ＩＴ ＢＩＴＥＳ「ＯＮＣＥ ＡＲＯＵＮＤ ＴＨＥ ＷＯＲＬＤ」（１９８８）

イギリス北部のカンブリア出身のバンドによる2ndアルバム。フランシス・ダナリーとジョン・べックを中心に学生時代に活動を開始。84年頃からロンドンに拠点を移し、本格的に活動を開始します。活動当初は当時イギリスでは全盛だったニュー・ロマッティック系バンドのカヴァーを行っていましたが、オリジナリティの確立のため徐々にサウンドを進化させていきます。そして86年にヴァージン・レコードよりデヴューを飾ります。プログレッシヴ・ロックから影響を受けつつも、後のJELLYFISHにも通じる絶妙なポップ感覚を備えた音楽性は当時のシーンからは非常に理解をされにくい状況が続きました。80年代初頭にやはりイギリスを中心としてネオ・プログレッシヴ、俗に言うポンプ・ロックが流行しましたが、すでにそのムーヴメントは消滅しており、何処にも属さないサウンドはある意味個性的でした。フランシスは70年代のハード・ロックからの影響、ジョンは70年代のプログレッシヴ・ロックからの影響を公言しており、正にそれらを融合し、ポップ風味をまぶしたサウンドは先に書いたように、90年代初頭のJELLYFISHを中心としたひねくれたパワー・ポップの流れをすでに体現していました。ギター・サウンドが所々スティーヴ・ハウを思い起こさせたり、80年代にポップ・サウンドに転向し、劇的セールスを挙げていたGENESISやYES、ASIAなどにも通じるマニアックかつ高度なポップさすらも消化したサウンドを構築できたのはやはり確かな技術力、音楽的センスの賜物であり、だからこそ今聞いても新鮮な響きを持ち続けています。