(前章からの続き)
43年11月の江利チエミ特別公演/第一部「’68.チエミ秋に唄う」...
このステージは圧巻だった!…と今でもファンの間では語り草になっているとか。
残念ながら私は8歳…記憶が定かではありませんでした。
それを思い出させてくれた(記憶の上書きかもしれませんが)のが、LP「ベスト・オブ・チエミ」です。 先輩ファンの方にこのLPをお貸しいただいたのです。
(このLPはコアなファンの間でもなかなかのレアもので、なかなか入手困難です。先般もヤフオクで熾烈なセリが続きました。)
このLP(翌44年発売)は、このステージで歌われた楽曲で構成されています。
A面
1)サウンド・オブ・サイレンス 2) レット・ミー・コール・ユー・スイートハート 3) ストーミー・ウェザー 4) ナイト・アンド・デイ 5)エル・クンバン・チェロ 6)ブラジル 7)テネシー・ワルツ
B面
1)口づけをかえして 2)ひとりだけの湖 3)さよならは一度でいいの 4)あの妓ちゃん 5)北海盆唄 6)よさこい節 7)炭坑節 8)稗搗節(ひえつき節) 9)相馬盆唄
術後のチエミさんは低音が出にくくなりました。
これは喉を壊したあとに起こる症状のようですが、むしろ高音が出るようになった・・・のです。
太い豊かな「アルト」が、幾分「音色は細く」なりました。 自身のレパートリーもこのころ「キィ」を若干あげて唄っていたと記憶しています。
--->さのさ などもこの時期の録音は幾分キィが高いと思われます。
実際、この頃のテネシーワルツも F から G に一音あげて唄っています。
先般発売されたDVD「美空ひばりヒストリーinフジテレビ【2】1970-72」でも、20周年記念の正月番組にゲスト出演しているチエミさんが歌っているテネシーが聴けますが、これも1音高いキィです(46年1月)。
このLPに収録されているテネシーもこの「キィの高いバージョン」です。
なんとも云えず「哀愁が漂う名唱」なのです。このテネシーは間の「去りにし夢---」の日本語部分のない短いバージョンですが、数多いテネシーの録音のなかでも1・2を争う名盤です。
そしてなにより凄いのが「エル・クンバンチェロ」です。
1コーラス目が終わり、間奏の部分・・・ チエミさんはそれまであまり用いなかったファルセットを屈指して伴奏に合わせてオブリガードをつけます。
♪ウウウウウ--- ウウウウウ--- というハミングですが、オクターブ上げの高音で唄いきっているのです。
(このファルセットは「キャリオカ」でも、それまでサビでファルセットは利かせませんでしたが、♪イェイ イェイ イェイ イェイ イェ---- で、おもいっきりな高音でフィニッシュする・・・という歌唱法にチェンジしたと思うのです。新宿コマ公演中の11月、フジテレビで「江利チエミショウ特番」がありました。勝新太郎さんがゲスト出演した番組で、そのなかで、チエミさんがグリーンのドレスで「キャリオカ」を唄った場面があった・・・と記憶しています。この時期からキャリオカのサビの唄い方が変わったように私は記憶しています。・・・ このVTR。。。フジテレビのライブラリーに残っているのではないでしょうか? あるのなら出し惜しみしないで欲しいです!)
そのときできる「ベスト」を追い求めた・・・
このLPはベスト盤のようなタイトルに 思われそう...ですが、「今、ここにいる江利チエミの最高なものを」という思いが込められているのではなかったろうか...と、私は想像します。
手負いの獅子・江利チエミは「いつでも100%勝負」で私たちに「チエミのすべて」を見せてくれました。
それは身を削って機を織る「夕鶴」のようでもあったのですが…
※テレビの内容の記憶は、いつもながら当時は9歳... ゆえに「誤」の可能性大です。
※江利チエミさんのコマの上演演目は ここ をご覧ください。
もう素晴らしすぎて、単に江利チエミの1960年代の最高作品の枠を超えてます。
バートバカラックの音楽世界を思わせるような優雅な雰囲気があります。
チエミさんの声もとてもエレガンス。
日本の1960年代ポップスを代表する作品ですよ、きっぱり!
ファンでない人に聴いてもらっても、絶対に恥ずかしくない作品。
嘘だと思ったら是非、聴いてみな!
・・・・って、CD化されてないから、
「江利チエミがポップス?へっ!?」
なんて思っている食わず嫌いの人に聴いてもらえないのよねぇ。。。
この食わず嫌いとは正に私のことだったわけで(^^;)
今となっては、私の音楽人生の半分、損した気分なのよ。
これ...とっても残念に思うんです。
この前もテレビの製作に携わってる方からメールいただいたんですけど...私も要望として「江利チエミの全盛期のVTRを真剣に探して、ジャズ・ポップスにラテン民謡で凄い力を披露してるチエミさんにスポット当ててほしい!」ってお願いしたりしました(笑)。
埋もれさすにはもったいなさ過ぎる・・・です。
でも、それよりも、なによりも、ここでうたわれている民謡のすべてが、とにかく チエミさんの歌声、うたいっぷりが大変、大変やさしいというかあったかというかとにかくいいんですよ。素晴らしいいのです。
チエミさんの人柄がにじみ出ている名唱です。是非聞いてみて下さい
江利チエミ名盤復刻CDとかいうの・・・
江利チエミ・デルタ/ライブ(36年)
芸者音頭/チエミと歌えば(41年)
チエミゴールデンアルバム(42年)
チエミデラックス(43年)
そしてベストオブチエミ(44年)...
ステージの江利チエミを偲ぶシリーズなんてどうでしょうかネ。5枚組み/舞台写真とライナーノーツ付で!!
何と言っても、音源限られているし。
プロの世界に、う--でぶさんのような方は、いないんですかね。
ホントに“無いも同然”になってしまいます。
下手したら、う--でぶさんが行動されるしかないのかも。。。
そのときは、是非ライナーノートをお書き下さい!
淋しいです。