
平成23年7月11日(月)
坊寺山1,839.5m、小坊寺山1,826m、笠ヶ岳2,075.7m、鉢山2,041m、彦兵衛山2,050m、横手山2,304.9m
7月9日に梅雨が明けた。こんなに早い梅雨明けも記憶に無いが、今年は梅雨入りも5月中だったから暑くて長い夏になりそうだ。梅雨が明ける前から35度以上の猛暑日は連日だった。この分でいくと、昨年の猛暑を上回りそうな気配で、気候が変わったとは言うものの『節電の夏』という重い課題もあることだし、それに対処するという気持ちだけでも、既にうんざりというところだ。
雨の少ない梅雨で、今後は水不足の懸念もある。ダムの貯水量が減少したので既に取水制限も始まっていると聞く。この上更に給水制限までじゃ、堪らないなあ。雨が少なかったとはいうものの、週末になるとお天気には恵まれず、この1カ月あまり山に行けなかった。土曜に梅雨が明け、今回月曜が振り替えのお休みだったので、さあ山に行きましょう。
梅雨明け登山の第一弾。とにかく暑いから、少し標高の高い山に行くことにした。暑いのは大の苦手…なので。
標高2,000m級の志賀高原周辺の山はどうだろうか?岩菅山周辺を除いては、志賀山くらいしか登っていない。数年来気になっていた志賀高原のシブイ山である坊寺山を手始めに、20年前に登り損ねてそれっきりの笠ヶ岳、それに鉢山から横手山までの往復と、全部歩くと結構な歩き手があるが、あるいは鉢山から赤石山のピストンにしても良いかな?等と、坊寺山と笠ヶ岳以外は流動的として、日曜の夜、雷雨が晴れた家を出発した。
草津温泉から白根草津道路を上る。硫黄臭い夜道を走り、渋峠でちょっと止まって車の外に出たら嘘のような肌寒さ。月明かりに照らされ雲海をまとった志賀草津の山々を眺め、志賀高原に下る。石湯の標識を見て左折し、石湯ロッジ先にある坊寺山登山口の駐車場に11時少し過ぎに着いた。ここはゲンジボタルの名所であるらしく、この駐車場へも午後6時から午後9時まではホタル見物のために進入禁止と看板が立っていた。広い駐車場?広場の周囲にはぼんやりとした明かりが灯され、ホタル見物の人のための照明にしているようだ。まるでお化け屋敷のぼんぼりみたい…。早速シュラフに潜って寝ようとしたら、ホタルがすーっと明滅して飛んでいる。車から出て、ホタルを見ようと思ったが、ホタルは少なくて、あっちで一匹すーっ、こっちで一匹すーっと、といった程度で集団では飛んでいない。そういえば、何を隠そうぼくの家でもホタルが飛ぶのです。近頃めっきり少なくなって、今年はとうとう見なかったなあ…。10年くらい前は幾つも飛んでいるホタルを捕まえて、家の中で明滅させて楽しんだものです。
ホタル見物はあきらめ、アラームを5時にセットしてシュラフに潜って寝てしまった。
明るくなって目が覚めた。5時少し前、もう既に夏の強い日差しの前触れがこの高原にも降り注いでいる。車の外に出て、この駐車場全体を眺め渡すと、角間川に沿った円形の準湿地の様な所で結構広い。直ぐそこには朝日を浴びて坊寺山の手前にある小幕岩の岩峰がそそり立っている。坊寺山はここからは見えない。
パンを食べ、支度をして5時35分に坊寺山を指す標柱に導かれ、角間川を飛び石で渡って身の丈を越す笹の切り開きの登山道を進む。周囲は白樺の林で、朝露を一杯に付けた笹の葉を分けて進むのでびっしょりになる。しばらく行くと薄暗い沢の出合になり、『70m沢登り』と書かれた標柱があり、そこから石のごろごろした枯れた沢を詰める。『坊寺山→』の標柱を見て、そこからは尾根を登る。まだ6時にもならないのに、登っていると汗びっしょりになる。振り返ると、木々の隙間からアンテナが立つ横手山が見えていた。
