(2)多くの場合レバレッジを掛けて、(3)リスク商品への投資/トレーディングを行う、というものだ。加えて、(4)トレーダーから経営者に至るまで、成功報酬のシステムで処遇されるので、彼らには、取れる限り最大限のリスクを取る経済合理的なインセンティブがある。
成功報酬制度は経済的には「コール・オプション」なので、ボラティリティー、つまりリスクが大きいほど価値が上昇する。即ち、投資銀行型のモデルにあって、リスクは可能な限り上限まで拡大する傾向がある。つまり、経営基盤のしっかりしている投資銀行は、その基盤が許す限り最大のリスクを取ろうとするので、投資銀行は大きくても、小さくても、一つの失敗で一気に危機に至る性質を持っている。
従ってプレーヤー(担当者)レベルでも会社をごまかしてより大きなリスクを取りたいというインセンティブが働くし、経営者も成功報酬なので、会社が大きなリスクを取ることで自分の持っているオプションの価値が上がる。
ここでリスクをごまかすための小道具が、リスク評価の難しい証券化商品のようなものを作り出す「金融工学」や、土地は値下がりしないとか、ネット企業は無限に成長するといった「○○神話」の類だ。
金融工学やその産物であるデリバティブは建前上、リスクをヘッジし、制御する手段だということになっているが、使用者の利害を金融工学的に理解すると、これがむしろリスク拡大の手段に使われ勝ちであることが、容易に理解できるはずだ。プレーヤーは資本家から、リスクの形で富を盗み出すのだ。リスクと価値が交換可能であることは、オプションの初歩が理解できれば分かることだ。
「『個人』を制御することが難しくて、リスクが過大に拡大する傾向があること」が投資銀行ビジネスモデルの第一の弱点だ。
加えて、成功報酬というオプションが行使される期間が1年で、将来大損をしても、過去の報酬を返さなくてもいい点にも、問題がある。将来の損失の可能性と引き替えに、1年だけ収益を膨らませることが出来ると巨額の報酬が手に入る。しかも、多くの場合、利益の評価は在庫の時価評価に基づいて行われる。この場合、自分のトレードが価格を一時的に動かすことが出来れば、将来のリスクと引き替えに、一年分の好業績を手に入れることが出来る。ALM(アセット・ライアビリティー・マネジメント)風に言うと、株主の利益と社員個人(しばしば経営者も含まれる)の利害のセッティングに、期間のミスマッチが存在するのだ。
この第一の弱点に関しては、かつてのゴールドマン・サックスのような基本的に無限責任のパートナーシップ制の経営体であれば、投資銀行のオーナーとプレーヤー(社員)の利害のミスマッチにある程度対処することができるだろう。
しかし、大きな資本の必要性と株式によって調達した他人の資金を使うことのプレーヤー(経営者を含む)にとっての魅力もあってか、今や、大手投資銀行は株式を上場している。この形を取ることで、現代の投資銀行は、プレーヤーが資本家をカモにする舞台装置となった。
また、特に米国型の投資銀行のビジネスモデルでは、市場から比較的短期の資金を大量に調達している。今回のリーマンブラザーズのように業績が悪化した場合や、市場からの信用が低下した場合には、直ぐに資金コストが上昇しやすいし、資金調達自体が難しくなる。これが、直接的には、今年に入ってから、全米3,4,5位の投資銀行が吸収されたり、消えたりした原因だ。
投資銀行と比較すると、商業銀行は、預金という比較的安定的な資金源を持っている。
たとえば、メリルリンチが大手商業銀行であるバンク・オブ・アメリカに吸収されると、投資銀行としてのメリルリンチは安定した資金供給源を得て一息つくことになるかも知れないが、さて、金融システムとしては、それでいいのだろうか、というのが次の問題だ。ギャンブラー達を銀行の金庫の中に呼び込んでも大丈夫なものなのだろうか?
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たとえば、最近出版された「すべての経済はバブルに通じる」(小幡績著、光文社新書)では、機関投資家の運用競争のようなプロ間の競争が、破綻の可能性を知りつつ、しかしバブルから降りられないような状況を通じてバブルを生むことを説明している。確かにそうして面もあって、この論理は日本のサラリーマン・ファンドマネジャーの世界でもバブルが起こりうることを説明できるが、ネットバブルも、サブプライム問題も、上記で述べたような成功報酬オプションによるリスク拡大効果の方がより直接的で、大きな要因になっていたのではないだろうか。
尚、ヘッジファンドのビジネスモデルも、上記の投資銀行のビジネスモデルに近い。カジノ(のインフラ)を自分で持っているギャンブラー集団が投資銀行で、カジノを自分では持っていないギャンブラーがヘッジファンドだという程度の違いだろう。
バブルの発生と成長にあって、また金融システムの安全性にとって、最もリスキーな金融商品は間違いなく金融マンの成功報酬(制度)だと思う。
以下は、そのレポートの一部分で、投資銀行のビジネスモデルを要約した部分だ。(全文は楽天証券のホームページで無料で見られます。良かったら、ご一読下さい)
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リーマンブラザーズのような投資銀行のビジネスモデルでは、(1)市場から資金を調達し、(2)多くの場合レバレッジを掛けて、(3)リスク商品への投資/トレーディングを行う、というものだ。加えて、(4)トレーダーから経営者に至るまで、成功報酬のシステムで処遇されるので、彼らには、取れる限り最大限のリスクを取る経済合理的なインセンティブがある。
