宇宙人は柴犬と

SFコメディー小説です。

第44(終):おおむね大団円  3/3

2011-04-10 22:40:13 | 日記

【よし!判った】
狼頭王「未来を変える爆弾は、少なくとも君にとって意味のない発明だったのかもしれない。だが君たちの研究成果は、我々にとって非常に有意義だ。」
ぴろウき「有意義?宴会芸にでも使うのかい?」
狼頭王「テー家の一部の女性に時間方向の知覚能力があることは、我々も知っていた・・公表は避けていたがね。だが、それを運用する技術ははなはだ未熟だ。君たちの技術は我々から見て20年以上進んでいる。」
ナンプラー「地球との取引で君たちの技術を得て、少なくとも20年分の研究費を浮かせることができた。大きな成果だ。」
ぴろウき「www。へー、そりゃあサービスしすぎたな。おつりが欲しいぜww。」
ナンプラー「例えば何だ?」
ぴろウき「自由・・かな?」
なな「自由。その言葉の意味する処を1つしか思いつけないのですが。」
高まる緊張感。
ぴろウき「冗談だ。逃げたりしないよ。」

狼とぴろウきの話は終わった。
狼の方から握手を求める。
狼頭王「会えて良かった。」
さぁ、引き上げだ。
ぴろウきとともに背を向けるエールラーに声がかかる。
ナンプラー「エールラーは残れ。」
エールラー「帰りの護衛があります。」
ナンプラー「この件に関して我々のすべき事は無い。お前には次の任務が有る。」
エールラー「・・?(納得しかねるが) わかりました。」
ウルトもななの腕を引く。
ウルト「我々もここで引くぞ。」
なな「じぃごときと台詞がかぶって大変遺憾なのですが、”帰りの護衛があります”。」
ウルト「会談は何事もなく終わった。これ以上首を突っ込むと、地球側に厄介者扱いされる。」
なな「私は地球人ですが。」
ウルト「お前の所属は宇宙警備隊だ。地球人でテー家の騎士をやっている、お前の彼氏と同じくな。」
彼・・氏・・
なな「は、ははは、はて?かっ彼氏とは誰の事でしょう?き、基本情報を要求しま・・す。」
ウルト「ちょっと赤くなってるってことは、まんざらでも無しか?」
ぴろウきは警察に任された。
どちらにしろ最後は警察で身柄を預かることになるので、前後のパトカーには3人づつ乗っていた。
ぴろウきの乗る2台目のパトカーに前後から1人づつやってきた。
手錠をかけられるぴろウき。
空港をパトカーが出てゆくとき、ぴろウきがトイレにゆきたいと言い出した。
やむなく空港へ戻る。
トイレの内側と外側に2人ずつ張り付き見張る。
大便室に入るぴろウき。
数分後。
水の流れる音がする。
トイレ内で見張っていた2人が”もう出てくるだろう”と、扉の方に一歩進むがいっこうに出てこない。
これはおかしいと、肩車をして上から覗くと中には誰もいない。
手錠だけが床にころんと転がっている。

1時間ほどして、オンバク号へ警察からぴろウき逃走の連絡が入る。
ギュンター・エールラー名指しの応援要請だ。
彼にはぴろウき確保の実績が有る。
ナンプラー「本件は全ての決着がついております。たいへん申し訳ありませんが、これ以上の助力はしかねます。」
ななにも同様の要請があったが、ヂェットがナンプラー同様にあっさり断った。
エールラー「奴が逃げるって、知っていたのですか?」
ナンプラー「それについては何の興味もない。YESともNOとも言いかねるな・・おっと、ビリヤーニ卿(狼頭王)にはそんな質問するなよ。」
エールラー「なぜです?」
ナンプラー「判らぬならこう考えろ。”それを考えることは無駄だから”と。テー家騎士団の我が精鋭部隊は皆忙しい、無駄なことは一切するな。お前に次の仕事があるといったのは本当だ。今日は休みにしていいが、明日の朝8時に俺の処に来い。」
エールラー「今日は休み?」
すでに十分働きましたよね?
太陽はすっかり沈んでいる。

空港から2kmほど離れた路上。
暗闇の中、ぴろウきがマンホールをどけて、全裸で這い出てきた。
出迎えたのは東方。
東方「さすがに臭うな。」
ぴろウき「とりあえず、風呂。風呂たのむわ。」
彼は自分の体の骨を砕き、下水管を通り逃げたのだ。
ななが台湾に来たとき、ぴろウきは捕まることを覚悟した。
これ以上逃げきれはしないと。
しかし、全員捕まってしまってはその後が無い。
そこで東方だけを逃し、自分と瀬瀬博士は捕まることにしたのだ。
自分が捕まれば、この最強の二人(ななとエールラー)が東方を追うことは無い。
そして全てを話す・・と言う。
それで相手の興味を1点にくぎ付けにできる。
未来を変える爆弾について話したことは全て事実だ。
ヂェットやなな相手に嘘は通用しない。
だが、真実を話せばそれで良いのだ。
宇宙警備隊とテー家にとって、自分は魅力/価値の無い者・・にできる。
後はこの通り、やすやすと逃してくれる。
宇宙警備隊とテー家がからんでこなければ、瀬瀬博士の奪還も楽になる。
そして、チャイの妹はチャイに預けた。
ぴろウき「たしかに俺は真実は話したが、全ては話していないぜ。」
そう、ぴろウきと瀬瀬博士が7ヶ月の研究で知った真実は他にもある。
人為的に大きく狂わされた世界は元に戻ろうとする。
しかし、大陸が長い年月をかけて姿を変えて行くように、世界も少しづつ変化をしていっている。
そして一度狂った世界は、全く元には戻らない。
そうでなければ無限ループに陥っているはずだ。
ぴろウき「俺は何も諦めていない。それどころか、今、やっと野望を達成する準備が整った気すらしている。」


