◇知事会見「当面、見直さない」
県が8日に公表した07年4月採用予定の一般行政職員募集要項の中に、外国人住民の採用を認めない「国籍条項」が依然として明記されていることが分かった。古川康知事は9日の定例会見でこの問題に触れ、当面、採用条件を見直す考えはないことを明らかにした。【朴鐘珠】
古川知事は昨年5月の会見では、外国人への「門戸を無理やりに閉ざす必要はない」と見直しの余地も残していたが、この日の発言は1年前より後退した感が否めない。
一般行政職採用における国籍条項撤廃の可否は各自治体の裁量に委ねられており、県内では唯一、鳥栖市が04年4月から外国人の採用を認めている。全国的には神奈川、愛知、大阪、大分など11府県のほか、福岡、北九州など全15政令都市をはじめ、今年2月現在で267の市が、一部では条件付きとしながらも既に撤廃に踏み切った。
県人事委員会は97年までに看護師、保健師、薬剤師など25の専門職種で国籍条項を撤廃したが、その後は撤廃職種を拡大する動きはない。
古川知事は「最高裁判決によると、公権力の行使や公の意思形成に参画する職に、外国人が就任するという想定はしていない。05年度末で県の一般行政職員は1520人いるが、このうち外国人が就労可能な業務は約400人分しかない」と説明。今後10年間で500人の職員削減を予定していることからも、極めて限られた部署にしか配属できない外国人を採用するのは「組織としても大きな損失である」と明言した。
また今後の見直しの可能性については「考えを大きく変えるような事情が発生すれば、新しい考えが出てくることもありうるかもしれない」と極めて消極的だった。
これに対し、在日コリアンの権益擁護団体、在日本大韓民国民団県本部の朴弘正事務局長は「窓口を広げた方が多様な人材が集まり、県政にとってもプラスになるはずだが、非常に残念な判断だ。地方独自の判断による行政という時代の流れに逆行している。就任当時の知事は新しいことをしてくれそうだと期待していたが、中央省庁にいたころの感覚が抜け切れていない」と話している。
5月10日朝刊
(毎日新聞) - 5月10日14時0分更新
Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - 県職員採用:外国人への門戸閉ざされたまま 国籍条項撤廃されず /佐賀
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060510-00000196-mailo-l41
●質疑応答:職員募集要項の国籍条項について(その1)
○毎日新聞
いいですか。ちょっと気持ちを切りかえて、新幹線から。
去年この5月の定例会見、5月10日だったんですね。ちょうど1日違いですけれども、私は同じことを聞いたので、また今年お尋ねしたいんですけれども、昨日ですけれども、県の職員採用の発表がありました。一般職に関してなんですけれども、国籍条項をいまだに撤廃されないままだったんですね。
1年前、古川さんから非常に前向きなお言葉を私いっぱいいただきまして、期待を持っていたんですけれども、変わらなかったこの理由を教えてください。
○知事
この間、我々と採用をする担当の側で何度か議論をいたしました。ちょっと長くなりますが、説明をさせていただきます。
まず、去年の1月26日最高裁判決で、外国人の方が就任するということが想定していないとされたのは、公権力の行使に当たる行為を行い、もしくは地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、またはこれらに参画することを職務とする公務員、これらについては、外国人の就任は想定していないというふうな判決が出ているというふうに考えております。
これらについて、職位ごと、または業務分野ごとに具体的な所掌事務を参照しながら精査を行いました。職位ごとに検討をしたときには、例えば、主査だとか係長さんだとか、そういったところについては最終的な政策意思決定権を持つというふうにはならないだろうというふうに考えます。すなわち、これは決裁権者のことではないかと。課長級以上の職位にある者が該当するというふうに考えます。
これまで国籍条項を撤廃してきました医療職や研究職などについては、課長級以上の職につく機会は極めて少ないというふうに考えていますが、国籍条項を撤廃していない行政職などは、ゼネラリスト、またはエキスパート職ということで、キャリアを積むことが想定されています。こうした職種については、課長級以上の就任の機会が数多くございます。平成17年度末の時点で、例えば、一般行政職では1,520人のうち170人がこれに該当いたしました。
次に、業務分野ごとに検討いたしました。公権力の行使に当たらず、かつ重要施策の決定に参画することのない業務に限り、外国人の就任が可能というふうに考えたわけでありますけれども、このような業務は、平成17年度末の時点で、例えば、一般行政職で課長級以上を除くと、総数1,360人のうち約400人がこれに該当をしています。
