ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

これが私の職業なのです。

2011年03月16日 | 音楽

11日の地震以来、大変な事態になっています。東北は当方の出身地。実家の秋田も被災しましたが、数日間の停電で済み、それほどの被害はなかったようですが。太平洋側の惨状には、本当に言葉を失うほかありません。

それにしてもニュースを見ていると、どんどん心が暗くなってくる。これまでの災害と圧倒的に違うのは、終わりが見えない事ですね。余震、原発、計画停電に交通規制…と不安要素がいつまでたっても無くならない。得体のしれない疲れが、澱のように体にたまってくるようです。皆さんもそうではありませんか?



正直、今回のコンサートは中止にするつもりだったのです。

とりわけ毎日のように続く余震、そして交通遮断で、メンバーはもとより、お客さんに迷惑をかけたらどうしよう…という気持ちで。とりわけ、観客やアシスタントとして来る予定の学生たち。音楽家であると同時に当方、教員ですから、もし万が一の事があったら親御さんにお詫びのしようがないではないか。いや何か起きた時、家に置いてベビーシッターさんにお願いしている我が子はどうなる…!?不安はふくらむばかり。

マンションの隣人は、4駆の車にアウトドア用品をごっそり積み込んで、家族4人で疎開していきました。友人知人の中にも、しばらく東京を離れる方が増えてきました。街もツイッターのタイムラインも、もはや放射能パニック前夜という感じですね。



とにかく、リハーサル・スタジオでメンバーにも中止、いや「延期」を告げて「ま、しかし、いずれ演奏会は開くから、とりあえず準備した曲だけは合奏してみようか」とリハを始めたところ、どんどん熱くグルーヴしてくる。いやあ、やっぱり俺の目に狂いはなかった。今回のバンドは初めての顔合わせだけど、楽しすぎる!

「音楽で人を救える」などと大それた事は言いませんが、少なくとも演奏している自分にとってはその間、完全に「自由」な時間でした。

帰り道は「でも中止か…」となんとも嫌な、暗い気分でした。何事かを終えた脱力感ではなく、何事をも結局はなし得なかった、敗北感。その旨を伝えに、お店に電話したところ「え…それは…。お店としては、こんな時だからこそぜひやりたいと…」実はお店も、震災以来全ての公演が中止になっているんです。「でも、そうおっしゃるのでしたら、こちらとしてはどうしようもありませんね…」と店長は淋しげ。

電話を切った後も、嫌な気持ちだけが溢れて、ぼーっと座っているだけだった。このままだと、本当に何もできなくなりそうな気がした。

「よし、やるか!」もう一度お店に電話をかけ、キャンセルをキャンセルしました。あわててメンバーや音響さんにも「その後、別の予定いれてない?」と電話かけまくり。一度キャンセルしたスタジオももう一度とり直し。めちゃめちゃバタついたけど、今度はさっきのような「嫌な気分」はみじんもありません。

「なあに、考えてみれば普段ライヴやってたって、その瞬間大震災が起こらないなんて保証はどこにもないんだ」と腹をくくったら、どうせならこのライヴで、もう自分のできる事は全部やってやれと思えてきました。

何度も言いますが、人を救おうとか、励まそうとか、そういった事ではないんです。まず自分自身、そして観にきてくれるお客さんが、いっときこの現実を離れて、自由な時間を過ごせれば、十分なんです。

そして演奏をUstreamで完全生中継する事も決めました。これも実は、来場をためらっている人が「中継があるなら行くのやめよう」と来なくなっちゃうんじゃないか、という弱気な気持ちで躊躇してたんです。でも、来ないなら来ないでかまわない。それよりも一緒に音楽を共有してくれる方が一人でも多いほうが、少なくとも今の僕には嬉しいのです。

もちろん、来られる方はぜひご来場下さい。配信では絶対に味わえないナマの空気を、一回限りのはかない時間を、一緒に共有しましょう。ひょっとしたらギリギリになって、国家非常事態宣言のようなものが出され、永遠にその時が失われるかもしれませんが、その時はその時、です。



では明晩、西麻布でお待ちしております。
いらっしゃれない方も、中継画面でお会いしましょう。

ヲノサトル・ムードコア・エクスペリエンス

ustream中継はこちらから




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