ゴヨウマツやサワラの茂る薄暗い急な登りは幾らも続かない。直ぐに目の前が明るくなって肩のような所に登り上げ、その先に少しで坊寺山の山頂だった。6時23分坊寺山頂着。1時間も掛からなかった。夏の陽射しはもう朝とも思えない。やや霞んだ景色は、これからどんどん暑くなっていくことが予想されるような雰囲気。二等三角点と坊寺山頂の標柱が立ち、東側しか眺めは無い。直ぐ下の国道の上に赤石山・裏志賀山・志賀山・鉢山・横手山・草津白根がシルエットになり、北に見えるはずの笠ヶ岳はここからだと木々に遮られて見えなかった。
写真を撮って、少し休み6時48分に山頂を下る。直前に一人ハイカーさんが登ってきて入れ替わりになった。山頂直ぐ下の肩から右に笹の切り開きがある。黄色いテープが付いている。ここが鞍部をつたわり、小坊寺山へのルート入口だ。この道も地図には記載が無いが、笹は良く刈られて手入れされている。ホンシャクナゲが花期も終わりといった所で、名残の花を咲かせていた。行く手には小坊寺山がそそり立って見えている。鞍部まで下って、また急な上りを登り返す。小幕岩の岩壁が良く見え、7時22分に小坊寺山頂に登りついた。ここからは横手山や笠ヶ岳の眺めが良い。笠ヶ岳から南に下る尾根に2つ程目に付く山があった。笠ヶ岳の直ぐ下に小笠のピーク、その下に低く剣ノ峰のピークだが、剣ノ峰は3つのピークをもつ岩峰で中々見事な山だった。残念ながらこれらの山には登山道はない。登ってみたくなるような山だが、多分藪が相当ひどいだろう。
小坊寺山頂には標識類は何も無い。ここの方が坊寺山よりも眺めは良い。7時35分に小坊寺山を下る。少し下ると2本続いてゴヨウマツの巨木がある。巨木といっても低い位置から株立ちになって、幾本もの幹が伸びている。樹齢は数100年だろうか、2本同じ様な木が続いてあるところが珍しいかな?2本とも見事な古木だった。しばらく樹林の中を下り、坊主すべり岩の岩場に出る。その下は岩ガレになって眺めが良く、下の石湯の旅館群と「りんどう平」の丸い湿原が見下ろせる。坊寺山から小坊寺山に続いて、この岩ガレの稜線が外輪山で、りんどう平が火口の跡だろうか?何となく、見下ろすこの地形はそんな様子だ。
痩せた岩尾根から再び樹林に入り、そのままりんどう平に降りた。りんどう平の手前の砂礫地はロープで囲いがされ、コマクサが沢山咲いていた。ここのコマクサは株が大きく見事な花を咲かせている。コマクサの写真を撮っていたら温泉の泊り客らしい年配のご夫婦がやってきた。
りんどう平はモウセンゴケが絨毯のように広がっていた。ここから見上げる坊寺山と小坊寺山は、手前に湿原を置いて箱庭のように形良くまとまった景色だ。坊寺山の周回は、小振りながらなかなか楽しい山歩きだった。
砂礫地を下っていくと直にシラカバの林になり、角間川を丸太橋で渡り石湯ロッジの下に出る。川沿いに歩道を進んで駐車場に8時45分に戻った。
さて、次は笠ヶ岳へ向かう。車に乗り、石湯入口の分岐から、高山村方面の標識に従って細い道に入る。営業していない笠ヶ岳ロッジの脇を通って、山道を上っていく。樹林のヘアピン上りになって、山ノ内町と高山村の境にある笠岳峠の茶屋の駐車場に車を停めた。見上げる笠ヶ岳は直ぐ真上。覆いかぶさるように近い。茶屋はロープが張ってあり営業していない(降りてきたら、おじさんが店を開いていた)。ぼくが車から降りたら、一台車がやってきて停まった(すぐ後からこの車のハイカーさんが登ってきた)。
早速登山口から9時2分に登り始める。初めは木の階段をらせん状に巻きながら登っていく。この笠ヶ岳は、今から20年前に、この同じ峠から登ろうとして登らなかった山だ。あの時は雨飾山・北アルプスの白馬岳小蓮華山に登った帰りに志賀山に登り、笠ヶ岳もと思って、どういうわけかこの峠まで来たのに登らなかった。何故だったのかは思い出せない…単なる気まぐれかな?