成功報酬制度は経済的には「コール・オプション」なので、ボラティリティー、つまりリスクが大きいほど価値が上昇する。即ち、投資銀行型のモデルにあって、リスクは可能な限り上限まで拡大する傾向がある。つまり、経営基盤のしっかりしている投資銀行は、その基盤が許す限り最大のリスクを取ろうとするので、投資銀行は大きくても、小さくても、一つの失敗で一気に危機に至る性質を持っている。
従ってプレーヤー(担当者)レベルでも会社をごまかしてより大きなリスクを取りたいというインセンティブが働くし、経営者も成功報酬なので、会社が大きなリスクを取ることで自分の持っているオプションの価値が上がる。
ここでリスクをごまかすための小道具が、リスク評価の難しい証券化商品のようなものを作り出す「金融工学」や、土地は値下がりしないとか、ネット企業は無限に成長するといった「○○神話」の類だ。
金融工学やその産物であるデリバティブは建前上、リスクをヘッジし、制御する手段だということになっているが、使用者の利害を金融工学的に理解すると、これがむしろリスク拡大の手段に使われ勝ちであることが、容易に理解できるはずだ。プレーヤーは資本家から、リスクの形で富を盗み出すのだ。リスクと価値が交換可能であることは、オプションの初歩が理解できれば分かることだ。
「『個人』を制御することが難しくて、リスクが過大に拡大する傾向があること」が投資銀行ビジネスモデルの第一の弱点だ。
加えて、成功報酬というオプションが行使される期間が1年で、将来大損をしても、過去の報酬を返さなくてもいい点にも、問題がある。将来の損失の可能性と引き替えに、1年だけ収益を膨らませることが出来ると巨額の報酬が手に入る。しかも、多くの場合、利益の評価は在庫の時価評価に基づいて行われる。この場合、自分のトレードが価格を一時的に動かすことが出来れば、将来のリスクと引き替えに、一年分の好業績を手に入れることが出来る。ALM(アセット・ライアビリティー・マネジメント)風に言うと、株主の利益と社員個人(しばしば経営者も含まれる)の利害のセッティングに、期間のミスマッチが存在するのだ。
この第一の弱点に関しては、かつてのゴールドマン・サックスのような基本的に無限責任のパートナーシップ制の経営体であれば、投資銀行のオーナーとプレーヤー(社員)の利害のミスマッチにある程度対処することができるだろう。
しかし、大きな資本の必要性と株式によって調達した他人の資金を使うことのプレーヤー(経営者を含む)にとっての魅力もあってか、今や、大手投資銀行は株式を上場している。この形を取ることで、現代の投資銀行は、プレーヤーが資本家をカモにする舞台装置となった。
また、特に米国型の投資銀行のビジネスモデルでは、市場から比較的短期の資金を大量に調達している。今回のリーマンブラザーズのように業績が悪化した場合や、市場からの信用が低下した場合には、直ぐに資金コストが上昇しやすいし、資金調達自体が難しくなる。これが、直接的には、今年に入ってから、全米3,4,5位の投資銀行が吸収されたり、消えたりした原因だ。
投資銀行と比較すると、商業銀行は、預金という比較的安定的な資金源を持っている。
たとえば、メリルリンチが大手商業銀行であるバンク・オブ・アメリカに吸収されると、投資銀行としてのメリルリンチは安定した資金供給源を得て一息つくことになるかも知れないが、さて、金融システムとしては、それでいいのだろうか、というのが次の問題だ。ギャンブラー達を銀行の金庫の中に呼び込んでも大丈夫なものなのだろうか?
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たとえば、最近出版された「すべての経済はバブルに通じる」(小幡績著、光文社新書)では、機関投資家の運用競争のようなプロ間の競争が、破綻の可能性を知りつつ、しかしバブルから降りられないような状況を通じてバブルを生むことを説明している。確かにそうして面もあって、この論理は日本のサラリーマン・ファンドマネジャーの世界でもバブルが起こりうることを説明できるが、ネットバブルも、サブプライム問題も、上記で述べたような成功報酬オプションによるリスク拡大効果の方がより直接的で、大きな要因になっていたのではないだろうか。
尚、ヘッジファンドのビジネスモデルも、上記の投資銀行のビジネスモデルに近い。カジノ(のインフラ)を自分で持っているギャンブラー集団が投資銀行で、カジノを自分では持っていないギャンブラーがヘッジファンドだという程度の違いだろう。
バブルの発生と成長にあって、また金融システムの安全性にとって、最もリスキーな金融商品は間違いなく金融マンの成功報酬(制度)だと思う。
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« にわかリーマ... | 「使えるノー... » |
AIGやアリコのことなんですが
山崎さんはテレビで「アリコジャパンなどの
日本にあるAIG子会社は大丈夫。」と言い切ってますが
・たとえばアリコはAIG株を大量に保有している件
・FRBはAIG子会社の資産を担保にして9兆円融資
している件。
こういうことを踏まえても、大丈夫と言い切る根拠を
教えてください。
破綻はなくても売却されて予定利率が下がるリスクも
まったくなく「大丈夫」なのですか?
素人には単に「日本にある子会社は完全独立だから
大丈夫」というだけでは煙に巻かれた気分なのです。
確かに、彼らにとっては、運用成績が悪く首になったとして、バンザイして他の機関や独立するだけでしょうから「ノーリスクハイリターン」なんでしょうね。
日本のサラリーマンファンドマネジャーの場合は、もし仮に年収がこのような報酬制度だったとしても、マイナスの場合、「周囲との人間関係」「対面」などを失うことを「リスク」と考えていたので、このようなことは起こりにくかったのでしょうか?それとも、きちんとガバナンスが利いていた?