その内訳は、総務事務が約200人、そして、昨年度末で既に廃止された職、労政事務所であるとか合併支援担当であるとかが10人、時期が限定されている海づくり大会とか、そういった職が15人、その他の職が170人と、相当限定された分野となっております。
さらに、5年間で200人、10年間で500人の職員削減を予定しておりまして、公権力の行使に携わる職や県政の重要施策の企画立案、決定については、行政の職種として存続していくわけでありますけれども、それ以外の民間に任せることのできるような職は、将来的に廃止またはアウトソーシングされる可能性が高いというふうに考えております。こうしたことを考えますと、外国人の方が就労可能な職は今後10年間でさらに限定されるということになると考えています。
こうした中で、仮に国籍要件を撤廃して外国籍の方を任用すると、公権力の行使に該当するような業務に携わることなく、かつ公の意思形成に参画する職にもつかせないという、極めて限られた職場での任用となってしまいます。
我が県では、採用後10年間は幅広くさまざまな部署を経験していただき、その後は自分の能力に応じて適正のある職務につかせるという方針で人事異動を行うこととしておりますが、ゼネラリスト、またはエキスパートとして育成していく可能性、蓋然性が高い職種において、極めて限られた部署にしか配置できない方を採用して、能力開発や育成をせずに将来にわたって限定的な職務に従事させ続けることは、本人の能力開発の機会を逸してしまうということや、組織全体にとっても大きな損失であると考えております。
以上のことから、国籍条項については現状を維持すべきであるというふうに判断をいたしました。
○毎日新聞
非常に用意周到な原稿の棒読みをありがたく思うんですけれども、気持ちが全くこもっていないんですがね、古川さん、そのお言葉に。
現実として、佐賀県がこれから人減らしをして、要はそういうことですよね。どんどん採用数が減っていくと、今回も減りましたけれども。かつ、ただでさえそういう公権力の行使にかかわらない仕事はもっと減っていくということですよね。
そういった言い分がありながら、片一方では、全国的には一般行政職も非常に撤廃が進んでいるわけですよ、多くの自治体で。もう数百ですね。つまり、佐賀県に住んでいる外国人の方々に、つまり、例えば鳥栖市です、去年も言いましたけど。鳥栖市は一般行政職の国籍条項を撤廃しているわけですよ。だから、鳥栖市民にしてみれば、鳥栖市に住む外国人にしてみれば、市役所は受けられるのに県庁は受けられない、この辺のこの不合理さというのを、ちょっとどう思われます。つまり、公権力の行使に携われるような職種につかせてあげればいいではないですか。何か問題ありますか。
○知事
公権力の行使に携わる職種については、最高裁判決にもあるように、それは外国人が就任することは……
○毎日新聞
それは判決だけど憲法判断じゃないから……。
○知事
憲法判断ではないと思うんですけれども、最高裁の判決の中で判示されているわけですね。ですから、我々も公権力の行使に携わることができないという人を採用するよりは、いろんな形で仕事をしていただける方の方を採用したい、こう考えているということなんです。
○毎日新聞
公権力の行使に携わる仕事に採用できないわけではないので、実際今採用している自治体がいっぱいあるではないですか。
○知事
採用している自治体はあります。その自治体において、公権力に携わることをやっているかどうかということについては、私どもはまだその段階に至っていないというふうに思っています。これは、国籍条項を撤廃したのがいわば近年のことでありますので、そうしたものが進んでいくにつれてそういう問題が出てくるのではないかというふうに思っています。これから行政職の人間が極めて減っていって、公権力の行使をしないことを前提にするような人はほとんど採用しないようなことになるということを考えると、そういったことができないという外国人の採用は非常に難しいということであります、一般行政職について言えば。
○毎日新聞
非常に新しもの好きの古川知事にしては、非常に消極的な意見でがっかりですけどね。
●質疑応答:職員募集要項の国籍条項について(その2)
○FM佐賀
外国籍の方の採用なんですけど、これは今後も採用する可能性はないということなんでしょうか。
○知事
現時点でこう考えていまして、これを大きく考え方を変えるような事情が発生したときには、また新しいそのときの考え方というものが出てきても、あり得るのかなとも思っていますけれども、去年の最高裁判決をもとにして、また、これからの採用動向を考えた場合には、このようなことかなというふうに今は思っています。
記者会見(質疑応答):職員募集要項の国籍条項について(その1)
http://www.saga-chiji.jp/kaiken/06-5-9/shitsumon2.html
記者会見(質疑応答):職員募集要項の国籍条項について(その2)
http://www.saga-chiji.jp/kaiken/06-5-9/shitsumon7.html
