uubの小屋

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ただ今、冒険中。

ぽっかり空いた本棚からは旅の風が舞い込む

2009年12月30日 14時08分07秒 | Letters
これまでアルバイトも含めていろんな仕事をしてきました。いろんな仕事をしたということは、つまりは、いろんな人たちと一緒に働いたということでもあります。
それぞれの人たちとの間には、それぞれの記憶があって、それぞれの意味があります。


生ふ田君(本名:生麩の田楽)


誰かに何かをプレゼントするとき、わたしは相当考えます。プレゼント選びに費やすありとあらゆる労力の世の中の平均がどれくらいかはわからないけれど、わたしは、うーん、そうだな。たとえば自分の受験する大学を選ぶときくらい真剣に考えます。相手と場合によっては、レストランでメニューを選ぶくらいの労力のときもあるけれど、それだって割りと真剣です。ですよね?だって、絶対に一番おいしいもの食べたいし。


話が逸れました。


生ふ田君が森のレストランを辞める時、わたしが選んだ心ばかりの贈り物は、沢木耕太郎の『深夜特急』。新潮文庫版の計6冊。アルバイトで貯めたお金で海を渡り、ひとり旅をすると聞いていたので、それを選びました。でも新品ではなく、わたしの本棚にあったのをそのまま抜き出して。新品でもよかったんだけど、なんとなく、わたしの本棚にあった『深夜特急』を旅のおともに連れて行ってもらいたくて。


そうはいっても6冊です。1冊は薄いけれど、6冊です。いくらわたしだって全部持って行ってもらおうなんて思ったわけではありません。でも生ふ田君は持って行ってくれたのです。6冊全部。ひとり旅の荷物は少ないに越したことはないというのに。
旅から戻ってきた生ふ田君にそのことを聞いて、わたしはびっくり仰天でした。たしかに6冊全部読めたほうがいいには違いないけれど、たしかに旅先からくれたメールにも「深夜特急」を読んでいると書いてはあったけれど、いやしかし、6冊全部持っていたとは。夢にも思っていませんでした。




今もし、あの本が生ふ田君の手元になくてもね、『深夜特急』は生ふ田君にあげて本当によかったと、ぽっかり空いたわたしの本棚を見ながら、時々そう思っています。






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