子宮頸部腺がん でも ママになりたい

突然のがん宣告。赤ちゃんを授かる日はくるのだろうか?

診断の日

2009年04月19日 | 検査
手術も受けてしまい今さらという感じですが、診断された日のことを書いていなかったので、回想を続けます。


<2009年3月31日>

コルポ診の結果を聞く日。
明日から4月だがまだ朝晩は冷える。ウールのジャケットを着ることにした。
ダンナもスーツにラベンハムを羽織る。

昨晩は意外とよく眠れたが、中待合室に入るとやはり緊張して胃が痛くなった。
(もし子宮摘出なんて話になったら・・・・・・。)
考えるだけで頭がクラクラした。

順番がきて診察室に入る。今日はO先生だ。
ベッドの下から予備の丸椅子を出してくれ、ダンナがそれに座る。
狭い診察室の中、ほとんど膝がつくような近さで先生が口を開いた。

「こないだのコルポ診で4箇所の組織を採ったんですが、そのうちの3つには異常は見つかりませんでした。」
「はい。(残りの1つは?)」
「ですが、残りの1つから悪い細胞が見つかりました。テツさんの場合、粘液性の腺がんと思われます。」

「腺がん」
はじめて耳にする言葉だった。
それがどういうものなのか、どれぐらい悪いものなのか見当もつかない。

先生は続けた。
「子宮頸がんは、組織のタイプにより『扁平上皮がん』と『腺がん』に分けられます。扁平上皮がんは全体の70~90%で、腺がんは10~30%という少し稀なタイプなんです。『腺細胞』という細胞にできるもので。」
「はあ。」
重大性がまだ理解できない。
「腺がんの場合、治療が比較的難しくて、扁平上皮がんよりも1ステージ先の治療をすることになります。ただ、腺がんには放射線が効かないので、化学療法ということになるんですが。」

化学療法。

なんか漠然とした呼び方だけど、つまり「抗がん剤」ってこと?
え、なんで。
前の病院では超初期って言われたよ。なのになんで抗がん剤がの話が出てくるわけ?
抗がん剤って、あの吐き気をもよおしたり髪が抜けたりするやつでしょ?
その治療を受けるの?わたしが?なんで?

頭と顔がカアッと熱くなり、気がついたら涙が出ていた。
「腺がん」なんて知らない。そんな知らない病気なの、わたし?

先生は説明を続けているが、一切耳に入ってこない。ただ、心配そうな顔でこちらを見ているのは認識できた。
私が黙りこくったので、泣いているとダンナが気づきハンカチを差し出してくれた。
BEAMSのロゴが入った水色のギンガムチェック。
ダンナはハンカチをいつもお尻のポケットに入れているので、差し出されたハンカチも生温かかった。

Hレディースクリニックで高度異形成が見つかってから今日まで、私は泣かなかった。
気丈に振る舞っていたというよりも、泣く感覚が麻痺していたのだと思う。
しかし、この予想外の診断に、私の涙腺は全開してしまった。
先生の説明に相槌を打ちながらも、ビームスのハンカチで涙をぬぐう。

「とりあえず今度の手術の結果を見て、もう一度手術するのか、化学療法を組み合わせるのか、今後の方向性を決めますね。テツさんはとてもお若いし、将来的に子どもを産めるよう産婦人科全体で治療法を検討しますから。」
O先生は今日も大きなマスクをしていた。その上にある大きな瞳が、まっすぐ私を見ていた。
私は大きく頷いた。自分を納得させるために、2回、3回と頷いた。また涙があふれてしまう。

ひととおり検査結果の説明が終わったあとは、入院と手術の説明だった。
本当なら外来以外の時間(お昼ごろ)に来て説明を聞くらしいが、そう頻繁に仕事は休めない。
この日はせっかくダンナも一緒だったので、先生はこのあとの診察に影響がないことを確認してから、引き続き説明してくれた。

- 手術は全身麻酔になる。自発呼吸ではあるが、呼吸を確保するために器具を入れるので、手術のあとに喉がイガイガしたり声が出にくくなったりすること。
- 手術のあと、その日は動けないので、尿カテーテルが入ること。そのためにいつもトイレに行きたいような感覚になること。
- 半日ほど寝たきりになるので、血のかたまりができやすいこと。それを解消するために「弾性ストッキング」を履くこと。そして手術の翌日は朝からガンガン歩くこと。
- 手術は電気メスで止血しながら行うので術後すぐの出血は少ないが、止血した部分のかさぶたが剥がれたときに出血が多くなること。無理をすると大出血して救急で運ばれることになるので、術後1~2週間後の無理は禁物であること。
- 予期しなかった血管の疾患により出血が止まらず、出血している臓器(この場合は子宮)を摘出せざるを得ないケースもあること。(非常に稀ではあるが、過去にひとりだけいたので合併症として説明しているそうだ。)

主な合併症について書かれた説明書を渡され、署名をして当日持参するようにとのこと。
また、入院前の検査として血液検査、胸部レントゲン、心電図が必要とのことで、この日にまとめて受けることになった。
血液検査ではHIVの検査もするとのことで、自費負担になることの同意書にその場で署名した。

そんな事務処理をしているうちに、気がついたら涙は乾いていた。

入院1日目の夕方に麻酔の先生の回診があり、その際に体重など必要な項目を聞かれるらしい。
手術は2日目だが、時間は決まっていないそうだ。朝一の人は決まっているが、そのあとは前の人が終わってから順次、という感じらしい。
今の予定だと恐らく午後、それも15時から16時ごろになるのでは、とのことだった。

(待ち時間が長いのはイヤだなぁ・・・・・ま、その分寝たきりになる時間が短くなると思えばいいか。)

「説明は以上です。あとで、当日の持ち物や注意事項について看護師から説明します。なにか不安なことや分からないことがあったら、婦人科の外来に連絡してくださいね。」

立ち上がろうとしたところ、それまで黙って聞いていたダンナが急に口を開いた。
「あの、以前の説明では進行していれば検査のときに肉眼で分かるということでしたよね。それは腺がんでも同じなんですか?」
「そうですね。進行していれば、扁平上皮がんでも腺がんでも見た目で分かります。」
「で、今回は見た目では分からなかったんですよね?」
「そうですね。」

ダンナは、これだけは確認しておきたかったらしい。
つまり、進行がんではないという確認を。

ただ、超初期だろうから大丈夫、とは先生は言ってくれなかった。
厳しい現実ではあるが、先生もうっかり安易なことを言えないのだろう。私も受け止めないといけない。

これから看護師さんの説明を聞き、諸々の検査を受ける。
親や会社に報告もしないといけないし、長い一日になりそうだ・・・・・・。


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