ぴろウきが姿を消し、1月が経とうとしていた。

タイゾウのマンション。
キッチンで料理を作っているのは天才ドライバー、バンザイバレットこと、もり香。
タイゾウが帰ってきて、もり香にフレンチキス。
もり香の足にしがみついている赤ちゃんが一人。
もり香「ほーんと、日に日にパパドに似てくるわねぇ。」
タイゾウ「お前な、この子に俺ではなく、どこぞの犬耳宇宙人の血が流れているような発言はやめろ。」
タイゾウは赤ん坊を抱き上げ隣の部屋へ。
布団に寝かせる。
インターホンからメロディーが流れてくる。
誰かがエントランスからこの部屋を呼び出している。
宅配便かな?
もり香はモニタを見てビックリ。
パパドだ!!
解錠してやるとエレベーターに乗り、部屋の前までやってきた。
もり香「パパド!!きゃっほぉーっっ!!」
ドアを開けて飛び出し、抱きつく。
興奮して、笑顔なのに目から涙が出てくる。
もり香「大きくなったなぁ。もうあたしより背ぇ高いだろぉ。」
パパド「ええと、まぁ、そうかも。」
もり香「そうなんだろお!白状しろよう!!」
パパド「ちょっっ!落ち着いて!!」
ヘッドロックしたり、抱きついたまま振り回したりと、したい放題。
そして部屋に迎え入れ、夕飯は絶対食っていけと大張り切りで鍋を振り回す。
もり香「隣の部屋にあたしのガキいるから見ていけ。」
言われた通り、布団に寝かされた赤ん坊を覗き込む。
キッチンから声が聞こえてくる。
もり香「どうだ!お前(パパド)にそっくり過ぎて、笑っちゃうだろ。」
タイゾウ「だからさ!!俺の子だよねぇっ!!」
のそのそと頭を掻き掻き戻ってくるパパド。
パパド「ええと・・実は、二人にお願いがあってやって来たのです。」
タイゾウ「なんだ、神妙だな。」
鼻歌もたからかにテーブルにご馳走を並べて行くもり香。
パパド「どうか二人の力を貸してください。」

もり香「www。よし!判った。」
腕を組み、仁王立ちでガハハ笑い。
タイゾウ「まだ、何も聞いてないだろう?何が”よし!判った”だ。まったくも・・」
パパド「チャイが・・」
タイゾウ「何ィ!チャイが!!よし!判った!!!!」


※以上で終わりでございます。
 最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
 次は年末ごろからサイバーパンクものを書こうと思っています。
 今もっとも受けない、見向きもされないのはサイバーパンクだと思うからです。
 流行に背を向ける姿勢は、今後も崩さずにやっていこうと思います。
 本当に、本当にありがとうございました。

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第44(終):おおむね大団円  2/3

2011-04-10 22:40:02 | 日記

【ぴろウきの回想】
5年前。
つまり、地球連合軍とテー家が戦ったあの7月7日。
ぴろウきと瀬瀬博士が失踪した日でもある。
数日後。
博士からぴろウきに連絡があった。
博士は一人で逃げていたのだが、このまま逃げつづけるのは困難だと限界を感じていた。
文月ななとエールラー、この二人の執拗な追跡。
世界中のあらゆる定点カメラや監視衛星をhackできる瀬瀬博士は、彼らの手際を知ることがでいるが故、逆に危機感を強めていた。
二人の目的はあくまでもぴろウきの確保だが、瀬瀬博士はぴろウきに繋がる重要な糸と考えている。
追跡は厳しい。
そこでぴろウきにかくまって欲しいという。
むしのよい話だ。
しかし、彼を探していたのはむしろぴろウき。
何故すぐに連絡をよこさなかったのか?など、聞きたいことは山ほどあった。
それに、今後の計画を進めるためには彼の才能が必要だ。
ぴろウきはまだ、過去を変える計画を諦めてはいない。
二つ返事でOKした。
チャンネル√4のクルーザーで沖縄に到着した瀬瀬やすひろ博士。
迎えにきたぴろウきとモノレールに乗る。
やっさん「ずいぶん堂々と移動するんだねぇ?」
ぴろウき「(俺たちの移動経路には)うちのスタッフが張り付いている。ヤバかったら連絡がくる。」
やっさん「なるほどね。で、さぁ・・」
ぴろウき「なんだぁ?トイレか?」
やっさん「とぼけるなよ。ボクは何をやればいいんだい?そのためにかくまったんだろう?」
なんからしくないな。
瀬瀬博士にしては言うことが小さい、卑屈だ。
ぴろウき「ああ、そうだな。一つ目は・・」
やっさん「なんだい、沢山あるのかい?」
ぴろウき「まぁ聞けよ。一つ目の仕事は俺の質問に嘘無く答えることだ。」
やっさん「www。ラジャww。」
ぴろウき「7月7日、お前が姿をくらませるとき、なぜ、すぐに俺に連絡をよこさなかった。」
やっさん「なんだ、そんなことか。君たち全員捕まっていると思ったんだ。」
ぴろウき「お前はディZ2ーランドの監視カメラで見て、知っていたはずだ。少なくとも俺は捕まっていないってね。」
やっさん「ボクが、監視カメラで見ていたと?なぜわかる。」
ぴろウき「宇宙警備隊司令室と直通の無線で、最新の情報を知ることができるウルトはあの時お前のそばにいなかった。それはなな坊がお前との電話で聞いている。そして、お前があの場から逃げるには、ウルトより早く作戦の失敗を知る必要が有る。騎士たちがお前の処に行くのを阻止していたのは、ウルトのはずだからな。」
やっさん「なるほどねぇ。じゃあ言い方を変える必要があるね。ボクは君たち全員が必ず捕まると直感したんだ。悪いがボクだって自分がかわいいし、恐怖に判断を誤ることも有る。」
ぴろウき「・・・・」
いーや、お前は独自の考えで行動をしているのだ。
おそらく手を組んだときからずっと。
俺の考えに賛同したわけではなく、瀬瀬やすひろ個人の何らかの野望をもって、俺たちに協力していたのだ。
そしてその裏で、自らの野望を実現すべく動いていたのだ。
お前は俺に対して後ろめたい何かを持っている。
それが、らしくない態度の一因だ。
しかし何なのだ?お前の野望とは、何なのだ?
聞き出すにはもう少々時間がかかりそうだな。
ぴろウき「わかった。」
やっさん「意地悪はもう充分だろう?言いなよ、ボクの役目をさ。」

