恵比寿の「さいき」で、ゼミ卒業生の岡本くんと呑んだ。
「さいき」は不良先輩テラシィイさんに教わった名店。1人客がカウンターにぽつりと座って、静かに杯を傾ける…という、典型的な「渋メの居酒屋」。
…と記憶していたが、今夜はぎっしり満員で、わいわいがやがやとまさしく「居酒屋」的な熱気。まるで立ち呑みのように身体を半身にしないとカウンターにも座れない盛況ぶりだ。
岡本くんは新卒で入った広告会社を8ヶ月でやめてフリーランスの映像作家になったという。就職不況のこのご時世に、なんとも剛の者ではないか。
まあアーティストならどのみち、いつかはそういった決断をしなければならないわけだが。
彼は先頃の文化庁メディア芸術祭をはじめ、既にあちこちで立派な賞をとっているので、見切りをつけるのも早かったようだ。
それでまあ、今後のことでいろいろ相談したい…とメールを受け取ったのが昨年の暮れ。こちらも身辺いろいろ忙しく、実現までに時間がかかったけれど。前途を祝して乾杯。
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多摩美での教員稼業は、非常勤時代を含めて8年ほど経つけれど、卒業生とサシで呑むのは初めてじゃないだろうか。
大学でのぼくは昔で言うところの「パンキョー」すなわち教養系の部署に所属している。それなのに「ゼミ」をやっている。1年間限りの演習科目の総称として、課程上そう名づけられているだけなのだが。
大学と言えば4年間、決まった先生のゼミに所属して学問を積み上げていく…という昔ながらの大学をイメージしている方には、ちょっと不思議に思われるかもしれない。
自分としては大学を「授業」という枠で捉えていない。「単位が出る"部活"」とでも言おうか?大学という場所を間借りして、期間限定の私塾をやってるようなものだと考えている。
学生の方も、油画とかデザインとかいった本来の所属に関係なく、美大に籍は置いているけど実は音楽がつくりたい!とモチベーションの高い連中が集まってくる。毎年じつにユニークな顔ぶれ。「音楽家」にはできない発想がぽんと出てきたりする。そこが面白い。
彼らも、自主的に集まってはライヴやったり、バンドつくって学園祭に出たり、卒業生どうし呑んだり、「授業」の枠を超えて交流しているようだ。こちらは内心しめしめ狙い通りとほくそえんでいる。
やっと入試業務が一段落して(まだ終わっていないが…)ホッとしたが、すぐに新学期となる。科目名は変わらなくとも、毎年決して同じ展開にはならないのが、この「ゼミ」の楽しみ。来年度はどんな学生たちと出会えるか、今から楽しみだ。
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