朝日新聞デジタルの「9―3÷1/3+1=? 新入社員の正答率4割」なる記事が少し話題になったようだ(いわゆる魚拓のようなものをとっていないので、結果としてどのように補足が入るか不明だが、私がはじめに記事を読んだ当初は本文に「1/3」が3分の1を表すことと、答えについての記載はなかった)。
この手の話題が出ると、男は真面目に解こうとし、女は解けないフリをして男の品定めの指標に使うのだろう。観察していると楽しい。
表題をそのまま読もう。「/」ことスラッシュは、「国民の2/3が賛成した場合」といった文脈で使われた場合は「3分の2」の意である。なんとなく「÷」より強そうで、分数の問題のようだ。カッコつけとくか。(9-3÷1)/(3+1)。分母の足し算はできるので4、分子で計算力の差が出て、
- 6/4 =3/2 = 1.5 ..解1
- 3/4 = 0.75 ..解2
スラッシュは前後ひとつの数字にしか影響しない。「1/3」は分数だ! で、「割る3分の1」って、、
- 3で割ると同義! 6割る3足す1 = 3 ..解3
- 同、9-1+1 = 9 ..解4
- 分数の割り算はひっくり返すので3を掛ける! 6掛ける3+1 = 19 ..解5
- 同、9-9+1 = 1 ..解6
、、、と、バカの考えそうなことを羅列するのはやめろ、と。はい。つづきは読まなくていい。
スラッシュは、プログラミング言語で除算記号である「÷」のかわりに使われることが多い。そもそも除算とはなにか。小学校に戻ろう。
みかんが10こあります。3にんでわけましょう。ひとりあたりなんこいきわたりますか?
10÷3だ。こたえは「3こ、あまり1こ」だ。余ったよ。どうしよう。
かわをむきました。10ふさありました。
じゃ、「3こと3ふさと、あまり1ふさ」だ。余ったよ。どうしよう。
うすかわをむきました。100つぶありました。
じゃ、「3こと3ふさと33つぶと、あまり1つぶ」だ。余ったよ..........
くりかえす。戻ろう。答えは「3個、あまり1個」。10÷3 = 3 … 1 だ。「3人で一斉に、1個ずつとる」ことが3回できて、1個余って取り分け行為停止。皮なんて剥かなくていい。
じゃあ、みかんが3個あって、1/3を何回とれるかというと9回だ。そういうことだ。逆にして掛ければいい、なんてそんな学習するな。なぜそうなっていたのかを思い出せ。
ちなみに、ひらがなで問題文と答えを書いたのは、先日ラジオで聴いた翻訳家の話を参考にした。彼女が、「小学生が三人称で書いた文章」というものを翻訳していてしっくりこず、実際の小学生の作文を読んでみたところ、学年に応じてそれまでに習った漢字は漢字で、習っていない漢字はひらがなで表記してあることに気づいたのだという。
以上、文系の人向け、おしまい。
で、理系の人向け。本文を読むと、
ある大手自動車部品メーカーが、高卒と大卒の技術者の新入社員をテストしたところ、正答率は4割にとどまった。中部経済連合会が3日に発表した、ものづくりの競争力についての提言に、能力低下の事例として盛り込まれた。
とのことだ。由々しきことである。当該のくだらない提言の中では、分数はきちんと分数である。
「最近の若いもんは、分数の割り算もできんのかぁ~」ではない。現状の、採用される側もする側も地獄の就職活動を経て、採ってきたエンジニアの卵は、文系のお偉いさんや新聞記者や一般の人にはこんな基準で見られているのだ。
「算数テスト」だから、「÷」を算数風に解釈しろとでもいいたいのだろうか。企業はこの設問に対して静かに正解だけを書いて提出するような人間を製造せよと高校・大学に求めているのだろうか?
このエントリーの前半に書いたような解釈を延々と書き連ね、同期からカンニングさせろという圧力がかかっているのにそれを拒絶し、試験官に猛然と抗議する、そんな新入社員を無下に扱うことがまかり通っているのならば、いよいよ、この国は終わったと言いたい。ヤマトはイスカンダルには着かないっす。ってか、そもそも、ヤマトはなぜコスモクリーナーDを取りにいかねばならなかったのか、知ってる人はあまりいないし、調べる人もあまりいないし、知っていると自慢すると「気持ち悪い」と一蹴されるっす。そんなもんっす。
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