ぴろウきの依頼は、テー御領へ戻った水槽のチャイとの通信手段の確立。
それには少女のチャイが必要だ。
瀬瀬博士はチャイのクローンを製造した。
クローンはまだ赤ん坊。
少女のチャイの様にこちらの言葉を理解し、言うことを聞いてくれるわけではない。
そこで赤ん坊の脳へプログラムをロードすることにした。
ガパオや水槽のチャイにもやった、瀬瀬博士の十八番。
そのプログラムで赤ん坊を、水槽のチャイとのWiFiルーターにしてしまおうというのだ。
パラメータの調整を繰り返し、何度もプログラムをロードし、水槽のチャイとの通信が可能となるころには、あの7月7日から1年半が過ぎていた。
博士がプログラミングに没頭している最中、ぴろウきは台湾に自分の息のかかった会社を立ち上げていた。
文月ななとエールラーの追跡が厳しく、日本にとどまるのが困難になってきたのだ。
かと言ってアメリカやヨーロッパでは逆に目立つ。
東方が段取りした潜水艦を使い、密航をする。
ぴろウき、東方、瀬瀬博士、そしてクローンの赤ん坊。

さらに7ヶ月後。

地元警察の強力を得て、彼らが隠れ家にしていた会社に捜査に来たななとエールラー、そして日本の刑事が2人。
ぴろウきと瀬瀬博士をあっけなく発見する。
東方は逃走し、その場にいなかった。
ぴろウき「よっ、なな坊。待ってたぜ。」
なな「日本へ強制送還です。ご同行願えますか。」
エールラー「・・・」
無気力なぴろウきと瀬瀬博士に違和感。
ひょっとして、観念したのか?
いや、この男に限ってそんなことは無い。
断じてだ。
たとえ可能性がゼロでもあがいてくる。
それは暗黒星雲人の気質でもある。
エールラー「元気が無いが、風邪でも引いたのか。」
よい皮肉に引きずるように力なくひっひと笑う二人。
ぴろウき「いや、話すべきことが多すぎてね。なんとゆーか、この半年間の研究は実り多くてね・・例えるなら・・重さで枝が折れるほど沢山のりんごが一気に実ったような感じさ。」
やっさん「よいたとえだなww。」
なな「・・・・」
ぴろウき「どうだい。俺たち、折れた枝の様だろう?」
なな「話は日本で聞くわ。さぁ、ご同行願います。」
ぴろウき「覚悟しろよ・・」
その台詞にエールラーの目が鋭く牽制する、やはり何か仕掛けてくるのか。
ぴろウき「・・話すことは山ほど有る。やっさん。俺はアンタのことも全て話したい。」
やっさん「ww。いいさ、好きにしてくれ。」
仕掛けてくる気は無い様だ。
ため息とともに型の力を抜くエールラー。

手錠をかけようとする日本の刑事を制止するなな。
なな「それは必要ありません。」
理由を聞き返す刑事。
なな「我々に全てを伝えるまでは、追い返してもついてきますよ。」
本当に嘘やごまかしがきかない・・くえないガキだと、ぴろウきは苦笑。

日本。
警察の取調室に刑事以外が立ち入っている。
宇宙警備隊のヂェットと文月ななだ。
ヂェットはガパオのクローンボディーに寄生している。
ぴろウき「なな坊は判るが、なぜガパオがいる。」
ヂェット「私だ。わからぬかな?」
ぴろウき、ぽか〜ん。
ぴろウき「げ、ひょっとしてヂェットか?」
ヂェット「当りだ。ひさびさに顔を見たくなってな、ウルトに任せた役目を横取りして来てやったぞ。」
ぴろウき「いつの間にそんなに親しくなったんだ?俺たちは?」
最初は警察による地味な取調べ。
この2年と少々の間、どこで何をしていたのか、細かく質問をされた。
重要な話は別に有るのだが、警察側がこっちが先だと順番を譲らなかった。
なな達は順番待ちだ。
2人雁首そろえて部屋の隅に控えている理由は、”早く順番をよこせ”とプレッシャーを与えるため。
宇宙警備隊の基地で声がかかるのを待っていたのでは、すぐに忘れられ、待てど暮らせど連絡はこないだろう。
3日後の昼飯時。
ヂェットがぴろウきの隣にやってきた。
ヂェット「疲れたろう。」
ぴろウき「www。ご心配いただきいたみいっちゃうねぇ。しかし、まぁ、結構あれこれ覚えていてさ、沢山の質問に答えながら自分でもビックリしていたぜww。」

