村上ファンド、出資元の6割は「大学財団・基金」

2006年06月14日 | news
彼を「その気」にさせたのは誰なのか
2006年6月13日 火曜日 田村 賢司

 力はそれ自体として存在するのではなく、物体と物体の間の相互作用として存在する。道を歩く時、足は地面を押し、地面は足を押し返す。あるいは、ジェット機がガスを噴射する時、ジェット機はガスを押し出し、ガスはジェット機を前方に押し返す、と、そんなものであり、称して「作用反作用」という。

 証券取引法違反(インサイダー取引)容疑による衝撃の逮捕から1週間。「村上ファンド」代表、村上世彰容疑者が逮捕の朝(6月5日)、「自白記者会見」で語ったインサイダー取引は、“偶発的”“ケアレスミス”によるものだったとの“弁明”は次第に色褪せ、当初から多額の利益獲得を狙って取引を主導した姿が浮かび始めている。

 上場企業の株式を大量取得して経営にモノ申す運用スタイルで知られた村上ファンドの落日は、「小学校4年の時、親に100万円もらって株式投資を始めた」といった伝説に彩られた村上容疑者の特異な個性の結末と取られがちでもあるが、実のところ、それは作用・反作用の片側に過ぎない。

 村上容疑者と我々は、互いに足と地面であり、ジェット機とガスではなかったか--。そう思える。

「大学財団は長期投資を指向する」という常識

一言断っておけば、村上ファンドは、投資ファンドとしばしば称されるが、あくまでもヘッジファンドである。その運用資産総額は約4400億円に上り、うち半分が投資家からの資金で、残る半分が運用によって上げた利益であるという。2000年初めに40億円足らずで始まったファンドは、2005年1月のニッポン放送株売却あたりから急膨張。資産額は一気に1000億円台から4000億円台へと駆け上がっている。

 そして、この巨大ファンドの投資家の6割が「欧米の大学財団・基金」(村上容疑者)であるという。同時に、最近世界でヘッジファンドへの投資を拡大させている企業年金も村上ファンドの主要顧客であると言い、これだけ見ればどうということもない。長期投資で、極端なリターンより安定運用を重視すると見なされてきた「おとなしい投資家」がお客さん、とうかがえるからだ。

 だが、その常識が全く違っているとしたらどうだろう。

実は大学財団・基金は、最も猛々しい投資家の1つなのである。例えば、村上ファンドへの投資家の1つと見られる米国の名門、ハーバード大学の基金の資産額は32億ドル、つまり3兆5200億円(1ドル110円換算、2005年6月末時点)にも上り、2004年6月まで10年にわたって年平均15.9%のリターンを上げていると言う。

ハーバード、イエール大学のファンドは超強気

 実際の運用を受け持つハーバード・マネジメント・カンパニーという関連会社は、175人のスタッフを抱え、自ら株式や債券などで買いと売りを両建てにしたロング・ショートと呼ばれる投資までしている。ある意味、彼ら自身が巨大なヘッジファンドなのである。
 同様にイエール大学、テキサス州立大学もそれぞれ約2兆円の資産を持ち、テキサス州立大の運用責任者は、世界最大の公的年金基金とされるカルフォルニア州公務員退職年金基金(カルパース)の運用幹部だった人物であり、イエール大は総資産の約60%をヘッジファンドをはじめとするオルタナティブ(代替)投資に振り向けているという。

 伝統的な株式や債券などの買い持ち投資を代替するものとしてその呼び名のあるオルタナティブ投資は、リスクヘッジとともに積極的な利回り向上が狙いだが、イエール大の場合は、ヘッジファンドのほかに、ベンチャーなど未公開企業への投資や不動産、商品、さらには森林資源など実物投資にも踏み込んでいると言われる。

 無論、運用の狙いは大学の運営資金を稼ぎ出すことだが、もはや彼らは「大学の競争力の基は、財務力にあるとさえ考え始めている」(ヘッジファンドに詳しい山内英貴・GCIキャピタル代表取締役CEO)ほどだという。

