春も夏もとっくに過ぎて、気がつけば9月も終わる。
保存したネコの写真を削除することもできずに、秋を迎えた。
雪がまだ溶けぬころ、小さな黒猫がベランダに現れた。
にゃぬこではなかった。
顔を合わせた時だけエサを出してやった。
春。大きなお腹で歩いていた。
ゴールデンウィークのころ、姿を見なくなった。
それが、5月の終わりころ再び姿を現した。
お腹は小さくなっていた。
7月のいつだったか、朝カーテンを開けると、4匹の子ネコと母ネコがいた。
捕まえようか。一瞬迷ったやめた。
そして、放置した。
夕方、仕事から帰ると、ネコたちの姿はなかった。
8月。再びネコたちは姿を現した。
子ネコたちはかなり大きくなっていた。
迷いながら、悩みながら、私は再び放置した。
夕方、ネコたちはまだいたが、私はカーテンを閉めて無視を決め込んだ。
朝には何処かに姿を消していた。
おそらく母ネコは、ここが安全な場所だと思ってくれたのだろう。
顔を合わせさえすればエサが出る。
そう思ってくれたのだろう。
でも。
私は子ネコたちにエサを出さなかった。
もう、私は命に手を出さない。
そう決めたから。
たまに訪れる母ネコに、茹でたささみを丸ごと放って後は知らんぷり。
母ネコはそれをたべることなくくわえると、一目散に何処へともなく帰って行った。
ああ。。。子ネコのもとに向かったのだと思って、とても悲しくなった。
ごめんね。私はあなた達を助けてあげられない。
命を守ってあげることができない。
あの保護団体が、あなた達を幸せにしてくれるとは思えない。
あの団体の責任者に、あなた達を委ねる気にはならない。
私は間違っているのかも知れない。
でも、生老病死。全てを受け入れる野良ネコたちに
人間の思惑を押しつけていいのだろうか。
やがて9月初旬。
すでに大きくなった子ネコが1匹。
甘えた大きな声で庭を横切り、塀の向こうに姿を消した。
独り立ちしたのか・・・
「おかーさん。どこにいるの?」
そんなふうに泣いているようで、とても切ない気持ちになった。
その後、あの子たちがどうなったのか分かろうはずもないけど
精一杯生きて、死んでくれ。
それが、私の率直な思いだ。
先日、久しぶり(1ヶ月以上)にあの母ネコがベランダにやって来た。
すでにお腹は大きく膨らんでいた。
生きるって辛いことだと思った。