故郷(ふるさと)の
訛り懐かし
帰省列車。
入社した頃、何となく目にした言葉。
誰が詠んだかは判らないけど、帰省途上ではいつもこの言葉を噛みしめてた。
京都の言葉に若干の違和感を感じてた頃で、
早く地元の言葉を耳にしたいなんて思ってたからかな。
恥ずかしいけど、ずっと標準語だと思ってた。
だってね、
ドラマやニュースで話される標準語、
普通に理解出来るから。
自分が発する言葉が、彼らのそれとアクセントが違うなんて思った事すらなかったな。
関西弁には近いと思ってたけど、これまた違う。
就職で京都に住むようになってから思い知った。
だから皆からからかわれたっけか。
まぁ、いいんだけどね。
それも遠い昔。
今はもっと自分の言葉が恥ずかしい。
訛っているって言われてた頃よりずっとね。
地元の言葉はもう忘れた。
関西弁がしみ込んだ、でも。
でも、違う。
敬語も織り交ぜる俺の言葉はどこか、
変…らしい。
だからって事もあって。
年に一度の帰省で地元の訛りに接すると
本当に安心出来る。
田舎出身で良かったって…強がりじゃなくって本当に思える瞬間。
かつて自分が使っていた筈の言葉を、
まだ幼い甥っ子や姪っ子が操る。
それを耳にすると、
本当に心がほっこりする。
そして耳の奥で響くのは、親父の声。
「なんちゃぁ」
口癖の様に言ってた。
ニュアンス的には…
「どうってことないから、気にすんな」
…そんな感じ。
俺って本当に親父似の無骨な顔。
小さい頃から「よく似ている」って言われていた。
けど、中身は全然違うのだけどね…当たり前だけど。
太い一文字眉は親父譲り。
20代はつり上がってたその眉も、徐々に落ちてきたのだろうか?
だってね。
年を取った親父の眉は「ハの字」に垂れ下がってた。
その垂れ下がった眉を一層下げながら
しわくちゃの笑顔で言うの。
「なんちゃぁ」
帰省の度に駅まで迎えに来てくれた。
お袋曰く、俺の到着30分前から待っているらしい。
1時間に1本しかない電車なのにね。
そうして俺の姿を確認すると、
荷物を取り上げて車まで運ぶ。
どう考えても俺が運んだ方が早いのにな。
きっといつまでも、
30過ぎても、40過ぎても、
親には子は小さい子供のままなのかな?
その感覚、俺には判らないや…。
ゴメンな、いつも。
ありがとう、ホント。
俺がちょっと照れてそう言うと、
振り返って笑顔の親父は、
「なんちゃぁ」
ハの字に太い眉毛を下げて
しわくちゃの顔で、そう言うんだ。
ちょっと照れるのかな?
そこだけは俺、似ているのかな?
泣けてくるよ。
思い出すだけで。
あなたの強さの爪の垢。
本当に煎じて飲みたいくらいだ。
「なんちゃぁ、かまんけん」
親父の声が表情が、今もまだ鮮やかに思い出される。
まだ実家で俺の帰りを待っている、そんな淡い幻想と共に。
実家の最寄り駅。
降り立つといつも親父が待っててくれた。
軽く右手を上げて俺に合図する。
俺が小さい頃は滅多に笑わなかったけど、
年取ってからは良く笑ってた、その笑顔。
大好きだよ。
そんな笑顔の男になれたらな。
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訛り懐かし
帰省列車。
入社した頃、何となく目にした言葉。
誰が詠んだかは判らないけど、帰省途上ではいつもこの言葉を噛みしめてた。
京都の言葉に若干の違和感を感じてた頃で、
早く地元の言葉を耳にしたいなんて思ってたからかな。
恥ずかしいけど、ずっと標準語だと思ってた。
だってね、
ドラマやニュースで話される標準語、
普通に理解出来るから。
自分が発する言葉が、彼らのそれとアクセントが違うなんて思った事すらなかったな。
関西弁には近いと思ってたけど、これまた違う。
就職で京都に住むようになってから思い知った。
だから皆からからかわれたっけか。
まぁ、いいんだけどね。
それも遠い昔。
今はもっと自分の言葉が恥ずかしい。
訛っているって言われてた頃よりずっとね。
地元の言葉はもう忘れた。
関西弁がしみ込んだ、でも。
でも、違う。
敬語も織り交ぜる俺の言葉はどこか、
変…らしい。
だからって事もあって。
年に一度の帰省で地元の訛りに接すると
本当に安心出来る。
田舎出身で良かったって…強がりじゃなくって本当に思える瞬間。
かつて自分が使っていた筈の言葉を、
まだ幼い甥っ子や姪っ子が操る。
それを耳にすると、
本当に心がほっこりする。
そして耳の奥で響くのは、親父の声。
「なんちゃぁ」
口癖の様に言ってた。
ニュアンス的には…
「どうってことないから、気にすんな」
…そんな感じ。
俺って本当に親父似の無骨な顔。
小さい頃から「よく似ている」って言われていた。
けど、中身は全然違うのだけどね…当たり前だけど。
太い一文字眉は親父譲り。
20代はつり上がってたその眉も、徐々に落ちてきたのだろうか?
だってね。
年を取った親父の眉は「ハの字」に垂れ下がってた。
その垂れ下がった眉を一層下げながら
しわくちゃの笑顔で言うの。
「なんちゃぁ」
帰省の度に駅まで迎えに来てくれた。
お袋曰く、俺の到着30分前から待っているらしい。
1時間に1本しかない電車なのにね。
そうして俺の姿を確認すると、
荷物を取り上げて車まで運ぶ。
どう考えても俺が運んだ方が早いのにな。
きっといつまでも、
30過ぎても、40過ぎても、
親には子は小さい子供のままなのかな?
その感覚、俺には判らないや…。
ゴメンな、いつも。
ありがとう、ホント。
俺がちょっと照れてそう言うと、
振り返って笑顔の親父は、
「なんちゃぁ」
ハの字に太い眉毛を下げて
しわくちゃの顔で、そう言うんだ。
ちょっと照れるのかな?
そこだけは俺、似ているのかな?
泣けてくるよ。
思い出すだけで。
あなたの強さの爪の垢。
本当に煎じて飲みたいくらいだ。
「なんちゃぁ、かまんけん」
親父の声が表情が、今もまだ鮮やかに思い出される。
まだ実家で俺の帰りを待っている、そんな淡い幻想と共に。
実家の最寄り駅。
降り立つといつも親父が待っててくれた。
軽く右手を上げて俺に合図する。
俺が小さい頃は滅多に笑わなかったけど、
年取ってからは良く笑ってた、その笑顔。
大好きだよ。
そんな笑顔の男になれたらな。
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