 そのため彼らは「資産運用のために常に世界中の優秀なヘッジファンドマネジャーを探し」、短期的に運用成績が悪化したからといってすぐに替えたりはしないが、「『代わりはいくらでもいる』とも見ている」(同)。あからさまな圧力はないにせよ、いつでも首をすげ替えられる無言のそれが、何らかの影響を及ぼした可能性はあるだろう。

さらに言えば、米国の極端な例だけでもない。日本の大学は、米国の姿にはかなり遅れているが、「次第に同様の動きも見せ始めている」(同)し、日本の企業年金も既にここ2~3年でヘッジファンドを含むオルタナティブ投資に振り向ける運用額を増やし始めている。着実に後を追っているのである。

その元手は我々の授業料や、助成金

 当然ながら、大学財団・基金の資金の基は授業料であり、助成金、寄付金である。そして年金は個人の年金保険料と企業の拠出金だ。いわば、みな「我々の」カネが、より大きなリターンを求めて動き始めた先に村上容疑者の事件があるのだ。

 運用資産額が400億~500億円頃までの村上ファンドは、「保有資産を使いこなせない企業にコーポレートガバナンス(企業統治)の強化を通じて、株主配分の拡大を求めるなど、一定の役割を果たしたが、規模拡大とともに変質した」とは指摘される通りだろう。

 だが、大学、年金など運用したい側の資金が膨大になって世界を駆け巡る今、成績優秀なヘッジファンドの膨張はいつでも起こり得る。そこに「村上的」個性が作用・反作用の一方として加われば…どうなるか。

 ヘッジファンド側は一定額以上の資金運用を引き受けないといった動きにも出るだろうが、それは別に新たなファンドを生むだけである。そして、増大した多数のヘッジファンドが、株価と企業価値の差など、わずかな市場の歪みに殺到すれば、取れるリターンは限られるから、無理をするファンドマネジャーがやがて現れかねない。

そこにカネが余っている限り…

 奥深いところには、世界的な資本移動の激化があり、過剰流動性(カネ余り)がある。そして、それを吸収しきれない実体経済の成長力の“限界”がある。足元の株価下落の裏に、米欧日の利上げドミノが世界のカネ余りを収縮させる兆しがあるにしても、利上げはいつか止まり、反転する。

 我々の資産を膨らませたい、という小さな欲望の集合がどこかでマネーゲームを引き起こす状況は大きくは変わっていないのである。

 証券取引等監視委員会による市場の監視機能強化などが必要なのは言うまでもない。資本の自由な動きと投資行動をつぶさないよう、しかし、暴走をさせないような対応が急務だ。



村上ファンド、出資元の6割は「大学財団・基金」 (田村賢司の順張り逆張り):NBonline(日経ビジネス オンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20060612/104122/?P=1






村上ファンド 4000億円出資者たちの狼狽 (ゲンダイネット)

 村上ファンドの崩壊でだれよりも慌てているのが、ファンドへの投資家たちだ。大口投資家の農林中央金庫がさっそく「資金引き揚げ」の検討を始めたが、村上ファンドの金主は他にどんな顔ぶれなのか。 報道によると、農林中金は数十億円を預けているという。もうひとつ、金主として有名なのがオリックス。村上ファンド設立当初からパートナーだったオリックスは昨年3月末で107億円を委託し、現在は百数十億円に膨らんでいるという。「オリックス宮内会長は村上氏に通産官僚時代から目をかけ、99年の村上ファンドの母体(エムアンドエイコンサルティング)設立では45%の株を引き受け(村上が48%)、ファンドの方にも宮内会長が自己資金から数十億円預けた。それに他の投資家からの資金を合わせ、40億円のファンドで出発したのです」(経済ジャーナリスト・水島愛一朗氏)