1週間後。
警察の取調べは延々と続いたが、ひとまず順番を譲ってくれた。
ぴろウきの前に座るヂェットと文月なな。
ぴろウきはパソコン1台を要求。
刑事がノートパソコンを持ってきてくれた。

※文字家「誰?」 えっしー「モブ夫」 文字家「モブ・・?」 えっしー「そうモブ」 文字家「1人称アクションゲーの中ボスにしか見えないのだが・・」

ブラウザを開き、URLを手入力する。
ログイン画面にIDとパスワードを入力。
メニューを進み、ファイル一覧画面。
パソコンを手で押しテーブルの上を滑らせ、ななの手元によこす。
これが欲しいんだろうと、いわんばかり。
ぴろウき「未来を変える爆弾の全てのデータだ。勝手にダウンロードしてくれ。」
なな「(ファイルを保存する)作業は私がやっておきますので、隊長は話を進めてください。」
ヂェット「そうだな。頼む。」
ぴろウき「お前らに対する俺の一言目は、そうだな・・”その資料を全て読めば、過去を大きく変える行為が無駄だと判る”・・かな?」
マウスを動かしていたななの手が一瞬止まる。
ぴろウき「俺は・・俺たちは、今、この世界があるべき世界へ進みだす始まり・・第1歩だと思っていた。だが、違うのだ。逆だ、まったく逆だ。終わりだったのだ。」
ヂェット「いいね。そういう話を聞くために、部屋の隅でじっと待っていたのだ。」
ぴろウき「始まりの並行世界は別にあった。あの狼に勝利した世界があった。そして、世界は理想へ向けて少しずつ変化を始めた。」



ぴろウき「しかし、世界は理想的にはなりきらず、ある地点から振り子の様に戻ってきたのだ。」
ヂェット「ううむ。」
ぴろウき「我々の過去を変える行為が、歴史に対し傷を負わせる行為であるかの様に、傷は癒えていった。すなわち、元に戻って行ったのだ。」
ヂェット「話の途中で悪いが、お前はなぜそう言いきれる。」
ぴろウき「計算で導き出した答えさ。研究中にやっさ・・瀬瀬博士が水槽のチャイが知覚した時間方向、可能性方向の映像をスーパーコンピューターで解析する技術を創り出した。俺たちは当然、計画のために様々な可能性を解析した。そして・・知った。」
ヂェット「なるほどな。」
技術の詳細は理解できないが、納得するには十分。
ぴろウき「傷が塞がり、かさぶたがはがれ落ちる瞬間が、俺たちの敗北だったのさ。」
ヂェット「そいつはいいなwww。」
ぴろウき「馬鹿野郎ww始めて知ったときは、そりゃあがっかりしたんだぞぉ。そして傷を治す役割を担っていたのが、瀬瀬博士。その人さ。」
ヂェット「ほう。」
ぴろウき「彼は、始まりの並行世界には存在しない。これは憶測だが・・彼一人の代わりに200人を越える科学者を俺は投じてた・・はずだ。彼は歴史が用意した最強のワクチン。考えてみりゃあおかしいんだよ!この銀河の辺境の田舎星に、あのような天才と言う言葉ですら足りない男がいるなんて。」

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第44(終):おおむね大団円  1/3

2011-04-10 22:39:50 | 日記

宇宙人は柴犬と



第44:おおむね大団円

【某月某日】
羽田空港に着陸する、テー家の宇宙船オンバク号。
着陸後、空港の隅へと移動して行く。
滑走路の外側を走り、オンバク号へと向かう3台のパトカー。
豪華絢爛の言葉そのものであるオンバク号。
ウルト「偉そうな船だな。」
2台目のパトカーの後部座席に座っていたウルトがそう言うと、ぴろウきを挟んだ反対側、ドアに肘をよっかけて頬杖をついていたエールラーがちらっと彼の方を見た。
おっといけない。
テー家の人間が一人ここにいた。
助手席には文月ななが座っている。
中学生だった彼女も、今年19歳。
後部座席真ん中のぴろウきの膝にはチャイに似た幼女が一人、すやすやと眠っている。
オンバク号の入口が開く。
案内役で現れたのは、騎士団の精鋭、天才のラシ。
エールラーが胸に拳を置きラシに礼をあらわす。
騎士団でラシはエールラーの上官だ。
なな「・・・」
ななはオンバク号の造りのよさに関心していた。
ドアのホワイトパールの塗装は、永い航海を経て陰りすらなく、柔らかく美しい光を放っている。
その分厚く重そうなドアが閉まるとき、例えばキーキーなどという安っぽい音はいっさいしない。
ズンと閉まれば強烈な密閉感、いや安心感を感じる。
内装も豪華で、とても宇宙船の中だとは思えない。
お城の中ですと言われた方がしっくりくる。
応接室に通されると、狼頭王と騎士団長ナンプラーがすでにおり、出迎えのため立っていた。
ナンプラー「ようこそオンバク号へ。エールラーもこの5年、本当にご苦労だった。」
狼頭王「先ずは座って、お茶を楽しんでくれ。お互い、知らぬ仲ではない。」
彼はぴろウきの手元をちらりと盗み見る。
手錠が無い。
お茶を用意してくれたのはチャイ。
15歳。
相変わらずガリガリに痩せているが、表情は5年前より柔らかくなっている。
ぴろウきと目が合う。
ティーカップを置いたチャイの手に、すっとぴろウきが自分の手を添える。
ぴろウき「安心した。元気そうだ。」
彼女の姿を一目見せてやろうという、狼の計らいであることはわかっている。
見透かされ多様で悔しいが、ありがたい。
狼頭王「彼女も同席した方がいいかな?」
ぴろウき「いや結構。充分だ。それより・・」
抱いていた幼女をチャイに預ける。
ぴろウき「お前の妹だ。合うのは初めてだったな?」
チャイ「・・・」
ぴろウき「この子と遊んでやってくれ。」
チャイは自分によく似た幼女の手を引き、部屋を出た。
5人が囲むテーブルの横に100インチ程のモニタがある。
ナンプラーがペンのようなものを持ち空中で動かすと、ファイル名の一覧が表示された。
ナンプラー「(地球とメールでやり取りした資料は)すべて揃っている。」
最も古いファイルのタイムスタンプは1年半近く前だ。
ぴろウきが投降してきてから今まで、地球とテー家が交渉を続けてきた、その記録。

