El Camino de UK

旅とサッカーを中心に、備忘録として思いを綴っていきます。

号泣~Dusseldorf (Germany)

2004-10-02 | Europe
 10月2日。デュッセルドルフは日系企業が多いことで知られ、ドイツで最も多くの日本人が暮らす街だともいわれている。当初の予定では、この街を訪れることは考慮に入れてなくて、寝床確保のために来たようなものだが、実際に来てみると緑が多くとても良いところ。
 ドイツの一大商業都市であるにも関わらず、写真のような緑豊かな芝生の公園が多いことに驚いた。僕はユースホステルのチェック・アウトを済ませ、ライン川沿いの広大な公園をバッグパックを抱えのんびり歩いた。
 気持ち良さそうにジョギングする人、子供や犬を連れて楽しそうに散歩する人。このような豊かな自然の恵まれた環境で暮らしている人たちを見てつくづく羨ましく思う。緑の芝に癒され、午後からは初の欧州サッカー観戦が待っている。僕は意気揚々とした気分でデュッセルドルフ駅へ向かった。
 しかし、そのデュッセルドルフ駅でこの旅最大の事件が勃発することになる。

 駅に着き、僕はドイツ鉄道(DB)の切符売り場、日本で言うJRの”みどりの窓口”で、デュッセルドルフ発ドルトムント行きと、夜行列車のドルトムント発ベルリン行き(指定席つき)の乗車券を合わせて購入した。
 しかし、売り場の出口を出てすぐに異変があることに気がついた。ヨーロッパの鉄道の切符は大概乗車券と指定席券と分けて発行される。つまりドルトムント発ベルリン行きの切符は乗車券と指定券の2枚ないといけないのだが、1枚しかないのである。
 たまたま今回の切符は一緒になっているだけだと信じてホームへ上がったものの、よく確かめてみると、ドイツ語は分からないが料金のところには3EUROという数字しか書かれていない。要するにこれは指定席のみの切符で、乗車代金は含まれてなかったのである。

 僕は少し頭にきて、改めて乗車券を発行してもらうためにホームを駆け下り、切符売り場へ。しかし売り場は長蛇の列。苦情を言おうにもまた一から並ばないといけない。
 するとその長蛇の列に並んでいたメグミさんという日本人女性と出会った。彼女はデュッセルドルフ在住で今フリーランスの仕事をしており、今日は日本からやってきた親戚のご家族と一緒にこれからケルンへ遊びに行くのだという。
 僕は彼女に事情を話し、ドイツ語が話せない僕に代わって駅員に説明してくれるようにお願いした。彼女は僕の頼みを快く承諾してくれ、男性の駅員に説明してくれたのだが、乗車券は発行させてもらえなかった。
 メグミさんの話によると、駅員は「それはできない。切符が欲しいのならもう一度買い直してくれ。」と言う。メグミさんが食い下がると、駅員は堂々とした態度で、「僕には関係のないことだ。文句があるのなら彼が切符を買ったあの駅員に聞いてくれ!」と言われたらしい。

 僕らはやむを得ず、僕が切符を買った駅員のカウンターの列に並んだ。駅員はドイツ代表GK、オリバー・カーンの女性版ともいえる厳格な目つきをした体格の良すぎるオバさんだった。半分あきらめムードで落ち込むまま僕らの順番が回ってきた。
 メグミさんは毅然たる態度で女性駅員に話しかける。予想通り駅員・女カーンもそれに怯むことなく強硬な語り口で捲くし立てる。
(女カーン)「私はちゃんと乗車券も渡しましたよ。履歴はコンピューターに出ています!切符はどこかで落としたんじゃないですか?欲しかったらもう一度買ってください!」
(メグミさん)「彼は買ってからすぐに乗車券がないことに気づいたと言ってます。だったらそのコンピューターの記録見せてください!」
(女カーン)「それはできません!規則ですから。」

 そんなメグミさんと女カーンとのドイツ語の激しいバトルが20分ぐらい続いただろう。僕は彼女たちの口論を黙って見ていることしか出来なかったが、全く見ず知らずの日本人の旅人である僕のために、親戚との楽しいケルン観光の時間を削ってまで、必死になって僕を助けようとしてくれているメグミさんの姿に、申し訳ない思いと感謝の気持ちで一杯になった。
 結果的にドルトムント発ベルリン行きの乗車券は発行してもらえず、支払った65ユーロを損失することになってしまった。貧乏旅行者の僕にとって65ユーロはユースホステルの宿泊費4日分に相当する大損害である。

 完全にドイツ人不信に陥り、さすがに落胆の色が隠せなかった。落ち込んでいる僕にメグミさんの親戚の方々が寄ってきて、「兄ちゃん、若いのに一人で外国に来るなんて度胸がいいよ。俺ならとてもじゃねぇけど一人でこんなとこ来れねぇなぁ。」「一人で一ヶ月も旅行?すごーい。がんばってください!」と僕をひたすら元気づけようとしてくれた。
 「きっとこれからいっぱい楽しいことがあなたを待ってるから、元気出して前向きに頑張ってね。」最後にメグミさんのこの言葉を聞いた時は、もう溜まっていた感情が抑えきれず、涙が溢れ出てきてその場で人目を憚らず号泣した。
 ドイツ語はおろか英語すらまともに話せず、駅員を説得することができなかった自分に憤りを覚える悔しさもあったのだが、この時はメグミさんや親戚の方々の優しさに触れ、それに対する嬉しさの表れとなった号泣だった。本当にありがとう。僕は親切にして下さった彼らのことをこれからも一生忘れることはないだろう。

 旅行者の中には全財産を盗られたり、パスポートやレールパスを紛失するなど、僕より大きなトラブルに遭う人もいる。65ユーロの損失は最小限のトラブルだったと考え、これからあのような事件に遭わないためにも気を引き締めて前向きに行こう。
 旅はまだ始まったばかり。メグミさんの言う通りこれから楽しいことがたくさん待っているのだから。ケルンへ向かうメグミさん達と別れ、気持ちを切り替えサッカーの街・ドルトムントへ向かった。

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10/02(土)①デュッセルドルフ

06:30 起床
07:00 朝食
09:00 デュッセルドルフYH、チェック・アウト
09:20 ライン川の芝生の公園をのんびり散歩
10:00 デュッセルドルフ駅到着
10:30 切符の異変に気づく、売り場でメグミさんと出会う
11:30 メグミさんと親戚のご家族と別れ、デュッセルドルフ駅出発

  


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