チーム医療維新 日本のNP、PA制度を考える

日本におけるNP(ナースプラクティショナー)、PA(医師助手)などの非医師診療師の導入について考察するサイトです。

麻酔と集中治療における 非医師診療師の可能性 -とある医師の観点から-

2009年01月06日 13時04分58秒 | CNA (看護麻酔師)について
先週、麻酔科の医師として活躍していらっしゃる方から、下のようなメールをいただきました。医師の観点からなぜNP/PAを支持するのか書いてある興味深い内容なので、ご本人の許可を取って転載することにしました。
讃井先生、ありがとうございます。

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自治医科大学附属さいたま医療センター麻酔科・集中治療部の讃井(さぬい)と
申します。

私は、6年間マイアミで麻酔および集中治療のレジデンシーおよびフェローシップトレーニングを終了して2005年に帰国し、日本の医療が混沌としているのを見て愕然とし、何かできないかともがいている一麻酔科系集中治療医です。

私も、日本で医師以外の職種の充実が不可欠であるということを痛感しておりました。ひょんなことから、貴サイト“チーム医療維新”を知り、嬉しくなりメールさせていただきました。

私は、米国の麻酔臨床、および日本における麻酔医不足の影響、すなわち1人の麻酔医が一時に複数のケースを担当する掛け持ち麻酔や、麻酔医が確保できないことによる手術の延期などが放置されてきた現状を見てきました。日本型CRNA(certified registered nurse anesthetists: 麻酔看護師)の導入を訴え学会発表したり、論文(Sanui M, Matsuo K, Otsuka Y. A survey of Japanese nurses' opinions on nurse anesthetists. Masui 2008;57:95-9. Japanese.)も書きました。それ以外の部門でもNP、PAを導入するべきであるという趣旨の新聞、雑誌投稿なども行ってきました。しかし学会やマスコミの反応は芳しくありませんでした。最近、集中治療の仕事が忙しくなってしまってあまりこちらの活動を行わなくなってしまったという経緯があります。

私が考えるNP、PAの導入による利点は以下の二つです。私は医師ですので、思い切り医師の立場の発言であることをお許しください。

一つ目です。私は、医師の仕事の8割は医師でなくてもできる、すなわち長い年月のかかる医学部教育およびレジデント教育を必要としない、と考えています。若手医師の教育を度外視し医療の効率という観点から考えれば、レジデント抜きに指導医がPAやNPと一緒にユニットを組んで働く形式が最も効率がよく、事故も少ないのではないかと思います。理想的には、一般病院ではこの指導医とPAやNPがタッグを組むスタイルで診療効率をあげ勤務医の疲労を軽減し、教育病院では指導医とレジデント、ベテランPAやNPとその卵というスタイルで教育の充実を図る(教育が現在の私の仕事の大きな部分を占めます)、という“すみ分け”ができればいいな、と考えています。

もう一つです。看護師に新たなワンランク上の職種を提供して仕事に対するモチベーションを上げることができるのでは、という期待です。何かと均一なことが好きな(であった?)この国で、よい意味での差別化(昇進制度)とそれに見合う報酬をあたえることは、「医療に興味があるけど、看護師ってきついだけで給料もあがらないんでしょ」と考えていた優秀な若者を魅きつけるに足るものがあると思います。日々の臨床で多くの看護師がそのポテンシャルとモチベーションを持っていることを実感します。

ついでに私事の教育の話ですが、2008年3月、世界標準の集中治療を日本に広めるべく、JSEPTIC(日本集中治療教育研究会)http://blog.goo.ne.jp/jsepticという研究会を始めました。会員は800名になりました。参加者は医師ばかりでなく、その他の職種の方も多数いらっしゃいます。主な活動は、メーリングリスト、年4回の総会、季刊Intensivist(メディカルサイエンスインターナショナル)http://www.medsi.co.jp/intensivist/index.htmlの発行、多施設合同フェローシップ(および近い将来は多施設共同臨床研究)です。集中治療、救急、麻酔などに興味のある方がいらっしゃったら覗いてみて下さい。

実はチーム医療維新のことも、我々のメーリングリストで話題として上ったため、知ることができました。

私が在米時代、おつきあいが特に深かったのはPAや CRNAでしたが、実にいろいろなことを教わりました。これからもいろいろ教えていただければさいわいです。

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