元々、テー家の要求はぴろウきと未来を改変する爆弾の技術の引き渡しだった。
地球側はその二つを探しはしたが、引き渡す気は無かった。
引き渡せばテー家独自の調査が進み、事実の全てを知った彼らが新たな要求をしてくるのを恐れていた。
交渉は慎重に進められた。
そして話は概ねまとまり、今や地球とテー家の合意は取れている。
今回の会談は、狼のたっての希望で実現した。
片道数日後かかるメールのやり取りではなく、直接会って話をしたいという。
地球側は結果せっかく決まったことが、白紙撤回されるのではないかとひどく嫌がったが、狼自らそれは無いと確約。
それでも地球側はうじうじといやがる。
最後は狼の願いを聞き入れざるを得なかった訳だが、かわりに宇宙警備隊を引っ張り出してきた。
宇宙警備隊は地球とテー家の交渉に知らぬふりを決め込んできたが、地球側に拝み倒された。
仲介役・・いや地球の賛同者、スケットとして来ている。
テー家はそれを全く気にしていない。
地球側が気にしすぎなのだ。
狼頭王「5年ぶりですね。」
ぴろウき「まぁ・・5年ぶりだね。」
狼頭王「こうしてゆっくりと話ができて、うれしいですよ。」
ぴろウき「こっちは落ち着かない気分だ。」
狼頭王「何故?もう、敵同士では無いのですよ?」
ぴろウき「俺にはやるべき事が山ほどあってね。その中でも狼頭王との会談はな、ちょっと重要なんだよ。」
狼頭王「地球側との話は終わっている。今日、これから君が何を話しても、決まったことは覆さないと約束した。」
ぴろウき「www。それはそれは・・安心した。何でも話せるなww。」
なな「ちょっと・・」
肘でぴろウきの横っ腹を突っつく。
”何を話すつもりなのだ?”と釘を刺している。
ウルトは知らぬ顔。
テー家の狼が変えぬと言ったのだ。
今更どんな爆弾発言、よもやの新事実を聞いても、地球との決めごとは1文字も変えないよ。
ぴろウきが席を立ち、ナンプラーからペン型のコントローラーを借りる。
使い方は聞かなくても何となく判った。
レーザーポインターにマウスの機能がついている。
ジェスチャーにも機能が紐付けられている様だ。
新しい物好きのぴろウきはちょっとジェスチャーを試して遊んだ後、無造作にファイルを1つ開く。
地球からテー家に送られた報告書の一つで、調査結果が書かれている。
斜め読みでじゃんじゃんページを送っていく。
ぴろウき「なんだこれは?」
ナンプラー「お前のことが書いてある。(内容が)間違っているのか?」
ぴろウき「いや、あっている。」
ナンプラー「じゃあ、いいだろう。」
ぴろウき「なんでこんなにつまらないんだ?」
なな「はい?」
ぴろウき「俺様の大冒険を、どうやったらこんなにつまらなく書けるんだ?」
なな「面白く書く必要が、何一つ無いからでは?」
狼頭王「ww。おもしろい男だ。」
ぴろウき「ちょっとまじになって話した方が良いな・・かんべんしろよ、何だこの家電の説明書みたいな文章は。」


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第43:ラスイチ  3/3

2011-03-27 22:54:29 | 日記

【3ヵ月後】
◆文月邸
東京都目黒区自由が丘にある豪邸 文月家。
ななの父(呑頭)と母(杏)が珍しく家にいる。
ななはいつもの高機能ウェアではなく、可愛らしいドレスを着ている。
親子3人並ぶその前に立ち、深々と頭を下げるじぃことギュンター・エールラー。
エールラー「お世話になりました。」
呑頭「こちらこそ、今まで娘が世話になった。ありがとう。」
杏「地球を離れることもあるのだろう?健康には気をつけるんだぞ。」
ななはむすっとしている。
杏「ほら、ななも言うことがあるだろう?」
なな「今までありがとう。」
両親の前では良い子でいたい。
小さく頭を下げる。
しばらくすると電話が入り、両親は屋上に止まっている自家用ヘリで現場に急行。
エールラーも身支度をして、サンドバッグのような袋を1つかついで出てゆく。
門まで追って来たのは文月なな。
彼女らしくも無い、不安を隠さない情けない表情。

その不安を示すように胸には犬のセブンを抱いている。
不安な気持ちでいっぱいだから、一人では追ってこれなかった。
目の前には、はじめて見る私服のエールラー。
なな「行くのか。」
エールラー「ええ。」
なな「それだけか?」
エールラー「は・・ぁ・・??」
頭を掻いてみるが、言うべき言葉は何も出てこない。
なな「お前は!この私に!それしか!言うことが!無いのか!?」
エールラー「・・お元気で。」
はずれだこの唐変木。
なな「本当にそれだけなんて、お前は大間抜けだ。」
諦めたようなその一言。
ぎゅっとセブンを抱きしめる。
エールラー「・・申し訳ありません。」
去ってゆくエールラーの後姿を、少女はいつまでも見ていた。

