ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

[配信] FRAGILE

2011年03月17日 | 音楽
FRAGILE / Satoru Wono

composed, arranged and produced by Satoru Wono
cello:Seigen Tokuzawa
all keyboards and piano: Satoru Wono
Copyright © 2011 Satoru Wono All Rights Reserved.



突然ですが、作品をYOU TUBEで発表しました。公式に発表する「新曲」としては、なんと約8年ぶり。まるでコールド・スリープから解凍されて目醒めたような、不思議な感慨があります。

その間、もちろん職業作曲家としては依頼された映像音楽や商業音楽を制作していましたし、ちょっと前からは「PLEASURE CHANNEL」名義でハウスミュージックのリリースも始めていましたが。ヲノサトル名義で新作を発表するのは、本当に久しぶりです。

2008年に妻が急死したことは、大きな衝撃でした。

それから長い間、曲を作ることが全くできなくなりました。もちろん一人で息子を育てるのに必死で、物理的に時間がなかったという事もありますが、それよりも、音楽に向かう意志のようなものが、全くなくなったのです。

でもしばらくたって、ポツリ、ポツリと、子どもが寝静まった夜中に鍵盤を弾いては譜面にスケッチする作業を始めました。ある種のリハビリのように。その、いちばん最初に書き留めたシンプルな和音の連続から生まれたのが、この曲です。

「死」は僕たちのすぐ隣に、いつだって静かに佇んでいます。それは特別なものでもなんでもない。むしろ、ごく当たり前のものとして受け止め、何も考えずに暮らしているこの「生」の方が、実は綱渡りのような奇跡なのではないでしょうか。そして、だからこそこの脆くて儚い生が、輝かしく貴重に感じられるのです。fragile(壊れもの)というタイトルは、そんな思いでつけました。

今回の大震災は、我々の生活や人生が一瞬にして崩れるという「現実」をまざまざと見せつけました。けれども人間には「現実」を乗り越える力があります。音楽、そして全ての芸術文化は、人間をこの「現実」から飛翔させ、自由にさせるためにこそある、と僕は思うのです。

言葉やメッセージを伴った音楽で人を慰めたり元気づけたりするのは、それが得意な音楽家におまかせします。僕は音楽が持つ、人間の自由なイマジネーションを広げてくれる力、言葉にできない感情をダイレクトに伝える力、そして心を包み、支えてくれる力を信じて、この器楽曲を発表します。音楽のそのような力を必要としている方に届くことを願いつつ。



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ヲノさん、ありがとう。 (畑祥雄)
2011-03-18 05:55:48
ヲノさん、ありがとう。
IMIや図書館の関係する人々の間でこの曲が回っています。アートの力で少しでも心が通じ合える社会になることを願っています。5月には図書館を広げます。街づくりの中にアートの力を沁み込ませることができ、野菜を水耕栽培で育て被災地に送り、過疎地の旨いもんを市民に届けます。晴耕雨読な空間を創れることになりました。ようやくです。IMIの精神が社会のお役に立てることができるようになりました。これからもよろしくお願いします。
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こちらこそ (ヲノサトル)
2011-03-19 02:46:12
まことに恐縮です。
そして同時に、とても嬉しく思います。
大げさに言えば、これからの「創造物」のあり方、伝え方について
まとまらないながらも色々考え、新曲をこういう形で発表してみました。
そんなこんなを、またゆっくりお話したく思っております。

今後も、どうぞよろしくお願い致します。
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fragile 聴きました。 (harumi)
2011-03-19 22:53:49
10年ぶりくらいでしょうか。
覚えてらっしゃらないかもしれませんね。

fragile聴きました。
大切な人を亡くされてからのヲノさんの
心を見ているかのようで、
途中から涙が止まらなくなりました。

大切な人との日常が、失う恐怖・不安と
いつも隣合わせにあるのかと思うと、
恐ろしくて心が壊れてしまいそうで・・・

自分も今、主人と2歳の娘を持ち、
あらためて家族(親兄弟も含め)の
存在の大切さと有難さを
実感するようになりました。

最後まで曲を聴いて、心に射した光を
感じた気がして、少し安心しました。

ヲノさんの音楽を待っている人は大勢います。

あなたの心と音楽に、
温かな光がたくさん射しこんできます様に。

harumi from kyoto





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偶然にみつけました (moon ikeda)
2011-03-23 09:13:14
ヲノちゃん、覚えているかわからないけど、15年くらい前にケソとよく飲みましたね。ヲノちゃんとケソと渋谷でテキーラスラマーで記憶喪失して、目が覚めたら自宅のベッドだったことは私の東京時代のピカいちの思い出。2000年に渡英して以来すっかりご無沙汰してます。

何の因果か今回の震災&原発問題をきっかけに放置してたtwitterを使い始めてヲノちゃんをみつけたのですが、ウエブサイトのプロフィール頁で、この曲を先程聴きました。何の前情報もなしにいきなり耳に飛び込んできたのに、涙が止まらなくて。。。このページに行き着いて、曲が出来ていった経緯を知って、衝撃を受け、コメントしてます。
音楽はすごいねー伝わるもんですね。

ライブの方も聴きました。震災&原発で東京の家族や妹達の赤ちゃんを思うと、心配でたまらなくて、寝ずにネットでリサーチする日々だったのだけど、「こんなときだからこそ、身なり整えて行こう!」と気づかされたよ!オンナ捨てきってたから、このところ。

次に里帰りするときは渋谷で飲もう!
ちなみに、私も息子(4歳)がいるのです。お互い、人の親になったわけですネ。楽器博物館で、親子デートどうですか?

当時、酔っぱらって奥さんのことのろけてたヲノちゃんを思い出しながら。。。

ロンドンより愛を込めて
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典子 ()
2011-04-14 16:16:04
オノさんが、深い音楽活動に邁進されてる過程のこのブログ内容に衝撃を受けました。イマジネーションの世界は一般に共感し難いものだと思いますが、勝手ながら、これからの作品に閃きや感動が呼び起こされるか、共感できるか知っていきたいです。楽しみにしております。
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コメントありがとうございます (ヲノサトル)
2011-05-16 15:07:23
>harumi 様
京都METROに通ってた頃の事でしょうか…だとすれば10年ぶりぐらいでしょうね(微笑)メッセージありがとうございます。言葉を励みに、作り続けます!

>moon ikeda 様
ツイッターでも出会えましたが、ムーンちゃん久々ですね。人の親になると、人生変わりますよね(笑)英国の育児事情もご教示下さい!

>典子 様
ありがとうございます!ご期待に沿えるよう精進してまいりますので、これからもお聴きいただければ幸いです。
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お久しぶりです (Yuichiro Imamura)
2011-07-08 02:40:54
教え子の今村です
ご無沙汰しております。

新曲、素敵な曲ですね。
異常にシミました。シミた!

発売楽しみにしております。
また是非お酒をご一緒したいです。

ご健康には気をつけてくださいませ。

すいません大したコメントじゃなくてw
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コメントありがとうございます (ヲノサトル)
2011-09-04 06:17:55
今村くん久しぶり!
シミて良かった(笑)
これからもよろしく!
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