県が8日に公表した07年4月採用予定の一般行政職員募集要項の中に、外国人住民の採用を認めない「国籍条項」が依然として明記されていることが分かった。古川康知事は9日の定例会見でこの問題に触れ、当面、採用条件を見直す考えはないことを明らかにした。【朴鐘珠】
古川知事は昨年5月の会見では、外国人への「門戸を無理やりに閉ざす必要はない」と見直しの余地も残していたが、この日の発言は1年前より後退した感が否めない。
一般行政職採用における国籍条項撤廃の可否は各自治体の裁量に委ねられており、県内では唯一、鳥栖市が04年4月から外国人の採用を認めている。全国的には神奈川、愛知、大阪、大分など11府県のほか、福岡、北九州など全15政令都市をはじめ、今年2月現在で267の市が、一部では条件付きとしながらも既に撤廃に踏み切った。
県人事委員会は97年までに看護師、保健師、薬剤師など25の専門職種で国籍条項を撤廃したが、その後は撤廃職種を拡大する動きはない。
古川知事は「最高裁判決によると、公権力の行使や公の意思形成に参画する職に、外国人が就任するという想定はしていない。05年度末で県の一般行政職員は1520人いるが、このうち外国人が就労可能な業務は約400人分しかない」と説明。今後10年間で500人の職員削減を予定していることからも、極めて限られた部署にしか配属できない外国人を採用するのは「組織としても大きな損失である」と明言した。
また今後の見直しの可能性については「考えを大きく変えるような事情が発生すれば、新しい考えが出てくることもありうるかもしれない」と極めて消極的だった。
これに対し、在日コリアンの権益擁護団体、在日本大韓民国民団県本部の朴弘正事務局長は「窓口を広げた方が多様な人材が集まり、県政にとってもプラスになるはずだが、非常に残念な判断だ。地方独自の判断による行政という時代の流れに逆行している。就任当時の知事は新しいことをしてくれそうだと期待していたが、中央省庁にいたころの感覚が抜け切れていない」と話している。
5月10日朝刊
(毎日新聞) - 5月10日14時0分更新
Yahoo!ニュース - 毎日新聞 - 県職員採用:外国人への門戸閉ざされたまま 国籍条項撤廃されず /佐賀
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060510-00000196-mailo-l41
●質疑応答:職員募集要項の国籍条項について(その1)
○毎日新聞
いいですか。ちょっと気持ちを切りかえて、新幹線から。
去年この5月の定例会見、5月10日だったんですね。ちょうど1日違いですけれども、私は同じことを聞いたので、また今年お尋ねしたいんですけれども、昨日ですけれども、県の職員採用の発表がありました。一般職に関してなんですけれども、国籍条項をいまだに撤廃されないままだったんですね。
1年前、古川さんから非常に前向きなお言葉を私いっぱいいただきまして、期待を持っていたんですけれども、変わらなかったこの理由を教えてください。
○知事
この間、我々と採用をする担当の側で何度か議論をいたしました。ちょっと長くなりますが、説明をさせていただきます。
まず、去年の1月26日最高裁判決で、外国人の方が就任するということが想定していないとされたのは、公権力の行使に当たる行為を行い、もしくは地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、またはこれらに参画することを職務とする公務員、これらについては、外国人の就任は想定していないというふうな判決が出ているというふうに考えております。
これらについて、職位ごと、または業務分野ごとに具体的な所掌事務を参照しながら精査を行いました。職位ごとに検討をしたときには、例えば、主査だとか係長さんだとか、そういったところについては最終的な政策意思決定権を持つというふうにはならないだろうというふうに考えます。すなわち、これは決裁権者のことではないかと。課長級以上の職位にある者が該当するというふうに考えます。
これまで国籍条項を撤廃してきました医療職や研究職などについては、課長級以上の職につく機会は極めて少ないというふうに考えていますが、国籍条項を撤廃していない行政職などは、ゼネラリスト、またはエキスパート職ということで、キャリアを積むことが想定されています。こうした職種については、課長級以上の就任の機会が数多くございます。平成17年度末の時点で、例えば、一般行政職では1,520人のうち170人がこれに該当いたしました。
次に、業務分野ごとに検討いたしました。公権力の行使に当たらず、かつ重要施策の決定に参画することのない業務に限り、外国人の就任が可能というふうに考えたわけでありますけれども、このような業務は、平成17年度末の時点で、例えば、一般行政職で課長級以上を除くと、総数1,360人のうち約400人がこれに該当をしています。
