流体機械設計による近未来に役立つエンジニアリング

流体機械設計をベースとして近未来に役立つエンジニアリングを行う株式会社ターボブレードの社長 林 正基の毎日の活動

電動ターボポンプを使ったロケットエンジン設計を進めています

2018年02月10日 | 液体ロケット流体システム設計

電動ターボポンプを使ったロケットエンジン設計を次図のように進めています。

この電動ターボポンプ式ロケットエンジンの海面上推力は2.2トンを想定しています。

推進剤は液体酸素と灯油を使い混合比は2.2を選定し、燃焼圧力は約7MPaで燃焼ガス噴射速度は2650m/Sとなりますので、推進剤毎秒質量流量は8.3kgです。

液体酸素と灯油を昇圧して燃焼室に送り込むためのターボポンプは、次図のように縦軸配置の電動の液体酸素ポンプと灯油ポンプと2台であり、ロケットエンジン機側に取り付けます。

液体酸素と灯油の混合比を2.2としているので、液体酸素ポンプの毎秒質量流量は5.7kg、灯油ポンプの毎秒質量流量は2.6kgです。

液体酸素の比重が1140kg/m^3なので、液体酸素ポンプ毎秒体積流量は0.005m^3/sであり毎分体積流量は0.3m^3/minです。

灯油の比重が800kg/m^3なので、灯油ポンプ毎秒体積流量は0.00325m^3であり毎分体積流量は0.195m^3/minです。

次にポンプが燃料を送り出す圧力は液体酸素も灯油も同じとしているので、燃料タンクにあらかじめ0.3MPa加圧されているとすればポンプが造る圧力は余裕を見て7.0MPa-0.3MPa+0.1MPa余裕=6.8MPaとなります。

このポンプ吐出圧力6.8MPaをmヘッドというポンプ設計特有の圧力表現に変換すると

液体酸素ポンプでは約596mとなり、灯油ポンプでは約850mとなります。

ここまででポンプの毎分流量(m^3/min)と必要揚程mヘッド(m)が出ましたので、ポンプインペラの適切な羽根形状を決めるパラメーターである比速度を検討して、各ポンプの最適な回転数を計算します。

ちなみに比速度とは、mヘッド(m)、毎分体積流量(m^3/min)、毎分回転数(rpm)で計算される設計パラメーターです。

今、仮にポンプインペラ(羽根)の回転数を毎分4万回転(40000rpm)とすると、

液体酸素ポンプの比速度Nsは、181.6となり、なんとか高効率に設計可能な比速度になります。

灯油ポンプの比速度Nsは、112となってかなり小さい値となり高効率設計は難しい範囲です。

よって灯油ポンプの回転数を毎分5万回転(50000rpm)として設計してみると、比速度Nsは140となり、なんとか低比速度遠心ポンプの高効率設計スキルを使うことで採用出来る比速度になります。

では最後にこの2台のポンプの羽根を回転させる高速型永久磁石式ブラシレスDCモーターの軸動力はどのくらい必要なのかを計算してみます。

その為にはポンプの効率を仮定しなければなりませんが、液体酸素ポンプの効率を70%、灯油ポンプの効率を60%と少し低めに仮定して計算します。

液体酸素ポンプに必要なモーター軸動力は、47.6kwとなります。

灯油ポンプに必要なモーター軸動力は、36kwとなります。

これらの必要モーター軸動力から見て、ロケットエンジン駆動時間を賄うバッテリーの容量は相当に大きなものが必要となります。

よってこの電動モーターはロケットエンジン始動時だけに使い、その後はタービン駆動に変えるハイブリッド型ロケットターボポンプが良いのかもしれません。

<今日の流れ>

今日は自宅でロケットターボポンプ設計の学習をします。

<今日の報告>

インターステラテクノロジズ株式会社の軌道衛星打ち上げ用ロケットZeroのロケットターボポンプ設計を行うこととなりました。

これから開始されるZero用ロケットターボポンプ設計は、インターステラテクノロジズ株式会社の稲川貴大社長のご指示とご許可を得て公表しました。

この記事についてブログを書く
« ターボファンエンジンのファ... | トップ | 新しいバイクがきました »