「日本の業界」をフォローをしている山崎さんがおもしろかったです。
そのテレビ朝日の映像は、後ろに荻原さんの映像(かなり危機感をあおる)とつなげていて、かなりギャップのある作りだったので、さすが、映像ディレクターは上手だなぁ、とおもしろ半分、怖さ半分でした。
ところで、素人目には、投資銀行は秘密結社的な要素があるような気がしていたのですが、普通に上場しているのには驚きました。
「モルガン家(上) 金融帝国の盛衰」をよんで、(上だけなので、理解不十分ですが・・・)、投資銀行とは政治や産業界にずっぷりつかりながら、世の中を作っていく専門職のようなイメージを持っていたで・・・。
>どしろうとさん
これから2年、AIGは資産の切り売りをしていく予定です。そのなかで、優良資産であるアジアの子会社は比較的簡単に買い手が見つかるのではないでしょうか。
特に日本の子会社は「付加保険料率の高さ」があるのでうまみがあると思います。
さらに、日本政府の制約や規制がききますので、被保険者が大きな損害を受ける自体は想定する必要はないと思いますよ。
一連の論説を拝読させて頂きました。
過剰レバレッジ金融経済の極大化がもたらした実態経済への脅威の源の構造とメカニズム(動きの仕組み)に就いて非常に明確で判り易い解説と先行きを見守る際の視点を再確認させて頂きました。
日経朝刊経済教室でも金融危機の出口を探る特集が組まれていますが、山崎さんの、成功報酬からの切り込みは具体的で現実性を以ってとても理解し易いものです。要はシステムが勝手に動いて不都合な事態を招くのではなくてシステムを作り都合よく動かせる人々の欲望・思惑と意思が現実を作り上げるのだと納得します。
尤も山崎ゼミ生の一人としては既にバイブル「投資ばかにつける薬」での100億円部長の成功報酬の事例研究や今年初めのマルチスコープでのソシエテジェネラル事件の見方学習がバックボーンにあったことがとても大きいのですが、今回の教訓を一番活かして欲しいと真剣に思うのはSWF構想を掲げる人々に対してもです(ユニバーサル銀行の投資銀行化と平行して)。
但し今回のサブプライムバブルは米国での使い回しが終わって日本に移入される前に破裂して仕舞った感じがしますが、本当はどうなのでしょう。
今後暫く続くと予測される厳しい経済環境が政府ファンド構想の制約要因に成ることはなさそうで、一方、リストラで職場探しに真剣さを深める先進金融国家の潰れた最先端カジノ出身のギャンブラー達をプロ中のプロとして日本政府が三顧の礼をもって在り難く迎え入れる愚行を犯す危険性が逆に高まったのではと危惧感を持ちます。
米国発金融危機が忽ちに自分の金融資産の今日明日の1万円の減少に直結する場合は極めて真剣・慎重な筈の大半の政治家にとって人の金の国庫ならばリスクに晒せる資金として、自分の実力を大きく膨らませて見せる為の道具立てとしてグローバル金融社会でレバレッジを利かせるべき投機元本と見ているのだとしたら怖い話です。今度のことで北米金融当局に作った貸しの見返りが保険になる筈だと思っている人も居るかも知れませんね。
微小ながら一個人投資家として此処暫くは資金投下のチャンスを、次の変なバブル問題の種が芽吹く前に考え終えて実行に移したく思っています。今回の金融危機で結構正されるべきが正されたことになるのではないでしょうか。
>ギャンブラー達を銀行の金庫の中に
>呼び込んでも大丈夫なものなのだろうか?
や
>カジノ(のインフラ)を自分で持っている
>ギャンブラー集団が投資銀行で、カジノを
>自分では持っていないギャンブラーが
>ヘッジファンド
は大笑いしました。
さて、リーマン破綻ですが、負債総額60兆円でザマァミロと対岸の火事のように他人事なサラリーマンが多いですが、ある意味、破綻というのは麻雀でいうところの、
「じゃ、そろそろ1回清算しとこうか?」
というノリに近いと思うのです。つまり、破綻コールで勝ちと負けが確定。AIGは大損被った雀士で、逆に大もうけした雀士(経営陣や社員も含めて)もいるはずです。
少なくても、負け確定の総額が
「じゃ、60兆円ね」
ということであって、けっしてこれは、これまで過剰に儲けやがってチクショーと妬みの対象となっていた人たちだけが払うのではない、ということを理解すれば、けっして対岸の火事と第三人称の立場でビール傾けているわけにはいかないと思うのですが、どうでしょう?
