【第23回】 交響曲 第２５番 ト短調 Ｋ．１８３ 第１楽章

1773年10月　モーツァルト17歳の作品。
ウィーンから戻った直後にザルツブルクのマカルト広場の家で書かれた。
モーツァルトが初めて短調で書いた交響曲で、ザルツブルク時代を代表する名曲の１つ。
第１楽章にみられる鮮烈なリズムは豊かな情感を表している。

　（演奏）ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
　（指揮）オットー・クレンペラー
　【出演】　（作家）なかにし礼


　－　青春の記念碑　－

1773年秋、モーツァルトは２ヶ月に及ぶウィーン旅行から故郷ザルツブルクに戻ってきた。
モーツァルトは再び宮廷楽師長としての職務に戻る。
主人である大司教コロレドの好みに合わせて演奏・作曲をする日々が再び始まった。
しかしモーツァルトの創作意欲はただ主人の注文に応じて曲を書くだけでは満たされなかった。

1773年の夏から秋にかけてモーツァルトはウィーンを訪れ、「疾風怒濤運動」に触れたとされる。「疾風怒濤運動」とは、旧来の因習を廃し若者の新たな価値観を尊重しようとする運動。この運動の担い手が、文豪ゲーテであった。
『交響曲第２５番』には「疾風怒濤運動」の影響が見られるといわれる。
この曲は、新たな時代の息吹をいち早く受け止めたモーツァルトの青春の記念碑である。