ヲノサトル責任編集・渋東ジャーナル 改

音楽家 ヲノサトル のブログ

★ あわいの力

2014年03月17日 | 日常
千駄木の書店「古書ほうろう」さんで、トークショーをやってきました。

お相手は下掛宝生流 能楽師の安田登さん。

この方とは、ここのところツイッター友だちという感じでカジュアルにやりとりさせていただいていたのですが。最近出版された『あわいの力 -「心の時代」の次を生きる』という本がめっぽう面白い。



「あわい」とは「間(ま)」の事を言う古語。この本では、お能や「あわい」の視点から心と身体の問題をとりあげ、頭でっかちな文字文化を超えた「次の生き方」が模索されています。

「これって音楽で言えばこういう事だよな…」と頭の中にどんどん補助線を引きながら、つるっと最後まで読んでしまいましたが、読み終えてからもどうもその興奮がおさまらない。これは著者と直接話すしかないだろう!

…と盛り上がっていたところ、アルテス社のスズキさんがなぜかオーガナイザーを買ってでてくれて(版元でもないのに・笑)2人のトークショーが実現したというわけです。実際はトークショーというか、安田先生に当方がいろいろと教えていただいたという感じだったけど。

おかげで、今までほとんど未知の世界だった「お能」の世界がぐっと身近になりました。「能はリハーサルしない、ぶっつけ本番」とか「能は間違えても止まってもかまわない」「能では演奏中に楽器が壊れたら"口真似"で演奏を続ける」とかね。「え~そうなんだ!」と驚く裏話が満載で。

「能」って歌舞伎みたいに「演劇」の一種だと思っていたんだけど、全くちがうんですね。いちばん近いのはジャズ。ジャズがスタンダードナンバーという「お題」を使って集団即興を展開するように、能は「曲」(物語)を使って集団即興するという。しかも各パート(シテ、ワキ、大鼓、小鼓、笛)それぞれ1名ずつなので、西洋音楽で言えばオーケストラではなくコンボ・バンドみたいな自由度の高いアンサンブルなのだという話。

その場で能の発声を実演もしてくださったのですが、一声発した瞬間に場の空気がピシッと「ここならざる場」に変わる。まさに能の持つ幻視の力、見立ての力を体感。

さらには当方の電子音楽作品『舞踏組曲』を流しながら能の発声でシュメール語の朗唱を実演してみせる安田さん。電子音楽+能+古代語?何その組み合わせ?とお思いでしょうが、これが意外にも、見事なハマり具合。書店の一角に突然、悠久の時を超えた神話的世界が立ち上がるではありませんか…!


(撮影:古書ほうろう)

どんどん脱線しながら話は様々な領域に広がり、あっという間の2時間。

うーん今や猛烈に、能が観たくてたまらない!!

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