売り抜けたのは国内勢です。
この不動産購入資金は、アリコなどの保険料です。
都内の不動産のミニバブルの資金源が、マスコミに踊らされ、不必要な保険に加入した善良な庶民だったのです。その結果、住宅価格は上昇してマンションを高値つかみしたのは善良な庶民だったとは、皮肉な結果です。
あー、いつの時代でも庶民が痛めつかれるのです。
要するに、庶民には正確な情報が伝わらないのです。
諸外国のAIGの取り付け騒ぎなど、一切報道されません。
何年か前の東洋経済だったか、ダイヤモンドだったか忘れましたが、記事でアリコの広告料が保険料収入とほぼ同じだったのは、大変驚きつつこんなのまともな会社じゃないと思いました。
今後、アリコなどのAIGの各社は当然切り売りされるのは必至です、
AIG各社の保険はどうなるかは、私にはわかりませんし、誰も正確な事はわかりません。
それはそれとして、会社の相対的な財務強度を比較すると、現時点のアリコは、大まかには、日本の生命保険会社並でしょう。
つい最近格下げしたS&Pの格付けで17日現在A+ですが、これは日生のAA-第一生命のAの間です。住友生命はBBB+ですか。
確かに、運用資産の中の外国債の異様な多さなど、心配材料はありますが、今のところ、日本の保険会社並という理解でいいのではないでしょうか。加えて、いわゆる「逆ざや」の問題はほとんどないはずです。
もちろん、将来財務状況が変化する可能性があるし、現在のデータが実態を正しく表していない可能性もあるでしょう。ただ、リスクがあるのは他社も同じだし、保険会社(に限りませんが)に対する判断に「絶対」を求めるのはそもそも無理です。
また、仮に契約者保護機構に契約が移管されるようなことがあったとしても、大まかに9割引き継ぎなら、たぶん、今アリコを解約して、同類の他社の保険に入ると営業費見合いの付加保険料の分が大きくてトータルでは損になりそうです。
いずれにせよ、今あわててAIG系の保険を解約して、別の保険に乗り換えるのは、損である可能性が大きいと思います。
私は、他社による保険の乗り換え勧誘営業は嫌いだ!と思いますが、アリコの商品も好きではありません。特に、医療保険は入らない方がいいと思います。
多分10%くらいの人は、高血圧や不整脈や尿酸値やその他諸々の加齢による健康数値の悪化により、ソモソモ他社に入れなくなっているはずです。
くれぐれも先に解約して、新しい保険には入れないなどという失敗はしないでください。
癪でしょうが契約者保護機構でのサルベージで我慢すべき方も多いと思いますよ。
日銀が4日連続で11兆円供給と言う記事があったんですが、その場での評価では「迅速な対応」「日銀はできる人」等の書き込みが多く散見されました。
しかし、前に為替介入7兆したお金がアメリカの債権を買う事によって市場に出て、アメリカの株価や住宅価格を上げ、アメリカ人はそれを担保に借金をしてアメリカでの消費が伸びる。しかし、サブプライム等のその後の悪循環でこれがスタフグやら1次産品を上げたそうです。
それで、今回の資金供給は長期的に評価できる対応だったのでしょうか?と言う事をお聞きしたいのです。。お金の発行し過ぎはインフレやら1次産品の上昇やらを招く気がしますし、あまり良いイメージが無い物で評価が多いのにも違和感がありまして。。専門家の意見を伺い自分なりに納得たいと思っています。よろしくお願い致します。
>成功報酬制度は経済的には「コール・オプション」なので
あたり、本当にそうだとすると
投資銀行のビジネスモデルは破綻するべくして
破綻したんだという印象を持ちます。
「すべての経済はバブルに通じる」も読みましたが、これだけ過度にリスクをとっていく姿勢みていると、”プロにまかせるから安心”じゃなくて、”プロに任せるのは危険”、という認識になっていくような気がします。
1.75兆円という不良債権買い取り額が、米国商業銀行の健全性をどの程度、担保しうるのか。(米国政府のB/S健全性ついての懸念は、私は的外れだと思っています)
2.山崎さんの記述に「かつてのゴールドマン・サックスのような基本的に無限責任のパートナーシップ制の経営体」とあるが、現在のゴールドマン、およびモルスタの経営体制が、山崎さんの懸念する「プレーヤーが資本家をカモにする舞台装置となっ」ているのかどうか。
3.山崎さんの懸念する「ギャンブラー達を銀行の金庫の中に呼び込ん」だ状態に対して、一部報道によると、投資銀行に対し、BIS規制のような、やりたい放題を規制する制度の導入が検討されているとのことですが、この規制が「ギャンブラー達」のやりたい放題を本当に規制しうるのか。
です。
2は、米国政府が不良債権を買い取る判断を下した時点で、既に個人的興味の範疇を出ない質問になるかもしれませんが、3の規制の、投資銀行マン達への効果性次第では、かなり気になってくる点です。
是非、ご教示いただきたく存じます。失礼な言い方かもしれませんが、推測で構いませんので、どうぞよろしくお願いいたします。
自信はありませんが、ご質問にお答えします。
>1.
75兆円は拡大する可能性がありますね。赤字にこだわらずに流動性は何としても確保するのでしょうから、大事には至らないような気がします。また、米政府の健全性についは、基本的に米国内の債権債務の移転と所得移転なので、大本では、おっしゃるとおり気にしなくていいと思います。
米国は、将来モラルハザードを反省する段階が来そうですが、これは反省するだけでしょう。
それにしても、無反省なのがグリーンスパン氏ですね。まだ叩かれないのがちょっと不思議です。
ところで、米国がこうなると、不良債権を買ってもらえない欧州の大手金融機関が次の焦点かもしれませんね。何となく危なそうな銀行の名前が浮かびます。
>2.
ゴールドマンにはまだ多少の格上感とパートナーシップ時代のニオイを感じますが、基本的に、投資銀行という成功報酬付きで(他人の)資本を利用するゲームが個人が資本をカモにする仕掛けであることは間違いないような気がします。もちろん、モルガンSはそうでしょうし。
両社とも未だ生きているうちに、信用か資金かを維持する酸素ボンベのような装置(ワコビアのような金蔓)を探しているのではないでしょうか。
それはそれとして、米国の投資銀行はかつての日本とよく似た経路ですね。4位は潰れ、3位は銀行傘下、2位は銀行を利用しつつ経営の独自性を残す道を模索、1位は何とか単独で生きられる。もちろん、それぞれ山一、日興、大和、野村です。
>3.
ルールを考えているのがギャンブラー自身かその仲間のような感じがします。自分たちに不都合な仕組みにはしないでしょう。つまり規制はザルになると思います。間違いなく将来のリスク要因です。
成り行きとして、グローバル化、するのであれば、たかが一国の紙切れである、ドル、が通用すること自体、おっかしな話、ではないでしょうか? ドルがもたなくなる、前に、いわゆる基軸通貨、を新設する、ような話は出ない、のでしょうか?