◆アオ・アン・ニー
東京本店 会議室の一つを改装したサーバー室。
狼頭王が視察に来ている。
そこに駆け込んできたのは、ギュンター・エールラー。
狼を見つけ、目を輝かせている。
姿勢を正し、敬礼。
狼頭王「入隊したのか?」
エールラーはテー家騎士団の服装。
エールラー「はい、本日からです。よろしくお願いします。」
おどろいた。
その台詞はテー家の言葉で発せられていた。
きょとんとした狼の顔に満足し、いたずらが成功した少年のような笑顔。
エールラー「テー家の言葉は、強制学習機を借りて1週間前から頭に入れております。」
あっ!見つけたと、ナンプラー隊長が頭から湯気を立ててドスドス歩いてきた。
ナンプラー「説明の途中で、私の前から断り無く走り去ったのは、お前が初めてだぞ。」
ナンプラーがこっちに来いと手で誘うが、狼の隣から動こうとしないエールラー。
狼頭王「ナンプラーも来てみろ。これからスーパーコンピューターの試運転だ。」
エールラー「綺麗ですね。」
2,051枚のマザーボードが長が羽を広げたように配置されている。
クリスタル製のパネルで正面を覆われており、美しいアゲハチョウを連想させる。
サーバー用マザーボードに搭載されるバタフライリンクを、最も良く印象づけるようにと考えられた。
テー家の地球向けインテル互換CPUシーリアムは、サーバー用、ワークステーション用、ノート用があるが、基本的には同じ物だ。
サーバー用はGPUが無いだけ。
ノート用はコアを半分減らし、4コア16スレッドにしているだけだ。
ナンプラー「デモは作曲・・でしたね。」
判っていないはずだが自分から質問をしてこないエールラーのために、ナンプラーが言葉お続ける。
ナンプラー「作詞は人間がやり、それに曲をつける。詞の言葉を理解し、イメージを膨らませ、曲を作る。感情の無い機械が人の思いを理解するのだ。」

◆宇宙警備隊
宇宙警備隊 太陽系方面ネットワーク 日本ノード。
その基地は荒川をまたぐ巨大な橋に見える。
基地内の作戦室に現れたのはなんと、男のガパオ。
若手ナンバー1のウルトが駆け寄ってきた。
ウルト「ヂェット隊長。お疲れさまです。」
何?
ガパオが・・ヂェット??
押収したチャンネル√4銚子倉庫地下施設の設備を使い、ヂェットの一般性活用ボディーを作成したのだ。
クローンの種は全てガパオ由来。
従って、出来上がった一般性活用ボディーはガパオそのもの。
寄生生物である彼(ヂェット)には宿主が必要だ。
文月家の人間は寄生先として完璧だった。
戦闘力、知力ともに極めて高く、おまけに社会的な地位も高い。
宇宙の平和に対し理解があり、秘密は守ってくれた。
しかし、ななが人前で変身をしてしまった以上、文月家の人間を宿主にするわけにはいかない。
ヂェットの所在は秘密でなければならない。
知られればタチの悪い輩に徹底的にマークされ、自分だけでなく宿主をも危険に晒すことにもなる。
ウルト「ぴろウきの捜索はあの二人に任せるのですか?」
ヂェット「ああ、はりきっていたぞ。得に・・なながな。彼女のバックアップはお前に任せる。いいな?」
文月ななの潜入捜査能力は極めて評価が高い。
ヂェットの宿主ではいられなくなったが、宇宙警備隊は彼女を手放そうとはしなかった。
初めは・・ななは引退して、普通の女の子に戻るつもりだった。
担当する作戦の内容・・いや、コンビを組む相手を知るまでは。
作戦の内容は疾走したぴろウきの捜索。
彼女は、事件当時ぴろウきの信頼が厚く、彼の事を良く知り得る存在だ。
捜索の担当者として、これ以上無い。
捜索は政治的な都合でテー家と合同になった。
テー家からは、やはりぴろウきを良く知り、日本の事情に明るい者が、担当者として選出された。
文月ななとも面識のあるその男。
テー家騎士団側の担当者は、ギュンター・エールラー。
彼の初任務になる。
ななはこの作戦を絶対に成功させるつもりだ。
良い実績ができれば、次の作戦でも同じコンビが組める可能性が高い。
文月ななはそれを知っている。