木の階段が一段落すると、擬木製のばかに高低差がある階段になる。階段は疲れる…。振り返ると、もう下に小さく峠越えの道路が見え、さっきの車の主が登ろうとしている様子が見えた。笠ヶ岳とは道路を挟んだ向こうに小笠のピーク、やや低く剣ノ峰が見下ろせる。らせん状が終わるとおそろしく急な、これも階段がずっと続く。北側に巻き込んで、岩場が崩壊したとかで岩を登るコースは通行止めらしい。ロープが垂れた岩がちの登りの先で傾斜が緩むと、目の前に赤っぽい砂岩の塊が現れ、山頂だった。9時25分笠ヶ岳山頂着。23分で着いた。山頂の東側は全体が岩場になって岩の上が一番高い。高い岩の外側にはロープが張ってあり、崩壊しているので立ち入り禁止と書いてある。二等三角点は赤ペンキが全体にべったり塗られていた。
笠ヶ岳山頂は北側に少し樹木が邪魔をするが、ほぼ360度の展望台だった。湧き上がる雲も山に幾らかは巻きついているが、志賀草津のほぼ全ての山が見えている。御飯岳だけは雲が被っていた。長野県側は中野市街地が見える他は低い雲に隠れている。北アルプス方面も雲で見えない。ここからは坊寺山よりも更に近く横手山が手に取るように見える。一番高い岩の上で眺めを楽しんでいると、直に後続のハイカーさんが上がってきた。おむすびを食べてしばし休む。9時53分に頂上を降り、10時8分に駐車場に着いた。あっという間だ。
さて、次は林道を下り、再び石湯分岐から国道を少し渋峠方面に戻って、硯川の硯川ホテル向かいの駐車場に車を停めた。『志賀高原池めぐりのハイキングコース』が始まるところで、ここからリフトが一段上の前山湿原に上っている。その一段上の湿原には、南側から迂回して登るようにハイキングコースは付いている。10時25分に駐車場から登りだす。スキー場の中を登っていくと南側から巻くように前山湿原に登り上げた。リフトから降りたハイカーや自然観察ガイドに連れられた集団が居るが、平日なのであまり人は多くない。前山湿原から南を見ると笠ヶ岳は砲弾の様に突き立って、南面の岩壁が急峻で登れそうも無い様な雰囲気だ。前山湿原はワタスゲが風に揺れていた。湿原を横切り、しばらく林間の広い道を行くと渋池に着く。横手山を背景にして、ワタスゲが浮島に揺れるなかなかの景勝地。ここと、その先の四十八池湿原は志賀山に登った時に見ているわけだが、余り記憶が無い。家に帰ってから昔の写真を見たらちゃんと写っていた。
自然観察の集団を追い抜き、静かなオオシラビソやコメツガの樹林をほぼ平坦に進む。11時19分に四十八池湿原に着く。休憩舎に数人、志賀山を背景にした湿原の木道にも疎らに人が居るが、いたって静かなものだ。湿原で大分写真を撮った。湿原の南側にはアヤメの青い花とコバイケイソウが目立つが、点々と見えるワタスゲの他は全体として花は少なかった。一株だけ咲き残ったミズバショウの花があった。ここは志賀高原でも一番の観光スポットだから、シーズンの休みには人が一杯のハズ。人が少ない今は、だから山上の楽園の様な所。しかし、今日は陽射しも強くて木道で立ち止まっていると暑いほどだった。11時42分に湿原を後に鉢山に向かう。丁度入れ替わりに自然観察の集団がやってきたので、騒がしい時は回避できて良かった。鉢山から横手山に向かうコースは、その後は全くヒトケも無く静かだった。
四十八池から一登りで赤石山方面への分岐を分け、12時7分に鉢山に着く。鉢山山頂は鉢山の外輪山の一角ということ、火口に当たる部分中央に鉢池という火口湖があるらしいが、山頂は樹林に囲まれて道の途中のような所。鉢山の説明看板と方面標識があった。それによると、横手山までまだ2.9㌔あるらしい。鉢山を下り、硯川・熊の湯への分岐の先を少し行くと草津峠に着く。峠と有るが、いたって峠らしさは無い。ガラン沢方面は危険、遭難多発地帯という説明書きがあり、下り口に立ち入り禁止の看板がある。笹の切り開きは良く手入れされて、歩き易い。少しずつアンテナが立つ横手山が近づいてくる。