今回の一連のイベントはアメリカの金融ビジネスの相対的な強さが弱まることを象徴していると思いますが、かといって、基軸通貨は一つの利権なので、アメリカが簡単にこれを手放すことはないような気がします。
一つには、将来の覇権国である中国が現在アメリカの金融システムを経由する投資を受け入れることで成長速度を高めています。中国の発展段階が資本受け入れによる発展途上国型を脱する頃に、国力の多極化とともに金融も多極化して、これが共通通貨へのニーズをもたらすかもしれませんね。
ただし、当面は、ほころびが出てきたとはいえ、グローバル経済としてはアメリカの金融システムの使い勝手がいいし、アメリカも通貨発行益を手放したくないでしょう。
本当に有り難うございました。大変良くわかりました。素人にはなかなか知り得ない、貴重な情報です。有効に活用したいと思っています。
すると次の非常に大きなイベントは、米大統領選挙の行方、でしょうか。(一方で、日本の政局がどう転ぼうと、あまり大きくグローバル経済に関係なさそうな点は、国民として情けなく思います。)
追伸・・・
全く以て烏滸がましいのですが、例えば、今回小生が質問させていただいた様に、現在の状況におけるリスク要因は何なのか、そう言える状況証拠的な理由はなんなのか、という切り口で、タイムリーにご解説いただければ、我々素人には大変有用な情報となります。逆に言えば、山崎様の発信し得るコンテンツでもあるのではないかと思いました。
私なら、山崎様の『リスクに対するご見解がタイムリーに知り得る』コンテンツなら、ケータイサイトで月1000円払います(笑)
定期積み金が一番です。着実に貯まってます。
リスクもなく平穏でいられます。
欲張ろうとすると痛い目にあうのはいつの世も同じですね~
誠実で慎重派の日本人には今の世の中向かないんじゃないでしょうか?
本当に11年前の日本を思い出します。世界恐慌にならないように祈ります。 でも日本は大丈夫なような気がします。 若者はそれほど馬鹿じゃないと思います。 どんなもんでしょう? これからの日本は良くなりますか?
コメントを拝見いたしました。(ついこの前まで小職もその一員だった)“対岸のセルサイド(証券会社)”を眺めていて「ようやく不況らしい景色になったなあ」という感じです。ただし、豪証券会社マッコーリーやベルギー系KBC証券辺りの日本株ブローカービジネスが“バンザイ”していないので、まだ2002年頃の外資氷河期ほどでもなさそうです(今後燃え広がるのかな?という気がします)。
むしろ、残ったドイツ証券やクレディスイス証券、JPモルガン証券などは「リーマンの死肉(顧客)を漁る」行動に出ており(まあ当然といえば当然なのですが)、ある種葬儀屋ビジネスを見ているようで「商魂たくましいなあ」と感心しています。
「死ぬまで、がっつく」が社是の投資銀行らしいイロモネア・バトルは始まったばかりのようです。
話題は変わりますが「ウォール害」に対する規制は、銃規制でいう全米ライフル協会同様、ロビー圧力に長けているウォール害共同体に屈服する恐れがあるので、正面攻撃よりもゲリラ作戦の方が効果的かもしれません。
例えば、SEC辺りが、ウォール害から解雇された人員を確保して査察官にする等です。泥棒に泥棒の手口を聞き、それを査察に活用するのはありかなあと考えました。
考えてみれば、2002年の頃東京でも外資系からはみだしたヒトのうち、再就職先に恵まれず、ある日会ったら「金融庁の嘱託社員」になっているヒトがいました。かつての同僚は「よろしくやっている」のに、自分だけ「準公務員かよ」といった屈折した心理は、元同僚への逆恨み的憎悪になり、良い戦闘員になる傾向
があります。
かつての投資銀行の仲間達とはいえ(一部を除き)、その人間関係は微妙なものがあります(業者であるセルサイドから顧客サイドのバイサイドに移った場合に、かつての業者どもを「いびり抜く」なんてしょっちゅうですし)。
ひとまず、「近親憎悪」の逆利用というゲリラ戦法でウォール害を締めにかかるというのは、傍観していても楽しそうです。
最後にふと思ったのですが、ここいら辺りでムーディーズは米国のソブリン債の格付けを下げたら面白いのになあ、と思いました。不良債権処理に絡む多くの収支の最終集約先は米政府になったのだから、格下げする十分な状況的理由は「ある」と考えられますし、今後新発される米政府債を買うヒトって誰なのでしょう?(すでにドル債を「馬に食わせるほどもっている」ヒトが喜んで買うのでしょうか?)
