元妻は境界性パーソナリティ障害だったのだろうか

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(41)マーシャ・リネハン博士、闘病体験を公表-2

2011年01月19日 | 境界性パーソナリティ障害



『責務を果たす』

『自殺企図のもっとも深刻な患者さん、最悪の症状の患者さんが私の治療対象です。世の中にこれ以上哀れな人はいないでしょう。自分は邪悪で、常に自分はダメなんだと思い込んでいます。しかし、それは違うのです』と博士は語る。『私は患者さんの苦しみをよく理解できます。私もその地獄の苦しみを経験し、そこから逃れられるとは思ってもみませんでした。』

現在、博士は主に境界性パーソナリティ障害の患者を治療する。博士が、過去の自分自身の症状を診断するなら境界性パーソナリティ障害に違いないと言う。この病気は理解が難しい。特徴は、愛情飢餓、爆発する怒り、自己破壊欲求などで、刃物やタバコの火で自傷する場合もある。対人操作、敵対行動をし、時には沈黙を続け、自殺予告などにより周囲をパニックにする。

患者を治療に繋ぎとめるもの、それは受容であると博士は明言する。患者は、怒り、空しさ、不安を、一般の人以上に強く感じる。先ずは、こうした自分の感情や、ありのままの自分自身を受容することだ。その次に、治療者は、患者の自傷行為や自殺企図など全てのものを受容する。自傷や自殺企図には何らかの意味がある。

患者から『自分の行動を変える』という意志を引き出すことが重要だ。この意思表示なくして、生きるチャンスを手に入れることはできない。『治療意欲のない患者さんに、心理療法の効果は期待できません』とは博士の持論。

1977年、博士はアメリカ・カトリック大学からワシントン大学に移籍するという栄誉を得るが、このような成功を得たからと言って、自己受容や変化が達成できる訳ではない。博士はそれを経験済みだ。ワシントン大学に移籍後、シアトルで数年過ごしたが、出勤のため車を運転中、希死念慮に襲われたことが何度かある。今でもこのパニックは起こり、最近では車でトンネル内を走行中に起こった。博士自身、長年臨床心理士のもとに通い援助や導きを得てきた。しかし、博士の覚えている限り、いのちの研究所を出されて以降、服薬による治療はしていない。

リネハン博士による新しい治療法、弁証法的行動療法(D.B.T.)には、日常生活に応用できる対処法がある。ここでは『誓約』に重点を置かない。誓約を守る力を身に付けていなければ、誓約は意味をなさないからだ。博士は、既存の行動療法を土台とし、それに反対行動法、瞑想法(マインドフルネス)など独自の技法を加えた。反対行動法では、不適切な感情が湧き上がった時、自分の欲求と正反対の行動を試みる。瞑想法とは、呼吸に集中し煩悩の去来を達観する禅行を取り入れたものだ。今日、様々な心理療法が立ち上げられたが、瞑想法は、ほとんどの心理療法に取り入れられている。

1980年代から90年代に亘り、ワシントン大学を始めとする研究者たちは、弁証法的行動療法を受けた患者たちの追跡調査を行った。調査対象は、重篤な自殺企図のある境界性パーソナリティ障害を抱える患者たちで、週に一度、弁証法的行動療法を受けてもらった。他の医師の治療を受けた患者と、弁証法的行動療法を受けた患者とを比べると、リネハン博士の治療法では、自殺企図者の数、入院措置となった患者の数が際立って減少しており、かつ患者が治療を継続するという傾向もはっきり見られた。弁証法的行動療法は、今日、青少年犯罪、摂食障害、薬物依存者など幅広い分野で使われている。

『弁証法的行動療法がこれほど脚光を浴びるのは、それまで治療不可能とまで言われた難題に取り組んでいるからでしょう。境界性パーソナリティ障害には治療法がなく、混迷が続く状況でした』とリサ・オンケン(Lisa Onken)氏は語る。オンケン氏は、アメリカ国立衛生研究所、行動理論及び統合治療法部門の代表を務める。『この治療法は、地域医療に携わる臨床心理士の間に広がりましたが、その理由は、リネハン博士には人を惹きつける特別なものがあり、博士のもとで学んだ臨床心理士の支持、それ以上に患者さんの支持を得たからです』

意を決し、博士がご自身の体験を公表に踏み切ったことは、更なる脚光を浴びるだろう。博士は自分の責務を果たした。『私は今幸せを噛みしめています』と気持ちを自宅で述べる。自宅は研究所キャンパスの近くにあり、養女のジェラルディーン(Geraldine)とその夫のネイト(Nate)たちと共に暮らす。『気持ちの浮き沈みがあると言っても、今では一般の人が日常で感じる程度のものです』

博士が闘病体験を講演したのは先週のことだ。講演後、博士はあの隔離室を訪れた。そこは改装され事務室になっていた。『あら、窓が造り変えられている』そう言い博士は両手を広げた。『今は、あふれるほどの光ね』




患者を救済し続ける原動力



ビデオ下の脚注

マーシャ・リネハン博士は、ワシントン大学の臨床心理士、心理学研究者。博士は境界性パーソナリティ障害で苦しんできた。若かりし日、ある信仰体験により自分は変えられたと当時を語る。

ベネディクト・キャリー
2011年6月23日公開




命の回復

患者を救済し続ける原動力

マーシャ・リネハン博士の肉声ビデオを私訳


私は、チャペルに隣接するラウンジの椅子に腰かけてました。今でもはっきり覚えています。絶望感に押しつぶされ、そこに座り込んでいました。修道女が私のそばを通り過ぎましたが、私を気にかけたのでしょう、振り返り『何かお困りですか?』と尋ねてきました。この絶望感は、誰にもどうすることができないと思い込んでいたので『大丈夫です。ありがとうございます』と謝辞を述べると、修道女はその場を去りました。

私は椅子から立ち上ると、チャペルに入り、ひざまずきました。特に何をしたかった訳ではないのですが、もしかしたら、死にたいとかそういう言葉を口にしていたかも知れません。ただ祭壇に架かる十字架を仰ぎたかったのです。すると、全く予想しないことが起こりました。晴天のへきれきです。突如、キラキラと輝く黄金色の輝きに包まれたのです。キリストの十字架像が輝き、礼拝堂全体が輝きわたり、そして『神に愛されている』と実感が湧き上がりました。自分でも信じられないような体験でした。

チャペルを飛び出し自分の部屋に戻ると、私は『自分自身を愛してる』と大きな声で言ったのです。部屋の中で、立ったまま。そのあと『間違いなく、完全に自分は変わった』と感じました。と言うのは、それまでの私には、自分自身を愛するなどと言う感覚がなかったからです。ずっと、自分自身を他人のように感じていました。今日、自分を見失い取り乱す事はなくなりましたが、それは『自分自身』という言葉が出たあの時からです。


動画最後の字幕 注記参照

『私に起こった変化は信仰体験によるものですが、これが誰にでも起こるものだとは思いません。ほとんどの人の場合、変化というのは、本人が気付かないほど徐々に起こるものでしょう』

マーシャ・リネハン


注記 この記事に掲載したYouTube動画は、NYTimesのウエブサイトに掲載された古いバージョンのものでこの字幕は載っていませんが、その後の新しいバージョンの動画には、この字幕が付け加えられています。




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