それは別として、急でもない道を普通に歩いているだけで汗が滴れる、暑いなあ。赤石山や岩菅山が見える。彦兵衛山を越えると一旦下って、横手山の最後はスキー場内を直線に登ったり、ジグザグに樹林を登ったりで最後の300m程はかなりきつい登りだった。汗でびっしょりになり、右に渋峠からのリフトを見て、コンクリートの舗装路に出ると、山頂に上り上げた。ホテルやリフト駅が建ち、大きなアンテナと変電施設がある。ここまで裏側から関係者のみの道路(ホテル宿泊者は入れる)があるので、車が停まっている。いきなり場違いな所に出てしまった様な気分で、少しガッカリする。
山頂部東側の群馬県側のリフト降り場の脇を少し進むと、絶壁の縁が山頂だった。14時6分着、鉢山から結構遠くてきつかった。山頂には二等三角点と横手山神社があり、岩の先の絶壁にはロープが張ってある。絵を描いていた若者(観光客)が一人居たが他には人も居なかった。彼も直ぐに去っていった。南や西の展望は良いが、湧き上がるガスで余り良く見えない。群馬県側の北の方には黒っぽい雲が見え、どこからともなく遠い雷の音も断続的にしてくる。しかし、上空は青空が広がって直ちに雷が来るような気配は感じられなかった。14時47分に山頂を後に往路を引き返す。横手山直下の急な下りを下り、スキー場を通過して彦兵衛山の登り返しはとてもきつく感じた。
草津峠まで戻ってきたら、そこに見覚えのある人の姿…もしやと声を掛けたら、すかいさんでした。去年白髪岩で2回すれ違ったこともあって、良く会います。ちょっとお話をして別れた(すかいさんはとっても穏やかな紳士です)。
硯川分岐から蛇行するような道はやや遠回りな感じで時間が掛かった。国道に出たら、そこから硯川までは、まだ大分距離がある。最初から横手山スキー場の中を下ってきた方がずっと早かった様だ(でも、そうしたらすかいさんには会いませんでしたね)。16時21分に硯川の駐車地点に戻ってきた。一日良く歩いた…合計で10時間あまりのハイキングだった。
帰りは草津の湯に入りたいところだったが、静かな六合の道の駅にある応徳温泉くつろぎの湯に寄る。地元のおじいちゃんが3人くらいいたが、ゆったりとほんのり硫黄の臭いがする温泉は気持ちが良かった。沢山歩いたからなのか?足の裏が痛かった。
温泉から出ると外は雷雨。暮坂峠はかなりの降りだった。でも中之条の町に出たら空は雲ひとつ無く晴れ、またすっかり猛暑の中だった。途中で夕飯を食べ、家路に着いた。
志賀高原とか中信高原とか、山・森・草原・湿原・池や湖と変化があり、とても素敵なところです。残念なのは、観光道路が縦横に走り、観光地になってしまっていることですね。そんな訳からこういったところにある山々は余り登っていないのですが、時期やコースを選べば静かな山歩きができますね。志賀高原も池めぐりコースは人が多いですが…。
そんな訳ですから、草津白根・本白根も山頂には立っていません。
節電の今年、涼を求めて現役最後の年に入手の山と高原地図17持参で徘徊予定です。
坊主山、志賀のお山の全景が見渡せてよさそうです。テントの台座が車検中で、女王様は来年になるかもしれませんがしっかりとストック棚に入れさせていただきました。
志賀高原周辺には沢山の山があります。
人気の山もありますが、結構穴場もあります。
ですから、案外静かなハイクを楽しむことも可能ですね。涼しいのは、確かに下界に比べればですが…陽射しが強いですねえ今年は。暑かったです。
ちなみに坊主じゃなくて坊寺山です。