日本政府も含め各国政府が「自国通貨建ての債券以外」でも担保として受け入れる方向で協議中とありましたが、サムライ債発行以上の壮大な円キャリーを発生させそうでびびっています。
ドルは基軸通貨というよりも、もはや「一蓮托生通貨」になったんですね。
ゴールドマンとモルガン・スタンレー、銀行持ち株会社に
【ワシントン支局】米連邦準備理事会(FRB)は21日、投資銀行のゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーに対し、銀行持ち株会社への移行を承認すると発表した。 (11:25)
との決定がもうされたようです。これから「お財布」を捜すのでしょう。
ともあれ、非常に大きな転機ですね。
以下は、ロイターニュースからです。
(ソースはこちら)
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPnTK826758320080922
[ワシントン/フィラデルフィア 21日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)は21日、証券大手ゴールドマン・サックス(GS.N: 株価, 企業情報, レポート)とモルガン・スタンレー(MS.N: 株価, 企業情報, レポート)が銀行持ち株会社に移行することを認めた。
これに伴い、両社は預金の受け入れと連銀貸し出しの利用が可能になる一方、FRBの監督下に入る。
金融市場の混乱緩和に向けた対策の一環。従来型の投資銀行モデルと決別することになる。
移行には5日間の待機期間が必要。移行後は、リテール銀行の買収が容易になる可能性もある。
関係筋によると、銀行持ち株会社への移行は、両社が申請した。
両社が受け入れる預金は、連邦預金保険公社(FDIC)の預金保険の対象となる。
両社はこれまで、FRBが時限措置として導入したプライマリーディーラー向け連銀貸し出し(PDCF)を利用できたが、銀行持ち株会社への移行後は、常設の連銀貸し出しの利用が可能になる。
これまでのところ、銀行持ち株会社は、証券会社に比べて資金調達面の問題が少ない。
ゴールドマンとモルガン・スタンレーは、銀行持ち株会社への移行後、自己資本比率規制の適用を受けることになる。
FRBは、両社への資金供給を増やすため、両社のブローカーディーラー子会社に対し、連銀貸し出しやプライマリーディーラー向け連銀貸し出し(PDCF)と同じ条件で、資金を貸し出すことにも合意した。
証券大手メリルリンチ(MER.N: 株価, 企業情報, レポート)のブローカーディーラー子会社に対する貸し出しにも、同じ担保条件を適用する。
ゴールドマンは同日、同社が4位の銀行持ち株会社になるとの声明を発表。FRBの規制下に入ると表明した。
貸出業務など、複数の戦略的業務の資産を「GSバンクUSA」に移す方針も示した。
GSバンクUSAの資産は1500億ドル以上となる見通しで、米銀上位10位の一角を占めることになる。
ゴールドマンは、買収や既存事業の拡大を通じて、預金ベースを拡大する方針も示した。
記事中の企業の関連情報は、各コードをダブルクリックしてご覧ください。
個人が知恵をしぼって、はした金をリスク分散して管理した、ところで、愛するのか、受けするのか、知らんが、国家さまが、ものすげーリスク(パツキンの偽装オッパイを見抜けない)をとりやがる、ばやいに、愛国者はどう行動すべきなのか、受国者はどう行動するべきなのか、偽装を許さないただのオッサンは、さーっぱり、わからんですね。リスクをとりすぎる国を捨てる、か、国にリスクをとらせない、か、一庶民にしては、面倒が多すぎますね、神に祈らず、とカッコつけた手前、やっぱ、仏にすがろうかと思うのですが。
アメリカ様ってーのは、梅毒持ちの商売女で、なじぇかデープスロートが国技なわけですね・・・、ここは場違いなので、ハウス、します。
同じような話に、車の残価設定ローンというのがあり車の価値が予想より上がれば購入者の得、下がってもディーラーが最初に決めた価格で引き取ってくれるのですが、これでアメリカの自動車メーカーは苦しんでます。
こういう金の無い消費者に無理やり消費させる為の手法を開発して、本当はリスクのある債権を他国の金融機関に売っているんですから困ったものです。
日本は事故米で大騒ぎですが、本当はリスクのある債権をトリプルAにする為に他の米(債権)と配合してリスクが顕在化しないようにして売ってしまうのですから、三笠フーズとたいして違いありません。
ということはあんまりアメリカだけ非難できないのかな。米屋さんも車屋さんも金融屋さんも同罪ですね。
マネーセンターバンクが何れもUBS(株主向けレポートで杜撰なリスク管理を白状しています)みたいな銀行になるとすると相当にリスキーで(既にそうなっていますが、数が増えるのでしょうか)、金融システム全体に悪影響が及ぶ可能性があります。
特に、GS、MSの場合は、元投資銀行の連中が主導権を取ったまま、銀行買収で預金を取り込んで徐々に大きくなるのでしょうから、リスクを取って荒っぽい商売をするけれども、大きくて潰せない、FRBもコントロール不能なモンスターが出来てしまう可能性がありますね。
ところで、両社は銀行としての条件を満たすためには、投資のレバレッジを落とさなければいけない公算が大きいと思いますが、さて、どのくらいの投資資産を圧縮するのでしょうか。場合によっては、何らかの影響が出るかもしれませんね。
そのインパクトがどのくらいになるのか、見当が付かず、当惑しています。ともあれ、うまくバランスを取って欲しいものです。
正直なところ、私は信条がスティグリッツ氏派(?)で、且つアンチネオコンであるため(??)、ウォール街の人間達がやることを応援する立場になるとは思いもよらなかったのですが、背に腹は代えられない、といった気分です。(深刻に腹立たしく思えない自分が、どこか情けなくもあります)
ふと思い出したのですが、このブログでも話題になった「日本版国家ファンド」、私は今こそ絶好のチャンス!なのではないか、もしかしたらそうだったりしないか、こないだまでにぎやかだったじゃん、と思ったりしたのですが。
あの熱狂的な時代はどこへ?(ジェーン・バーキンの歌でそんなのありました。業務連絡:memoま夫人、ぜひ口ずさんでいただきたい。)
日曜日の朝にあの方が健在であれば、今こそアメリカに代わってニホンがイニシアチブとって稼がなあかん、とか言うてくれたのでしょうか。
今こそお世話になったアメリカさんのカモになるべき時!負けて目覚める!のがブシドー、はダメですか?
ニュースで、英国の金融当局が投資銀行の報酬体系をなんらかの方法で規制することを検討している、というのを見ました。英国の当局は、山崎さんの指摘している問題点について明確に認識をしているようです。
ただ、具体的な規制方法ってどんなものになるのでしょうか?資本主義の活力を損なわずにうまく規制するのは難しいように思います。
日本版国家ファンド構想が今のところ沈静化しているのは結構なことですね。
もっとも、何となく、やっとこっちが買う側になったか!と歓迎されているような三菱のGSへの出資は、条件(普通株なら価格は?、そうでないなら利率とか転換価格は?)が気になります。
これがバフェットがGSから得た条件より悪ければ(今のところ明らかに質的にGS>MSでしょうから)いい笑いものです。
どうなんだろうか?
