福井の米屋の「ぼ焼き」ブログ

コシヒカリのふるさと福井で米屋をしています。日々感じることを何も考えず無責任に書いて行きます。

「観光」 ラッタウット・ラープチャルーンサップ

2007年05月13日 14時55分05秒 | 読書
ラッタウット・ラープチャルーンサップ
タイ系アメリカ人1979年にシカゴで生まれバンコクで育つ。コーネル大、ミシガン大で学び現在29歳
「観光」は、13カ国で翻訳され世界でもっとも評価されている若手作家だ。

この本には、7本の短編が収められていていずれも秀作。

中でも表題の「観光」が素晴らしい。
美しいタイの海辺のリゾート地へ旅行に出かけた失明まじかの母親とその息子の心の交流を描いている。
文章が翻訳者にもよるのだがコー・ルクマクというタイでは、一番きれいなところへの旅行だが風景が眼に見えるようだ。
また、全編を通じていえるが登場人物の心の描写が鮮やかで一人ひとりの表情まで個性豊かに表現されている。

「こんなところで死にたくない」なんかはアメリカ人老人が車いすに乗って息子の住んでいるタイにやって来たが、その現地の嫁などとの関係にいらだったり遠くアメリカを懐かしむ心情など題名だけで読みたくなってしまう。

「ガイジン」「カフェ・ラブリーで」「徴兵の日」などは、タイの貧困とそこに住む若者の生活が、生き生きとある時は暗く、しかし心穏やかに見事に表現されている。

「闘鶏師」も闘鶏にハマって行く父を娘の目から鮮やかに描いている。

情緒、風景、心情などの表現力は、さしずめタイの藤沢周平では、なかろうか。


作家名が長いんですがお奨めの本です。

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