◆宇宙の家庭料理 さくら
地球防衛軍埼玉ブランチ内 定食屋 宇宙の家庭料理 さくら。
午後7:20
客はタイゾウ一人。
タイゾウ「ばぁちゃん。このビームエメラルドって美味いね。」
エメラルド色のカレーのような食べ物を、ご飯に混ぜてスプーンで口に運ぶ。
ちる「エメラルド星の食いもんだぁ。ナオキの好物じゃった。」
タイゾウはナオキという人物について何も知らなかったが、そういう隊員が過去にいたのだなと、適当に納得した。
がらりと入り口の戸が開く。
客だ。
もり香「らっしゃい!」
布和「よっ!」
威勢のいい挨拶。
もり香の顔が曇りに曇る。
もり香「まぁ〜た。あんたか。」
布和「はっはっはっ。俺の辞書に”諦める”という言葉は無いぞ。観念して入隊しろ。ばあちゃんには悪いが、給料はここの倍は出るぞ。」
もり香「給料じゃねーわい。金で買えないものが有るんだ。例えばパパドやワタシちゃ・・うぐ・・」
二人のかわいらしい笑顔を思い出したら、涙が滲んできた。
横でタイゾウの目元もヤバイことになっている。
チャイのことを思い出しているのだ。
タイゾウ「あの子達が帰ってから3ヶ月くらいになるんだな。」
声がふるえている。
ぽんとタイゾウの肩に手を置くもり香。
もり香「っと・・この切ない気持ちを分かち合えるのはお前だけだよ。極めて残念なことに・・。お前のような税金泥棒と心の傷を舐め合って、癒えるものか・・くっ、くそう。」
タイゾウ「えらい云われ様だな。毒塗りナイフのような言葉遣いはパパド譲りか?」
布和「おっと、タイゾウに言っておくことがあった。」
タイゾウ「何です?」
布和「く号兵器の解体が正式に決まった。」
タイゾウの顔に明るさが戻る。
布和「そんなにうれしいのか?」
タイゾウ「無い方が良いのですよ。肩の荷がおりました。」
布和「宇宙人の超大規模破壊兵器に対応しうる地球唯一の兵器として、保持を唱える者も多かったが、やはり日本だけが持っているというのが問題でな。なにしろ核兵器が豆鉄砲に見える、とんでもないエネルギー砲だ。各国合意のルールが決まるまでは所有は許されない・・だとさ。」
もり香「で?」
布和「で・・何だ?」
ちる「ここは飯屋だぞ。注文せんか。」
布和「はっはっ。じゃあいつものをもらえるかな?」
タイゾウの隣に座った。
布和「お前、えらい色の食い物食ってるな。」

◆チャンネル√4
沖縄。
チャンネル√4のデータセンター。
3階建ての平べったいビルだ。
合計80ペタバイトのストレージが有る。
動画やソフトウェアなど、√4のデジタル資産がすべて収められている。
そこに記録された情報は、著作権の侵害など法律に違反するもの意外、決して削除されることが無い。
忘れることができない頭脳。
社内の愛称はサヴァン(症候群)。
2階に有る隠し部屋。
男が一人入ってくる。
東方だ。
8畳ほどの狭い室内には先客が一人。
見たことのない男だ。
だが、その仕草、雰囲気・・すぐに判った。
東方「整形をしたのか?」
その男は首を横にふり、指で自分の顔の骨をペキペキとへし折ってゆく。
しかし複雑骨折をし崩れた顔は、あっという間に治ってゆく。
現れた顔は・・ぴろウき。
東方「ほう、便利なものだな。」
ぴろウき「言っておくが、結構痛いんだぞ。顔の骨を折るってなぁ。」
東方「これから、どうする。」
ぴろウき「瀬瀬博士を探す。奴が雲隠れした手際のよさもそうだが、失踪の前後に何の連絡もよこさなかったのが気になる。」


ああ、終わった。
全て終わりました。
皆様、今までお付き合いいただきまして、本当に・・
ぬわんつっちって、実はもう1話続くのです。
後日談の2段構成はやってみたい項目でした。
なぜならプロはやらないからです。
もし、1クール全13話で2話も後日談に使ったら・・
「そんなことやってるから、本筋がダイジェストっぽくなっちゃうんだよ!」
とか・・
「それだけ本筋が薄っぺらかったってことだよね。」
とか、マイナス評価でフルボッコに決まっております。
次回(最終回)は5年後、宇宙人は柴犬とで書いてきた”テー家宇宙船ドサ号墜落事件”の本当の結末です。

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第43:ラスイチ  2/3

2011-03-27 22:54:21 | 日記

【おわかれ】
ぴろウきが未来を変える爆弾の秘密とともに失踪をし、事件はまだまだ続く。
ドサ号墜落事件の被害者で有るテー家は、ぴろウきの身柄引き渡しとその爆弾の技術提供を求めたのだ。
だがしかし、その両方が行方不明なのである。
ナンプラーと互角に戦った東方も依然として行方不明。
彼はナンプラーと必殺技をぶつけ合った衝撃で吹き飛ばされ、絶命したと考えられてる。
音雨は高笑いしながら、自らの喉を切り裂いた。
彼は大勢のギャラリーの前で死ぬことに、快感を感じていた。
瀬瀬博士も行方をくらませている。
実は未来を変える爆弾の基礎理論はチャイが作り出したのだが、今それを知るのはぴろウき、瀬瀬博士、東方、タイゾウのみ。
タイゾウは今は亡き芹技博士から、その事実を聞いている。
タイゾウはチャイがこれ以上政治的なゴタゴタに巻き込まれるのを嫌い、知らぬふり。
地球側はテー家に対して誠意を見せるために、ぴろウきを何としても探し出さなければならない。
引き渡すかどうかは別問題だが・・。
さて、地球連合軍側についていた宇宙警備隊。
宇宙警備隊は決して自らの非を認めない。
全ての行動は、未来を変える爆弾の秘密を探る捜査の一貫だと言い切る。
たとえその行動がゆきすぎていても、あーだこーだ云々と正当化し譲らない。
それが宇宙警備隊だ。
地球防衛軍は一部非を認め、ぴろウきの捜索を約束した。
テー家による独自の捜索を認めないためだったのだが、結局、宇宙警備隊とテー家の合同捜査という形で認めさせられた。
宇宙警備隊もその爆弾には興味が有る。
未来を変える爆弾の秘密を巡る政治的な駆け引きが続く。
チャイとガパオはチャンネル√4に操られていたとして、罪を問われなかった。
アロイが強くガパオを擁護したこともあるが、水槽のチャイとガパオの脳内からその痕跡が見つかり、無罪の決め手となった。
と、いうか狼頭王もその姉弟二人を許したがっていた。
もし、彼らがテー家に恨みを抱いていても、それは無理のないことなのだ。
2人の生い立ちを考えれば。
アロイ、グース、パパド、ワタシ、チャイ。
テー家の子供たちは散歩する惑星でテー御領に帰る事になった。
事件後の精神的なケアも必要だが、マスコミの取材要請が強烈で、それから子供たちを逃す必要が有った。
マスコミにはアオ・アン・ニーの広報が対応しているが、当事者の声を聞きたいと非常に激しい。
大きな事件があったが、テー家にとって地球は重要な市場だ。
この複雑で微妙な問題を解決するために狼頭王は地球に残る。