>しゅうん様
銀行本体はなかば公共インフラなのだから、報酬制度に至るまで規制していいと思います。そうでないと、税金投入はアンフェアでしょう(そのときになって仕方がないと納得は出来ても、不公平感は残る)。
ギャンブラーの側は、ハイ・レバレッジの相場師業務はヘッジファンドを作ってそこでやればいいし、M&A仲介のような業務は独立したコンサルティング会社でやればいいでしょう。
会社を分けると一応あるていどの「隔壁」ができるので、これを上手く使うべきでしょう。
投資銀行付きユニバーサルバンクが最もリスキーだと思います。
つまりはじめから不良債権。
ベアスターンズというもっともらしい会社が値段を付け
ファニーメイとフレディマックというもっともらしい会社が保証する。
壮大なただの詐欺ではないのか。
アメリカ様は詐欺を働いても永遠に不滅です、てか。
もっとも、こうした会社の従業員(私もその一員です)は、成功報酬のニンジンがあるわけでなく、経営者がIRの場等でのカッコよさを狙うという程度の動機でやったのでしょうが。
これと関連し、長銀の破綻処理で金融再生委員会のアドバイザリーに指名されたゴールドマンサックスに対して、『瑕疵担保条項の危険性を忠告する義務があった』と与野党から批判が集まった。このほか同社は、日債銀売却に際しても、買手側のソフトバンクサイドのアドバイザリーに就いていた他、長銀子会社の日本リース売却の仲介や日本ランディックの資産買取などに関与しており、利益相反の観点から批判があがった。2000年7月、国会は金融庁・金融再生委員会幹部職員、八代・新生銀行社長(当時)と共に、ゴールドマンサックス担当者も参考人招致をしたが同社はこれを拒否している。(ウィキ:新生銀行)
「業界1位」のGSは、日本の「不良債権処理」の時の、お雇い外国人兼辣腕ブローカーだった訳でしょうかね。当時は、素人ながら異様な凄まじさを感じました。
それにつけても、「業界1位」を「底値」で買う、バフェット流バリュー・長期投資にはアメリカ資本主義の厚みと凄みを感じますが、三井住友さんは変な手の挙げ方をしていますね?三菱UFJ、野村さんは、よほどのご精進が必要でしょうか。名前の聞こえない、みずほさんはたしか投資銀行業務にはお強いという定評があったような・・・。
小泉さんも苦労したんだなぁ、この訳の解らない国の国運を背負って・・・、ご苦労様でした。
今回のテーマである投資銀行のビジネスモデルとは関係ないのですが、質問させてください。
JMMで「減税を行って赤字国債を発行することが正しい政策でしょう」「財政赤字はむしろ足りないのかも知れない」と述べておられます。
一方、財務省のHPを見ると内国調査課長の矢野さんが現在の日本の累積赤字のGDP比は世界最悪であり、貯蓄率の低下傾向から金利上昇の懸念あり、すざましい利払費の増加が懸念される。国債累積残高は青天井ではない、と述べておられます。
過去10年間の現象として国債累積残高は年々増加しているが利払費はほとんど増えていないことから、赤字国債の増発にもプライマリーバランスの達成年度遅延にも特に政治家もマスコミも問題視しておらず我々もピンと来ませんが矢野氏の言われるようにある日突然かつてのロシアやアルゼンチンのような極端なインフレ、経済破綻が来るのではないかと懸念しています。万一そのようなことがあれば私のような年金生活者で働く体力も能力もない者はたぶん餓死するほかないでしょう。日本の63年前の状況です。
やはり「財政赤字はむしろ足りない」のでしょうか?
累積財政赤字は明らかに青天井でなどあり得ませんが、現在の水準が過剰なのか足りないのかは判然としません。(数ヶ月前に、ある主計官の方と議論しましたが、結論は出ませんでした)steandchenさんも考えてみてください。
そもそも金融システムのためには政府の債務はある程度の量必要であり、累積政府債務がゼロで国債が無くなるようなの状況がいいわけではありません(そういう運営もあるかもしれませんが、現在の制度では富不都合でしょう)。
政府の累積債務は、多いか・ピッタリか・少ないかのいずれかですが、この判断は一筋縄ではありません。
「不足かもしれない」という立場の状況証拠を挙げると、(1)GDPデフレーターベースで日本はデフレであり、特に生産者にとっては、まだデフレを脱却したとは言えない、
(2)何よりも現実に低金利でも(投資家にとっては消費者物価が問題ですから、現在の長期金利は実質マイナスの低金利です)国債を買いたいという需要が豊富にある、
という二点でしょう。
上記は、現在の日本人のポートフォリオ選択行動に照らして考えると、国の債務(≒国債)の供給量がまだ不足なのかもしれないと思わせる状況です。
政府の債務が本当に大きすぎて問題なら、金利もインフレ率ももっと高くていいのではないでしょうか。デフレとは政府の債務に対する過剰な信認です。
また、デフレ経済のままで、国債金利だけが5%とか6%になることは、絶対とはいいませんが、起こりにくいことです。デフレ状態で、いったい誰が、そんな金利で投資しようと思うでしょうか。
高金利になるには、資金需要が必要ですし、これは好景気ないしインフレを伴うでしょう。その場合、財政収支は改善します。財政破綻のリスクを強調する論者は、いきなり長期金利が上昇するようなほぼあり得ない状況を想定しがちであるように思えます。
他方、GDP比だけで累積政府債務の深刻さを測ろうとする考え方には問題を感じますが、日本政府の債務が大きすぎる可能性もあります。
厳密・絶対というレベルでは、どちらとも決めがたいということなのですが、デフレ的であることと、長期金利が低いこと、国債が大半国内で消化されていることを考えると、金融緩和を有効に働かせるためにも、当面財政赤字を作っても(財政出動でではなく、減税でですが)いいのではないか、というのが、現在の私が賭けている意見の方向です(自信はありませんが、どちらかに決めなければなりません)。