その内訳は、総務事務が約200人、そして、昨年度末で既に廃止された職、労政事務所であるとか合併支援担当であるとかが10人、時期が限定されている海づくり大会とか、そういった職が15人、その他の職が170人と、相当限定された分野となっております。
さらに、5年間で200人、10年間で500人の職員削減を予定しておりまして、公権力の行使に携わる職や県政の重要施策の企画立案、決定については、行政の職種として存続していくわけでありますけれども、それ以外の民間に任せることのできるような職は、将来的に廃止またはアウトソーシングされる可能性が高いというふうに考えております。こうしたことを考えますと、外国人の方が就労可能な職は今後10年間でさらに限定されるということになると考えています。
こうした中で、仮に国籍要件を撤廃して外国籍の方を任用すると、公権力の行使に該当するような業務に携わることなく、かつ公の意思形成に参画する職にもつかせないという、極めて限られた職場での任用となってしまいます。
我が県では、採用後10年間は幅広くさまざまな部署を経験していただき、その後は自分の能力に応じて適正のある職務につかせるという方針で人事異動を行うこととしておりますが、ゼネラリスト、またはエキスパートとして育成していく可能性、蓋然性が高い職種において、極めて限られた部署にしか配置できない方を採用して、能力開発や育成をせずに将来にわたって限定的な職務に従事させ続けることは、本人の能力開発の機会を逸してしまうということや、組織全体にとっても大きな損失であると考えております。
以上のことから、国籍条項については現状を維持すべきであるというふうに判断をいたしました。
○毎日新聞
非常に用意周到な原稿の棒読みをありがたく思うんですけれども、気持ちが全くこもっていないんですがね、古川さん、そのお言葉に。
現実として、佐賀県がこれから人減らしをして、要はそういうことですよね。どんどん採用数が減っていくと、今回も減りましたけれども。かつ、ただでさえそういう公権力の行使にかかわらない仕事はもっと減っていくということですよね。
そういった言い分がありながら、片一方では、全国的には一般行政職も非常に撤廃が進んでいるわけですよ、多くの自治体で。もう数百ですね。つまり、佐賀県に住んでいる外国人の方々に、つまり、例えば鳥栖市です、去年も言いましたけど。鳥栖市は一般行政職の国籍条項を撤廃しているわけですよ。だから、鳥栖市民にしてみれば、鳥栖市に住む外国人にしてみれば、市役所は受けられるのに県庁は受けられない、この辺のこの不合理さというのを、ちょっとどう思われます。つまり、公権力の行使に携われるような職種につかせてあげればいいではないですか。何か問題ありますか。
○知事
公権力の行使に携わる職種については、最高裁判決にもあるように、それは外国人が就任することは……
○毎日新聞
それは判決だけど憲法判断じゃないから……。
○知事
憲法判断ではないと思うんですけれども、最高裁の判決の中で判示されているわけですね。ですから、我々も公権力の行使に携わることができないという人を採用するよりは、いろんな形で仕事をしていただける方の方を採用したい、こう考えているということなんです。
○毎日新聞
公権力の行使に携わる仕事に採用できないわけではないので、実際今採用している自治体がいっぱいあるではないですか。
○知事
採用している自治体はあります。その自治体において、公権力に携わることをやっているかどうかということについては、私どもはまだその段階に至っていないというふうに思っています。これは、国籍条項を撤廃したのがいわば近年のことでありますので、そうしたものが進んでいくにつれてそういう問題が出てくるのではないかというふうに思っています。これから行政職の人間が極めて減っていって、公権力の行使をしないことを前提にするような人はほとんど採用しないようなことになるということを考えると、そういったことができないという外国人の採用は非常に難しいということであります、一般行政職について言えば。
○毎日新聞
非常に新しもの好きの古川知事にしては、非常に消極的な意見でがっかりですけどね。
●質疑応答:職員募集要項の国籍条項について(その2)
○FM佐賀
外国籍の方の採用なんですけど、これは今後も採用する可能性はないということなんでしょうか。
○知事
現時点でこう考えていまして、これを大きく考え方を変えるような事情が発生したときには、また新しいそのときの考え方というものが出てきても、あり得るのかなとも思っていますけれども、去年の最高裁判決をもとにして、また、これからの採用動向を考えた場合には、このようなことかなというふうに今は思っています。
記者会見(質疑応答):職員募集要項の国籍条項について(その1)
http://www.saga-chiji.jp/kaiken/06-5-9/shitsumon2.html
記者会見(質疑応答):職員募集要項の国籍条項について(その2)
http://www.saga-chiji.jp/kaiken/06-5-9/shitsumon7.html