7月12日。
テー家の子供たちが、帰る日。
マスコミ対策で、この日程は一部の者しか知らない。
もり香はパパドとワタシちゃんをファミリアで空港まで送る。
いつもの大爆走と違い、ゆっくりと安全運転。
常に全力全開での疾走を前提に組み上げられた魔改造BG8Z(ファミリア)が、お母さんが運転するブレッド&バターカーの様にトコトコと道を行く。
移動中、言葉は少ない。
空港に到着。
駐車場にタイゾウのインプレッサを発見。
隣が空いていたので、そこにとめた。
指定のゲートへ向かうと、すでに皆揃っている。
アロイ、グース、チャイ。
子供たちは皆、帰る様だ。
テー御領に良い思いでの無いチャイは、タイゾウのところに残りたがったが、彼女には水槽のチャイのインターフェイスとしての仕事が有る。
地球へ残ることは許されなかった。
シュリケンはチャイにとても懐いている。
彼女が連れていくことになった。
見送りはアオ・アン・ニーの重役達。
王子のアロイが帰るのだから、当然来ている。
そして狼頭王。
狼頭王「パパド、オカーサンとワタシを頼んだぞ。」
パパド「はい。」
※パパドのお母さんの名前はオカーサン・ビリヤーニ・バトゥーラです。
 ちなみにワタシちゃんのフルネームはワタシ・ビリヤーニ・サグマトン。

パパドに手提げ袋を渡すもり香。
もり香「クッキーよ。」
パパド「結構重いですね。どんだけ焼いたんですか?」
もり香「いっぱい。1週間くらいもつから、毎日食べて。」
ワタシちゃんの前にゆくもり香。
もり香「だっこさせて?」
両手を広げるワタシちゃん。
もり香は地面に膝をつき、ぎゅっと抱きしめる。
頬ずりをする。
いよいよ出発の時間。
ゲートの向こうに歩いてゆく子供たち。
離れてゆく距離に比例して、もり香の目から溢れ出てくる涙。
もり香「いやあっ!いやだあっ!!あたし!パパドとワタシちゃんがいなくなったら、寂しくて死んじゃうもんっっ!!」
わんわんと泣きじゃくるもり香をタイゾウが抱きしめる。
気持ちは判る。
自分もチャイと分かれるのが辛い。
ゲートの向こうに小さくなってゆく、犬耳の子供たちの背中。
もり香「パパドぉっっ!!」
パパドは立ち止まり振り返ったが、アロイにぐいと背を押され、去って行ってしまった。
通路の角を曲がり、もう見えない。
もり香「うぐうううっ。やだあ・・あの子達・・私の中で・・うぐう・・こんなに・・こんなに大きい・・」
タイゾウ「よかったな。」
もり香「・・え?」
タイゾウ「それが判って、よかったな。」
もり香「ちくしょぉ」
タイゾウ「よしよし」
もり香「ちきしょお」
タイゾウ「きっと、また会えるさ。」
もり香「空中要塞盗んでパパドを追いかける。」
タイゾウ「いいから、落ち着け。」

同じころ、宇宙の家庭料理さくらに布和隊長が来ていた。
もり香を地球防衛軍に引き抜きたいという相談だ。
ちる「なぜわしに言う。もり香に言えばいい。」
布和「いやあ、仏蘭西原君はさくらの従業員ですから。引き抜いてしまって店が困らないか、聞いておかないと。」
ちる「だめだと言えば諦めるのか?」
布和「はっはっはっ。まいりましたね。」
ちる「その気の使い様じゃ、わしの正体に感づいとるんじゃろう。」
布和「全てお見通しですか。流石、情報の魔女。何でもご存知ですね。」
ちる「わしが知っているんじゃねぇよ。お前らが知らなすぎるんだぁ。」
ここで、急に神妙な顔になる布和。
布和「実は、あなたに聞きたいことがあるんですよ。」
ちる「ロクでもないことだろうが、聞いてやる。言ってみろ。」
布和「未来を変えることで過去をあるべき姿に変える。私はあの作戦の理屈、正当性は理解したつもりなのですが・・なんというか・・ずっと心の中でもやもやしている。作戦が失敗して残念なような、歴史が変わらなくてほっとしたような・・うまく言えないのですが、相反する気持ちが入り混じって整理がつかないのです。あなたはあの作戦をどう思いますか?」
ちる「ふん、これだからこわっぱどもはよ。」
布和「おっと、手厳しいですね。」
ちる「歴史なんか、そう変わるものかよ。」
布和「そうでしょうか?」
ちる「生き物は皆、業深い。得に人は問題を作る天才だ。つまらんことでも、頭の回るバカが大問題にしてくれるしな。仮にあの作戦が成功して歴史が変わっても、人である以上、ああでもないこうでもないと迷う。結局妥協を重ねて、今いるこのあたりに戻ってくるのさ。」
布和は目を瞑り、少し考えてから答えた。
布和「なるほど。そうかもしれませんね。」
ちる「なんにせよ、おめぇさんはよくやったよ。空中要塞の決死の作戦で、全員生還したのは今回が初めてだ。」
布和「仏蘭西原君がいましたからね。それが大きい。彼女は絶対にウチ(地球防衛軍さいたまブランチ)にもらいますからね。」

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