天井はいずれあるとしても、現在はそこに達していないので、財政均衡達成のプライオリティーは低いのではないか、減税をして様子を見ていいのではないか、という判断です。
逆に今、増税で財政均衡を急ぐと、経済活動の収縮を招きそうです。尚「埋蔵金の活用」はそれ自体が政府の効率化としていいおとでしょうが、それだけ政府の資産が乏しくなるので、将来の国債発行や増税を期待させるので、金融市場に与える影響は、国債発行と似ていると思います。
通貨も国債も金融市場も人工的な構築物なので、使用目的に合わせて、調整しながら使う必要があるのでしょう。しかし、正確な情報と判断は難しいので、手探りでなるべく無難な道を選ばなければいけないのが難しいところです。
丁寧なご回答ありがとうございます。
折角のご説明ですが、私は不勉強で山崎さんの仰ることが十分に理解できません。ご勘弁ください。
現象だけをみれば、現在の累積財政赤字は過剰ではないと思います。
内国調査課長の矢野さんの説明では家計部門の貯蓄率が1990年代初頭15%だったのが2005年には3.1%まで低下しており、団塊世代のリタイアと共にいずれマイナスとなる見込み。家計が貯蓄を取り崩せば、銀行は企業に融資の返済を迫らざるを得なくなる。従来、銀行は民間から預かったお金で国債を買ってきており(企業向け貸し出しが低調だったことも原因)、これが財政赤字をファイナンスしてきた。
高齢化社会の進展により貯蓄率マイナス経済になれば誰が財政赤字をファイナンスするのでしょうか?現在「低金利でも国債を買いたいという需要が豊富にある」とのことですが、将来、銀行や保険会社の資金が減れば国債への需要は減少せざるを得ないのではないでしょうか?
そうなれば外国人に買ってもらうのでしょうか?外国人投資家に買ってもらうとすれば他の国との比較で圧倒的に累積財政赤字の多い日本国債を現在の利回り水準で買ってもらえるでしょうか?金利を上げなければ買ってもらえないのではないでしょうか?
矢野さんによればアルゼンチン、ブラジル、ロシア、スェーデン、英国はDGP比50~70%で経済破綻したそうです。日本の高齢化は年率3~4%と世界一だそうで、早く対策を講じないと5年もしないうちに日本経済の破たんが来るのではないかとの懸念をもっています。
私が40年ほどまえに家を買ったときの住宅金融公庫の金利は30年間固定で6.5%でした。当時の民間銀行の融資は10%を超えていました。今のような超低金利状態は歴史的にも例外的な期間といえるのではないでしょうか?
個人的には、年金生活をしておりますので多少でも預金金利が上がってもらうとうれしいのですが、それにより1000兆円の国債の利払いで税収が吹き飛んでしまう、日銀券を増発するなどといった事態になることを懸念しております。
NYタイムズの記事「Breakthrouth reached in Negotiations on Bailout」お読みになったと思いますが、28日朝に7000億ドルの不良資産買い取りについて、政府(Henry M. Paulson Jr.)、下院議長(Nancy Polosi)、下院共和党代表(John A. Boehner)で合意が成立、徹夜で法案作成し月曜日の下院での投票・可決の段取りとなったそうですね。
なんとかこれで明日からの東京の株式相場も持ち直してくれることを祈ります。
blogだから~っていうのはどういうことでしょう?
公開されているのだから同じと思います
7000億ドルの不良債権買取法案について下院側から政府に対し「goloden-parachute severance packageを退職する役員に与えない」ことを明記する条文を入れるよう要求したそうで、やはり高額な役員報酬がアメリカでも問題になっていたのようです。在職中も従来のような馬鹿げた手当はもらえないでしょう。
ジョージ・ソロス氏はサブ・プライムで全く被害がなかったそうで、「自分には金融工学が理解できなかったので投資しなかった」と述べています。日本のバブルでもわけの分からない理由でPERが異常に高騰しましたが、みなこれで大損害を蒙りました。
JMMで山崎さんがお書きになっているように次はエコ・バブルかもしれません。
One on shore, pray no more (いったん岸にあがれば、もはやお祈りしない)ということわざがありますが、日本流に言えば「のど元過ぎれば熱さを忘れる」ということで、バブルはマラリヤ(cycle fever)のようにやって来るのかも知れません。
>商業サイトや紙に書く原稿とここはどう違うんですか?
「ここ」は普段着、商業媒体では「よそ行き」というくらいの違いがありますが、私の意見自体はどこでも同じですし、守るべき表現の大原則(嘘はいけない、不適切表現はダメ)も同じでしょう。
ただ、ブログの場合、表現の自己規制や原稿の完成度については、いくらか意識的にハードルを下げています。
たとえば、丸川珠代さんが嫌い、星野仙一さんが嫌いというような話は、他媒体では根拠をあげて叩くことはあっても、要は、私は嫌いなのだというような書き方や発言はしないでしょう。ブログでは、意識的に少し「油断」することにしていますし、少しストライクゾーンから外してみることがあります。
公に認められている媒体に、ましてお金を貰って書いたり話したりする場合と、基本的に読者に対して「気に入らなければ来なくていいよ」という前提のブログに書く場合とでは、いくらか発言の前提が違ってもいいのではないかと思っています。
結局、違うと言えば違うし、違わないと言えば、そう違いませんね。
ここのエントリーは結果的に他媒体の原稿の下書きあるいは議論の叩き台であることもありますし(無断の二重投稿はしませんが、内容には重複がある場合があります)、他媒体に発表するあてのない内容をここにUPするということもあります(たとえば焼鳥屋の話のように)。いずれにしても、このブログのエントリーは「未完成原稿」だと思ってUPしています。