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空を望む少女 第一章 振り返り3

2016-12-31 18:36:25 | 小説類
本日は深夜にもう少し更新するつもりですが、前回予告していた飛行機がらみのお話の締めくくりをしておきましょう。

・第四話

前回無人機有人機の性能について少々お話ししましたので、今回は戦闘機の双発単発の違いをお話していきましょう。

まず単発双発の発とは発動機、すなわちエンジンのことです。これを一つの機体に幾つ積むかという問題ですね。
二次大戦中の戦闘機、すなわちレシプロ機が双発にしようとすると、プロペラ同士の接触を避けるためにエンジン間に距離が必要とされます。すると重量物であるエンジンを機体中心軸から離すことになってしまい、モーメント増大によって単発機に比べて機動性が大幅に劣るという構造的宿命に直面します。であるがゆえに、機動性が要求される戦闘機は単発が主流で、双発以上の機体は爆撃機など積載量を必要とする機体や、重戦闘機など機動性よりもパワーによる高速を重視する機体になっていきます。
補足しておくと、パワーが欲しいが機動性も欲しいということで、機体の前部と後部にエンジンを載せた串型双発という機体も計画されています。これなら確かに軸線上にエンジンを二つ配置できるのですが主流になっていない当たり、単発機と比べてコストと性能から見て明らかな優位性はなかったのでしょう。また、エンジンが後部にあるとパイロットの脱出時に問題があることが有名です。海軍の方でも震電という機体がありましたが、爆薬でプロペラを吹き飛ばしてから脱出する設計になっていたりしました。
もう一つ、双発の戦闘機も存在し、主に爆撃機に随行しての護衛や高速を生かして戦闘爆撃機としての運用など、複数の用途で様々な機体が設計されたのですが、結局軽快な単発戦闘機には歯が立たなかったことや、搭載量も中途半端でさほど多くなかったことからあまり役に立ちませんでした。ところがやがて爆撃機が大型化し超航空を飛ぶことで迎撃機を回避しようとする時代になると、単発戦闘機では高硬度飛行にパワーが足りなかったのに対して、双発戦闘機は有効な対策になり得ました。帝国陸軍の屠龍対B-29など。それでも結局護衛戦闘機には勝てず、終戦前には苦戦を強いられていたようです。

さて、ここまでが大まかなレシプロ機における単発双発事情でしたが、ジェット機になると話が一変します。そう、プロペラがついていないのでジェットエンジンは中心軸に並べて配置できるのです。やったぜ。
歴史的な観点からは、ジェットエンジンが最先端技術だったころは当然信頼性が低く、それを数で補う思想から双発が採用されることが多かった印象です(といっても、黎明期はまだエンジンの小型化ができずF-86などは単発機であったが、そんなもんでよく飛べたもんだ)。特に艦載機は海上でエンジンが止まると一巻の終わりということで、F-4,F-14,F-18など海軍機では伝統的に双発が採用されている印象です。ただ、当然ですが双発だと単発に比べてコストは倍、メンテナンスの手間も倍。信頼性が上がってくると、単発の傑作機であるF-16なんかも登場してきました。

それでは、信頼性が向上するとともにジェット戦闘機は単発に収束していくのでしょうか。近年の戦闘機を見てみましょう。
・X-2(ATD-X) 日本
・J31(仮称) 中国
・F-22(強い) アメリカ
・F-35(うーん) アメリカ
・T-50(仮称) ロシア

この中では実は単発はF-35一機のみです。これらは区分としては第五世代ジェット戦闘機と呼ばれる機体なのですが、F-35だけが低コストを身上として友軍との連携を前提としているのに対し、他の機体が基本的にステルス性能を持ち、他国の戦闘機とのガチ空戦を念頭に置いているという性格の違いにも起因するでしょう。
そう、双発にするとパワーに余裕ができ、単機での性能が期待できるのです。

以上を踏まえて、空を望むの主役機であるMF-3Jは双発の大型戦闘機という設定にしました。高性能と高生存性が持ち味です。主な任務は偵察と制空戦闘ですね。
さて、また第四話において健というキャラクターが攻撃隊を率いる、という旨の発言をしています。実は彼の乗る機体の設定もあって、やはり双発の戦闘爆撃機です。ただし、どちらかというと爆弾を投下した後の空戦が主任務で、大型爆弾を抱えた爆撃機寄りの戦闘機というより殆ど攻撃機のような機体が別に存在していると思って下さい。

反対に、敵の機体はどうでしょう。これについては、戦いの殆どが迎撃戦闘であるため、単発で機動性が高い小型戦闘機を想定しています。基本的に戦闘は基地上空だから落とされても喪失されない、数が欲しいから低コスト、性能もほどほど、という感じですね。種類も少ない。物語上のキーポイントとしては、そんな彼らが突如双発大型の制空戦闘機というか万能機を投入してきた点になります。これは第二部で扱うことになりますが、航空機的に見たとき結構な事件であるということになります。

・第八話

上記の戦闘機事情を踏まえて、人類側の基地が襲撃されるという事態について評価しておきたいと思います。作中、羽衣が自分の所属する基地が壊滅した経験から過敏になっていること、悟が意外と危機感がなさそうなことを対比しておいたのですが、実は悟の感覚の方が正確だと私は思います。というのも、敵の機体構成が基本的に単発で軽戦闘機寄りなので爆弾搭載量や航続距離の観点から、人類側の基地を総攻撃するのがなかなか大変であるからです。何しろパワーがないので、重い爆弾を抱えていては機動性も落ちるし、かといって爆弾を軽くすると攻撃力が落ちてしまう。実は大戦末期のいわゆる特攻もこのジレンマがありまして、私は人道的な観点は勿論、戦術としても有効性に疑問を持ちます。特にゼロ戦は非力なエンジンで有名です。
と言うわけで、敵も決死の総攻撃です。基地を落としきることによる優位を強調するため、波状攻撃を仕掛けてくる。そして人類側は迎撃能力を保ちながら、タイミングを計って一気に攻勢に転じ、その隙に脱出するというプランになります。ですから、結論としては人類側の対策もあり、脱出するだけならばそこまで困難ではない、ということになります。
勿論、人類の戦略上、置き碁の置き石が一つ無効化されたようなもので損失は大きいのですが、致命的でもない。まだまだ、というところでしょう。


・第九話

悟君のラストバトルです。敵の狙いは何だったのか、というところに悟君がMF-3に興味があったという推測をしていますが、半分正解です。詳しくは第二部で描写していく事になると思います。


以上、空を望む少女第一章の振り返りでした。特に航空機面で何をしたかったかに絞って好き勝手描きましたが、第二部にはあまり航空機は出てこない予定ですので、ここぞと書いてしまいました。
丁度卒業研究などで時間がなく、数か月間更新のペースが落ちてしまいそうですが、制作意欲であるとか、考察の方の進行意欲は幸いにも衰えておりませんので、コツコツ進めていきたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。

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