 オリックスは事件化を察知したのか、今年2月に資本金4000万円と役員を引き揚げ、提携を解消したが、ファンドへの運用委託は現在も続けている。 またKDDIも大口投資家だったが、阪神株騒動を嫌って、4月に資金を引き揚げた。「名前は公表されていませんが、日本の大企業数社も年金資金を預けています。さらに、当初、光通信の重田社長などITバブル長者が村上ファンドに投資した流れを受けて、村上代表に近い“ヒルズ族”や地方の企業経営者が個人的に投資してきた。しかし、4000億、5000億円に膨らんだ村上ファンドにあって国内からの投資はごく一部の少数派。村上ファンドへの最大の投資は米国ハーバード大の財団の年金資金だとされています。一時はファンド全体の6割を占めていたそうです。それに加えてオイルマネーも流れ込んでいますが、間に投資コンサルタントが入ったり、ヘッジファンドの資金も流入しているので、本当のところは闇です。村上代表も“7割はオイルマネーだと思う”などと他人事のようなことを言っていました」(帝国データバンク情報部・中森貴和課長) 2割、3割の利回りを約束していた村上ファンドには、得体の知れない有象無象が群がっていたわけだ。「高配当を出し続けるのは大変。しかし、相手はシビアなヘッジファンド。それで村上代表は無理をせざるを得なくなり、ニッポン放送株や阪神株のような暴走に突き進んでいったのでしょう」(中森貴和課長) ある意味、村上も使われていたのだが、今度の事件で内外の大口投資家たちのロウバイが始まった。大損も確実だ。もろとも“地獄行き”となるのか。
【2006年6月7日掲載記事】

[ 2006年6月10日10時0分 ]

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http://news.www.infoseek.co.jp/gendainet/story.html?q=10gendainet02026748&cat=30
http://news.www.infoseek.co.jp/search/story.html?query=%91%BA%8F%E3%83t%83%40%83%93%83h&q=10gendainet02026748&cat=30






村上ファンド、資金流出加速…命運握る米大学財団



村上世彰容疑者の逮捕で、ファンドからの資金流出は加速しそうだ
 村上世彰容疑者(46)の逮捕で、村上ファンドから運用資金を引き揚げを表明する国内企業や団体が相次いでいる。海外の資金も逃げ出すのは確実で、村上ファンドは存亡の危機を迎えることも予想される。
 すでにKDDIの企業年金が資産運用委託契約を打ち切ったが、数十億円を運用している農林中央金庫のほか、三和シャッター工業(約19億円運用)、石油資源開発(約18億円運用)、ウシオ電機(約17億円運用)、立花証券(約1億7000万円運用)、ドッドウエル ビー・エム・エス(約1億4000万円)などが解約を検討しているもようだ。
 また、約200億円の運用を委託しているオリックスは解約、継続などさまざまな選択肢を検討しているとみられる。同社の宮内義彦会長は村上ファンド設立に協力するなど関係が深いが、ファンドへの出資金はすでに引き揚げている。
 今後のファンドの命運を握るのは、運用資金の約6割を占める米国の大学財団だ。ハーバード大などの財団が資金を委託しているとみられるが、「投資先の法令違反が確認されれば、資金を引き揚げる可能性がある」と市場関係者はみる。
 仮に海外資金が法令違反を問題視しなかった場合も、別の問題が浮上する。村上ファンドの20-30%の高利回りは、村上容疑者の強引な手法があって達成できたとみられるが、今後は利回りの悪化が予想される。「海外資金は、期待通りの利回りが実現できなければ、別のファンドに委託するだけだ」(同)。
 3月末時点の運用資産残高が4444億円と、設立当時の50億円から6年間で88倍に急拡大させた村上ファンド。村上容疑者は逮捕前の記者会見で、「流出額は多くて1000億円ぐらい」と話していたが、これはあくまで希望的観測にすぎない。

【関連記事】
◆日銀総裁が村上ファンドに黒い出資…宮内橋渡し?(06/13)



ZAKZAK 2006/06/13

ZAKZAK
http://www.zakzak.co.jp/top/2006_06/t2006061324.html


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